私立大学の入学を辞退したら、納入した入学金は返還してもらえる?
一般的に私立大学に合格したら、国公立大学の合格発表前に入学金を納入しなければならず、滑り止めとして入学金を納入する人が多いです。その場合、のちに入学辞退を申し出ると、納入した入学金は返還してもらえるのでしょうか。
本記事では、各学生納付金の返還の可否や不返還特約がある場合の対処法、返還請求の方法などについて詳しく解説します。
1. 納入済みの入学金や授業料は返還してもらえる?
私立大学は入学手続きの際に、入学金や前期授業料、施設利用料などの学生納付金を納入することが一般的です。のちに入学辞退を申し出た場合、納入した学生納付金が返還されるかどうかは、入学金とその他で異なります。以下より、それぞれのケースについて詳しく解説します。
(1)入学金
大学への入学は、法律に照らし合わせて考えれば、ひとつの「契約」です。入学金と引き換えに、学生はその大学の「在学契約の予約」という地位を取得できます。
入学金はその予約に必要な費用であり、大学側も学生を受け入れる準備を進めているため、納入した入学金は原則として返還されません。ただし、入学金が不当に高額である場合、特別に返還が認められるケースもあります。
(2)授業料や施設利用料など
授業料や施設利用料、諸会費など、大学入学後にかかる学生納付金は、4月1日以前に入学辞退を申し出た場合、大学側には返還の義務が課せられているため、原則として返還が必要です。
ただし、大学によっては、「どのような事情があっても納入された学生納付金は一切返還しない」という「不返還特約」を掲げているところも存在します。それを盾に、返還を拒絶するケースも考えられます。
2. 不返還特約があったら、授業料は返還してもらえない?
不返還特約があると、一度納入した学生納付金は返還できないと思ってしまいがちですが、諦めてはいけません。
平成18年11月27日に行われた「不当利得返還請求事件」の裁判において、「3月31日までに在学契約解除の意思表明があった場合、不返還特約は無効である」という判決が下されています。
その根拠となるものが、平成13年に施行された「消費者契約法」の第9条です。大学合格者と大学間の在学契約は,消費者契約法2条3項所定の「消費者契約」にあたります。ここでは損害賠償について、「消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」は、無効であるとしています。
では、3月中の入学辞退が大学側に与える損害とは、どの程度なのでしょうか。この点について、判例では、大学側はある程度、入学辞退者が出ることを見込んで合格者数を決定しているため、3月31日以前に在学契約を解除しても、大学側に損害が生じるとは言えないと判断しています。
そのため、不返還特約があっても、入学を辞退することで大学に与える平均的な損害は発生しないと考えられることから、損害賠償を支払う必要性はありません。
ただし、AO入試や推薦入試のように、合格したら入学することが前提である入試方法の場合は、辞退者を見越して余分に合格者を決めているわけではないので、辞退者が出れば大学が損害を受けてしまいます。したがって、3月31日までに入学を辞退しても、授業料や施設利用料などの返還は難しいでしょう。
(参考:「裁判例結果詳細」(裁判所))
3. 返還請求をする方法
大学の中には、別の進路を選んだ人のために返金フォームを設けたり、公式サイト上に手続きの方法を記載したりしているところもありますが、それほど親切な大学は数少ないでしょう。納入済みの学生納付金は、自身で返還請求を行うことが必要です。
以下より、返還請求の方法について、3つの段階に分けて解説します。
(1)大学に内容証明郵便を送付する
返還請求を行う場合、最初は大学宛てに内容証明郵便を送付することから始めます。電話でも「返還してほしい」との意思を伝えられますが、大学側が日付などを正確に記録している保証はありません。返還請求では入学辞退の意向を、大学側がいつ知ったのかが重要になります。つまり、内容証明郵便の作成は、入学辞退の意向を伝えた正式な日付を書面に残しておくために必要です。
(2)少額訴訟を利用する
内容証明郵便の送付後、大学からは書面で返還額などの回答が送られてくることが一般的です。しかし中には、納入した金額より大幅に少ない金額しか返還されないなど、理不尽な結論を一方的に押し付けられるケースもあります。
もし、回答に納得できない場合は、簡易裁判所の少額訴訟を利用できます。これは、60万円以下の返還請求に適用できる簡易の訴訟で、原則として1回の審理で判決が出るため、迅速な解決を望む人には適した方法です。
(3)民事調停、民事訴訟を提起する
60万円以上の返還請求を行う人や、時間がかかってでも納得できる結論を得たい人は、民事調停や民事訴訟を提起することになります。
大学側に話し合う姿勢があれば、民事調停によって、双方が合意できる条件を導き出すことが望ましいです。しかし、大学側がかたくなに返還を拒否するのであれば、民事訴訟を起こし、裁判所で法律に基づいた客観的な結論を下してもらう必要があります。
授業料や施設利用料などは、入学を辞退すれば本来返還されるべきものです。しかし、大学側が拒絶する場合は、迷わず弁護士に相談してみましょう。返還してもらえるか否かの判断や書面の作成、訴訟の手続きなど、スムーズに返還を行うためのサポートをしてくれます。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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