子供が学校で事故に遭ったら誰が責任を負う? 実際の判例や賠償で解説

子供が学校で事故に遭ったら誰が責任を負う? 実際の判例や賠償で解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

学校事故の被害に遭った場合、加害者および学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

今回は学校事故について、主なパターン、加害者・学校に生じる法的責任、損害賠償が問題となった裁判例などを解説します。

1. 学校事故とは

学校事故とは、学校生活の中で発生する事故全般を意味します。

主な学校事故のパターンとしては、以下の例が挙げられます。

(例)

  • 設備、遊具などの欠陥が原因で事故が発生し、生徒がケガをした
  • 他の生徒からいじめを受けた生徒が精神的ダメージを受け、不登校になった
  • 生徒が教師から体罰を受けてケガをした

など

特に、学校の設備が適切にメンテナンスされないまま老朽化している場合や、学校側の監視が行き届かない状況で生徒の活動が行われている場合には、学校事故の発生リスクが高い状況といえるでしょう。

2. 学校事故の責任は誰が負うのか?

学校事故については、加害者や学校側が被害者に対して損害賠償責任を負います。

(1)加害者の責任

不法行為責任or責任無能力者の監督義務者の責任

加害者がいる場合(例:いじめ、体罰)、加害者は被害者に対して、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を負います。

ただし加害者が年少の場合(おおむね10歳~12歳以下)、責任能力がないとして不法行為責任が否定される可能性が高いです(民法第712条)。その場合は、加害者本人に代わり、その親などの監督義務者が損害賠償責任を負います(民法第714条)。

(2)学校側の責任

国公立学校or私立学校

教師などの公務員が加害者になった学校事故については、学校側も被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。この場合、損害賠償責任の法的根拠は、国公立学校と私立学校で以下のとおり異なります。

①国公立学校の場合

教師などの公務員が、職務上の故意・過失によって被害者に損害を加えた場合は、国または地方公共団体が国家賠償責任を負います(国家賠償法第1条)。

②私立学校の場合

雇用する従業員(教師など)が、事業の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者である学校が使用者責任を負います(民法第715条)。

なお、国家賠償責任や使用者責任は、教師などが積極的に加害行為をした場合(体罰など)に限らず、生徒の活動に関する監督義務を怠った場合(いじめを見過ごした、目を離した間にケガをしたなど)にも発生する可能性があります。

また、学校の遊具その他の設備に欠陥があったために学校事故が発生した場合には、国公立学校・私立学校のいずれも、被害者に対して損害賠償責任を負います(国家賠償法第2条、民法第717条)。

3. 学校事故に関する損害賠償が問題となった裁判例

学校で発生した事故に関して、被害者の加害者・学校側に対する損害賠償請求が争われた事案を2つ紹介します。

(1)授業中に起きた学校事故の裁判例

千葉地裁平成24年11月16日判決の事案では、公立小学校6年生の児童が、別の児童が振り回した鉛筆が目に刺さってケガをしたことにつき、加害児童の生徒に監督義務者としての損害賠償責任が認められました。

その一方で、学校側の国家賠償責任は否定されました。その理由として千葉地裁は、加害行為がわずか10秒足らずの出来事であり、物音も立っていなかったため、教師が加害行為を未然に防ぐのは不可能だったことを挙げています。

(2)休憩時間中に起きた学校事故の裁判例

水戸地裁平成24年2月10日判決の事案では、私立中学校1年生の生徒が、休み時間中に落下してきた高さ155センチメートルの掲揚台の下敷きになって死亡したことにつき、担任教師および学校法人の損害賠償責任が認められました。

水戸地裁は、損害賠償責任を肯定した理由として、掲揚台に柵を設置するなどの事故防止措置をとらなかったことなどを挙げています。

上記2つの裁判例のうち、1つは学校側の責任を否定したものの、もう1つは学校側の責任を肯定しました。このように結論は分かれましたが、いずれの裁判例も「注意を払っていれば事故を避けられたかどうか」という基準で判断している点は共通しています。

学校事故について学校側に損害賠償を請求する際には、学校側が講ずることのできた事故防止措置の内容や、それが十分に可能であったことなどを説得的に訴えることが大切です。

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