学校でのいじめ、警察はどこから介入する?

学校でのいじめ、警察はどこから介入する?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

いじめは時に、被害者の命すら奪ってしまう重大な問題です。こうした事情を鑑みて、文部科学省は近年、重大ないじめは警察に通報することを教育委員会や学校に推奨しています。それでは、警察に通報すべきラインとはどこにあるのでしょうか。

本記事では、警察が介入する重大ないじめの例や通報のタイミング、通報後の流れなどを解説します。

1. 警察が介入する重大ないじめとは

いじめを警察に通報すべきか、あるいは通報を受けて警察がいじめ問題に介入できるかは、いじめや嫌がらせ行為の内容が法律上の犯罪行為に該当するかどうかによって判断できます。犯罪にあたるいじめの例としては、主に以下のような内容が挙げられます。

(1)暴力行為

いじめに肉体的な暴力が伴う場合は、暴行罪や傷害罪に問われます。暴行を加えたうえで金品を奪った場合は強盗罪に該当します。

(2)脅迫や恐喝

「殴るぞ」「スマホを壊すぞ」など、本人や本人の財産に危害を加えることを告げて脅す行為は脅迫罪に該当します。また、脅迫行為によって金品などを奪う行為は恐喝罪になり得ます。

(3)無理やり何かをさせる行為

脅迫行為によって他者に無理やり何かをさせることは強要罪に該当します。たとえば、「もっといじめられたくなければ土下座しろ、万引きしろ」などと、理不尽な命令に従わせることです。服を脱がせるなどした場合は強制わいせつ罪になる可能性もあります。

(4)金品を盗んだり壊したりする行為

他者の持ち物を盗む・隠す・汚す・壊すなどの行為は、窃盗罪や器物損壊罪などに該当します。上履きを隠したり教科書に嫌がらせの落書きをしたりする行為も犯罪です。

(5)侮辱・誹謗(ひぼう)中傷

事実であろうとなかろうと、本人の社会的評価をおとしめるようなことを公然と言う行為は名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪に該当します。これはSNSなどインターネット上での誹謗中傷も同様です。

「無視をする」「仲間外れにする」「遠巻きにして笑う」などのいじめの場合は、刑事罰の対象になりにくいため、警察の積極的な介入はあまり期待できません。

2. いじめ被害の警察への通報

上記で紹介したように、よくあるいじめ行為の多くはれっきとした犯罪です。「いじめ程度で警察に通報するなんて大げさだ」と思う方もいるかもしれません。しかし、そうした軽い認識はいじめ、ひいては犯罪行為を助長するものです。

いじめを受けた被害児童の心身や財産の安全を守るには、警察への相談・通報もためらってはいけません。学校側の聴取ではいじめの事実を認めなかった加害児童が、警察の捜査を受けて素直に認めた事例もあります。

以下では、いじめ被害を警察に相談するタイミングや通報後の流れについて解説します。

(1)警察に相談・通報すべきタイミング

いじめ被害を警察に通報すべき最適なタイミングは、犯罪にあたるいじめ行為を受けた直後です。警察を動かすには、実際にいじめ(犯罪行為)が起きたことを示す証拠や、すぐに対応が必要な緊急性の説明が重要になるからです。

いじめから長い時間が経過し、証拠や緊急性が消えた後で警察に相談しても、実際に対応してもらえる可能性は低くなってしまいます。そのため、犯罪行為にあたるいじめを受けたら即座に警察に相談すべきです。

「明日までにお金を持ってこい」と脅されたときなど、実害がまだ生じていない段階でも犯罪行為は成立しているので、ためらわず相談しましょう。警察への通報も辞さないという本気の態度が、いじめの抑止につながることも期待できます。

(2)警察に相談した後の流れ

いじめ被害を警察に相談した後は、まず被害届または告訴状を提出します。被害届は、被害があった事実を警察に知らせる届出です。他方で告訴状は、加害者を処罰するために警察に捜査をしてほしいとの意思を伝える届出を意味します。これらの提出は、いじめ行為(犯罪行為)の被害を受けた事実を記録に残し、警察に対応してもらうために行う手続きです。

被害届でも警察が任意で捜査を開始することはありますが、積極的な介入を求める場合は告訴状を提出しましょう。被害届を出してから、改めて告訴状を提出しても問題ありません。

被害届には、いじめが起きた時期、被害内容、いじめの加害者や目撃者が特定できているならその氏名など、事件性を証明できるような情報を書きます。被害届が受理された後は、警察が必要に応じて、関係者から事情聴取したり証拠を集めたりして、事件の実態を解明していく流れです。

警察は捜査を完了すると、その資料を検察に送ります。捜査資料を精査し、証拠の十分さ、事件の悪質さ、被害の程度などに応じて、いじめ加害者を起訴する(裁判で訴える)かどうかを判断するのが検察の役割です。

学校でのいじめの場合、加害者は基本的に未成年者なので、家庭裁判所での少年審判が行われます。この少年審判を通して、加害者を少年院に送るか、それとも保護観察処分にするかなどの処分を決定します。いずれにしても、家庭裁判所は、加害者が同じ過ちを繰り返さないように、更生ができるよう適切な判断を下します。

3. 複数の手段と組み合わせ、いじめの防止・解決を目指す

いじめ被害の警察への相談は、心理的なハードルが高いのも事実です。そのため、複数の手段を併用していじめの防止・解決を目指すことをおすすめします。

(1)学校、教育委員会への相談

第一に行うべきは、やはり学校への相談です。警察が介入しなくても、学校側の働きかけでいじめが解決することはあります。学校側が非協力的な場合は、教育委員会に訴えることも有効です。いじめ予防の観点からは、警察と教育委員会が連携して開催する非行防止教室への参加といった、関連機関との関わりを持っておくのも役立ちます。

(2)少年サポートセンターへの相談

警察内の機関のひとつである「少年サポートセンター」にも相談するのも有効です。少年サポートセンターでは、少年犯罪や非行、いじめなどに関する相談を受け付けており、いじめへの対応に関する助言や、家庭裁判所などの関係機関への取り次ぎをしてもらうことが可能です。いきなり警察に相談するのは気が引ける場合は、ここに相談してみましょう。

(3)弁護士への相談

弁護士に相談するのもおすすめです。弁護士に相談すれば、警察への届出、いじめの証拠集め、加害者家族や学校側との協議などについて、法的な観点から適切な助言やサポートを受けられます。

繰り返しになりますが、いじめの多くは犯罪行為です。悪質ないじめに対しては警察への相談も前向きに検討し、被害者児童の心身の安全を最優先に守るようにしましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年09月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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