亡くなった人の医療費控除(準確定申告)の手続きはどうやる?
確定申告が必要な方が亡くなった場合、親族が準確定申告を行わなければなりません。故人が医療費や一部の介護費用を支払っていれば、準確定申告で医療費控除が受けられ、納税の負担が軽減される可能性があります。相続人全員が協力して期限内に速やかに手続きを進めましょう。
本コラムでは、準確定申告の際の医療費控除について解説します。
1. 亡くなった人の医療費控除「準確定申告」とは
「準確定申告」とは、確定申告が済んでいない故人に代わって、親族などが行う確定申告のことです。故人の生前の所得に対して確定申告と同じ手続きを行い、納めるべき税金がある場合は納付しなければなりません。
ただし、病気などで亡くなる前に一定を超える額の医療費を支払っていた場合は、医療費控除の条件を満たしていれば税金が安くなります。また、源泉徴収などで税金を天引きされていた場合は、準確定申告の手続きを行うことにより、納めすぎていた税金が還付される可能性もあります。
2. 医療費控除の対象となる支払いと対象とならない支払い
医療機関や介護施設などへの支払いがすべて医療費控除の対象と認められるわけではありません。また、通院にかかった交通費も医療費控除の対象となるなど、わかりにくい部分もあるため、以下に概要を解説します。
(1)医療費控除の対象となる支払い
支払った医療費などが準確定申告で医療費控除の対象となるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 故人が死亡した年の1月1日から死亡した日までに支払われたもの
- 故人が自身あるいは生計を一にする配偶者その他親族のために支払ったもの
- 診療や治療などに必要とされて支払ったもの
具体的には、診察料や入院費、検査料などの名目で医療機関へ支払った費用のうち、領収書などで証明できるものが対象です。ただし、生命保険会社などで補塡(ほてん)された保険金や、高額療養費などで補填される部分は差し引きます。
他にも、介護老人保健施設などのサービス対価、医師が必要と診断した医療用品の購入費、医師がおむつ使用証明書を発行したおむつ代、通院に要した交通費なども対象です。
(2)医療費控除の対象とならない支払い
一方、医療費控除の対象と認められない支払いは次のものです。病院や介護施設などに支払ったすべての額が医療費控除の対象となるわけではないことに注意してください。
たとえば、個室を希望した場合の差額ベッド代は医療費控除の対象となりません。また、病院のパジャマをレンタルした代金やテレビカード代なども、医療費控除の対象として認められません。入院に必要な洗面用具といった日用品、医師や看護師への謝礼、あるいは死亡診断書も控除の対象とはならないため、明細をよく確認して手続きすることが大切です。
気をつけたいのが、亡くなった日以降に入院費を精算した場合、その費用は準確定申告における医療費控除の対象として含まれない点です。たとえ、生前に生じていた入院費を故人の財産から支払ったとしても、支払った日が亡くなった日よりもあとであれば、故人名義の準確定申告に計上できません。
しかし、故人と生計を一にしていた人が自分の名義で確定申告をすることにより、医療費控除を受けることが可能です。
(3)医療費控除の対象であるかを調べる方法
医療費控除の対象かどうか不明、あるいは判断に迷う場合、税務署の窓口で確認するのが確実です。
たとえ専門家以外の人が、昔は医療費として認めてもらえたと述べても、鵜呑みにするのは危険です。その人の病状によって異なるケースもあれば、記憶違いである場合もあります。また、入所施設の種類によっても医療費控除の対象と認められる範囲が異なるケースもあり、一概には言えないからです。
正しい手続きがなされなかったときは、あとから修正申告が必要になり、余計に手間がかかってしまうことになります。そのため、事前に専門家へ確認することをおすすめします。
(4)申告期限
準確定申告の申告期限は、通常の確定申告とは異なります。準確定申告は、亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内に手続きを済ませなければなりません。通常は死亡日の翌日から期限を数えますが、被災や孤独死などで死亡日がはっきりしない場合は、ずれることもあります。
3. 亡くなった人の医療費控除(準確定申告)の手続き
確定申告が初めての方は、専門用語や必要書類がわからず、期限も決められているため慌ててしまうかもしれません。とりわけ準確定申告は、相続人全員の共通理解のもと連携を取り合って進める必要があります。そこで、準確定申告における医療費控除手続きのポイントを解説します。
必要な書類は、故人の所得状況により異なりますが、基本的に確定申告と同様です。
- 確定申告書
- 故人の源泉徴収票
- 控除証明書
- 所得税および復興特別所得税の確定申告書付表
- 医療費や交通費の領収書
- 委任状(還付金を相続人の代表者が受け取る場合)
これらの書類は、故人の住所地を管轄する税務署に提出します。このうち確定申告書付表には、基本的に相続人全員の署名が必要となるため、人数が多い、遠方に住んでいる、入院しているなどの場合は、速やかに集めなければなりません。
また、領収書や証明書などを相続人が別々に保管している可能性もあるため、漏れのないように提出する必要があります。相続人の誰かが責任者となり、準確定申告の手続きに関し、必要性と期限を周知して全員に協力してもらいましょう。
準確定申告の際に誤った内容で申告してしまうと、あとから修正申告が必要になり、過少申告加算税や延滞税がかかるなど、無駄な手間とお金がかかってしまいます。計算や手続きに自信がない方は、税務署や税理士への事前の相談をおすすめします。遺産相続によりトラブルとなった場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
準確定申告における医療費控除では、書類をそろえて手続きを進めるにも手間がかかり、一定の期限もあります。不明点があれば弁護士などにも相談しつつ、確実に手続きを進めましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年12月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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