いじめ・嫌がらせ被害|警察が動かないケースがある? 対処法は?
昨今では、いじめも内容によっては犯罪行為として対処すべきだという認識が広がりつつあります。ただし、いじめ被害について警察に対応してもらうためには、いくつかのポイントを意識することが重要です。
本記事では、いじめ問題で警察が動かないのはどのようなケースか、警察を動かすにはどのような対処法が有効か分かりやすく解説します。
1. 学校におけるいじめ・嫌がらせとは
(1)いじめ・嫌がらせの定義
学校におけるいじめ・嫌がらせとは簡単に言うと、一人または複数の生徒が他の生徒を標的にして、体や心を傷つける行為のことです。昨今では、SNSを使った誹謗(ひぼう)中傷やプライバシーの侵害が問題視されるなど、いじめの手段も時代と共に変化・多様化しているため、いじめの定義も幅広くなっています。たとえば、文部科学省による最新の定義は以下の通りです。
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」
(参考:「いじめの定義の変遷」(文部科学省))
「心理的又は物理的な影響を与える行為」という表現は漠然としているように思えるかもしれません。しかし、いじめの中には無視をしたり、遠巻きにひそひそ陰口を叩いたりなど、直接的な攻撃とは言いにくいものもあります。
その意味では、いじめの定義はあえて狭く限定せず、「対象となった児童が心身の苦痛を感じているもの」というように、被害者の立場を主軸にとらえた方がよいとされています。
(2)いじめも内容によっては犯罪
いじめは、子ども同士のこと、学校内のことだからと軽視されがちですが、場合によっては、れっきとした犯罪行為になります。具体的には、以下のような罪が該当します。
- 傷害罪
- 暴行罪
- 脅迫罪
- 器物損壊罪
- 名誉毀損(きそん)罪
- 侮辱罪
昨今、文部科学省は、重大ないじめについては警察へ相談・通報するように学校や教育委員会に呼びかけています。しかし、2章で解説するように、警察が動くかどうかはケース・バイ・ケースであるため注意が必要です。
2. いじめ問題に対し警察が動かないケースはある?
いじめの問題を警察に相談・通報しても、状況によってはすぐに動いてくれないこともあります。その主な理由としては、「事件性がない」「緊急性がない」「証拠がない」の3つが考えられます。
(1)事件性がない
「事件性がない」とは、いじめが法律で禁じられている行為(暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪など)に該当しない場合のことです。たとえば、無視や陰口などは心理的な苦痛を与えるいじめですが、直接的な犯罪行為には該当しづらく、警察側では対処できないことがあります。
(2)緊急性がない
警察の対応における「緊急性」とは、その状況を放置することで、人の命や心身、財産などへすぐに被害が出そうな状況のことです。特に、無視や陰口など身体的・金銭的な被害が出ないようないじめの場合は、緊急性が低いと判断されてしまいがちです。
(3)証拠がない
いじめの事実を示すような証拠がない場合も、警察はすぐに動いてくれないかもしれません。たとえば、殴る蹴るなどの暴行を現実に受けたとしても、そのけがが完全に癒えきった後に口頭だけで被害を訴えても、警察としては対応に困ることが多いです。
このように、いじめの被害を訴えても警察が動いてくれないケースがあります。しかし、だからといって警察が当てにならないわけではありません。上記の3点を証明できれば、警察による法的な措置を期待できるからです。
3. 警察が動かない場合の対処法
では、警察にいじめの対応をしてもらいたい場合、何をすべきなのでしょうか。以下では、警察に動いてもらうために有力な方法を3つ紹介します。
(1)いじめの証拠を集める
第一に、いじめの証拠を集めることです。いじめの証拠は、警察に通報する場合だけでなく、学校側への相談や加害者家族への対応など、あらゆる場面で役立ちます。
いじめの証拠として使えるものは、いじめの現場を録音または録画したデータ、SNSのグループメッセージのデータ(スクリーンショット)、暴力を受けた部位の写真や医師の診断書などです。第三者からいじめの証言を得られるなら、それも有力な証拠になります。嫌がらせの手紙や落書きなども重要な証拠資料になるので、現物を保存したり、カメラで撮ったりしておきましょう。
(2)事件性を主張する
第二に重要なのが、被害届や告訴状を作成・提出して、事件性を主張することです。ここには、いじめが始まった時期、いじめの内容、いじめた人の名前や特徴、目撃者の名前などを記載します。警察を動かすために重要なのは、法律に抵触するようないじめ被害を記載することです。自分が受けた被害が、単なる悪ふざけなどでは済ませられない明確な犯罪行為であることを強く主張しなければいけません。
(3)弁護士へ相談する
多くの人にとって、警察との交渉や被害届や告訴状の書き方などは、慣れないことで不安に思うことでしょう。その場合、弁護士へ相談するのもひとつの手です。弁護士は法律の専門家なので、被害届や告訴状の書き方はもちろん、どのような証拠が法的に有効なのか、警察をどのように説得すればいいのかも熟知しています。
警察に通報しない場合でも、加害者家族や学校と話し合いをする際の交渉役をしてもらったり、法的に適正な方法で加害者家族へ賠償請求をしたりするといったことも可能です。弁護士には守秘義務があるので、相談した内容が第三者に漏れる心配もありません。
以上が、いじめ問題に警察が動かない場合の対処法です。いじめは決して許されるものではありません。自分の心と体の安全を守るために、必要なときにはためらわず周囲へ助けを求めてください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年09月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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