親子関係を解消したい。絶縁するための手続きはある?

親子関係を解消したい。絶縁するための手続きはある?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

親から日常的に暴力を受けていたり、過度な干渉を受けていたりする方のなかには、親と絶縁をして親子関係を解消したいと考える方も少なくないでしょう。しかし、そもそも親子関係を絶縁する手続きは存在するのでしょうか。

今回は、親子関係を絶縁するための手続きについて解説します。

1. 法律上の「親子の縁」とは?

法律上、親子の縁が発生する原因は二通りあります。

まずは血縁上の親子関係です。両親から生まれることにより、当然に親子の縁は発生します。もう一つは養子縁組(民法792条)によるものです。養子縁組により、血縁関係がなくても、親子の縁が発生することになります。

では、法律上の親子の縁とは、どのようなものを指すのでしょうか? 法律上の親子関係から生じる権利義務としては、主に以下の3つがあります。

(1)扶養義務

親子には、相互に扶養義務があります(民法877条1項)。扶養義務とは、自分の収入・資産だけでは生活することができない人に対して、経済的な支援や援助をする義務のことをいいます。扶養義務には、扶養の程度に応じて「生活保持義務」と「生活扶助義務」の2つに分けられます。

生活保持義務とは、扶養義務者と同程度の水準の生活ができるように援助する義務であり、親が未成熟子に対して負う義務のことをいいます。これに対して、生活扶助義務とは、扶養義務者が余力のある範囲で経済的援助を行う義務であり、子どもの親に対する扶養義務や成人した子どもに対する親の扶養義務のことをいいます。

(2)相続関係

親子間では、相続が発生した場合には、相手の財産を相続する権利があります。

親が亡くなった場合には、子どもが第1順位の相続人になりますので、子どもは親の遺産を相続することができます(民法887条1項)。他方、子どもが亡くなった場合には、親は第2順位の相続人になりますので、亡くなった子どもに子ども(親からみた場合の孫)がいなければ、亡くなった子どもの遺産を相続することができます(民法889条1項1号)。

(3)養育・監護義務

子どもが未成年である場合には、親には、子どもに対する養育・監護義務があります(民法818条)。経済的にも精神的にも未熟な子どもだけでは自立して生活することができませんので、親は子どもと一緒に生活をして、身の回りの世話や教育を行わなければなりません。

2. 「絶縁」とは

では、法律上、親子の縁を切ることはできるのでしょうか?

親子の縁を切ることは、一般に「絶縁」や「勘当」などという言葉で表現されます。いずれも法的用語ではありませんが、一般的によく使われています。

(1)法律上の親子関係の断絶をすることは難しい

親から虐待されていたり、過度な干渉を受けていたり、経済的に搾取されている状態の方は、法律上の親子関係を断絶したいと考える方もいるかもしれません。しかし、法律上の親子関係を断絶することは簡単ではありません。もっとも、厳格な要件のもとに、法律上親子の縁を切る手続きも存在します。

親子関係を絶縁する方法には、以下の方法があります。

①特別養子縁組(民法817条の2)

養子縁組とは、血縁上親子関係にない人同士の間で、法律上の親子関係を生じさせる手続きです。

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、普通養子縁組では、養子縁組後も血縁上の親との親子関係は継続します。一方、特別養子縁組では、養子縁組後、実親との親子関係が終了しますので、親子関係を法律上絶縁する場合の手続きとして利用することができます。

しかし、特別養子縁組を利用するには、縁組の請求時に養子の年齢が15歳未満であること、原則として実親の同意があること、家庭裁判所の許可などの厳格な要件が定められていますので、簡単に利用できる手続きではありません。

②親子関係不存在確認の訴え(人事訴訟法2条2号)

親子関係不存在確認の訴えとは、戸籍上の親子に血縁関係がない場合において、法律上の親子関係を否定するための手続きです。裁判所の判決によって、親子関係が否定されれば、親子関係から生じるさまざまな権利義務から解放されます。

ただし、親子関係を否定するには、DNA鑑定によって、血縁関係がないことが科学的に証明されなければなりません。そのため、血縁関係のある親子間では利用することはできません。

3. 生活上(事実上)、親子の縁を切るには

(1)絶縁状

上記のように法律上親子関係を否定することができる手続きは存在するものの、極めて例外的なケースのみ利用できる手続きですので、一般的には、法的に親子関係を否定するのは難しいといえます。

このような場合には、親に対して絶縁状を送るなどして、事実上、親子関係を解消する方法もあります。ただし、あくまでも事実上の効果にすぎませんので、法的な扶養義務が解消されるわけではありません。

(2)相続放棄(民法938条)

親子関係を解消したいという動機が、親の借金を相続したくないという理由であれば、親が死亡した後、相続放棄の手続きをとることによって、希望をかなえることが可能です。相続放棄によって親子関係が絶縁できるわけではありませんが、借金を含むすべての遺産の相続権を放棄することができます。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年06月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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