学校事故とは? 損害賠償の種類と賠償請求の判断について解説

学校事故とは? 損害賠償の種類と賠償請求の判断について解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

体育の授業中に子どもが骨折してしまうなど、学校の管理下における活動の中で児童が負傷・死亡する事故を、一般に学校事故といいます。

学校事故の場合、原因説明を学校側に求めても納得のいく対応をしてくれなかったり、適切な補償を受けられなかったりするケースもあり、どこに相談すればよいのか悩む親御さんもいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、どのような事故が学校事故に該当するのかの具体例や、学校事故に対してどのように責任を追及するかなどについて解説します。

1. 学校事故とは?

まずは、学校事故とはどのような事故なのか、一般に学校事故に該当する具体的なケースはどのようなものがあるか、について解説します。

(1)学校事故とは

学校事故とは何かについて、法的に厳密な定義はありませんが、一般的には以下の条件を満たす事故が、学校事故に該当すると考えられます。

  • 学校の管理下のもとで事故が発生したこと
  • 学校の活動中、または学校の設備によって事故が発生したこと
  • 事故の結果、児童生徒がケガを負ったり亡くなったりしたこと

これらには、授業中に限らず部活動、課外活動、学校行事にくわえ、登下校中の事故も含まれる可能性があります。

(2)学校事故の具体例

学校事故の具体的ケースとしては、以下のものが挙げられるでしょう。

ケース1:授業中の事故

体育の授業中で徒競走をしたところ、校庭に異物があったため児童がつまずいて転倒し、ケガをしてしまった。

ケース2:部活中の事故

柔道の部活中に、顧問の教員が体格や技量に差のある先輩と後輩に組ませたところ、先輩に投げられた後輩がうまく受け身をとることができず、頭を強く打ってしまった。

ケース3:教員の行為による事故

校則に違反した生徒を先生が叱っている際に、先生が生徒を平手でたたいたために、生徒の鼓膜が破れてしまった。

ケース4:学校の設備による事故

児童が課外活動をしていたところ、学校に設置されていた棚が転倒し、棚の下敷きになって負傷してしまった。

(3)学校事故における行政上の救済

学校側が独立行政法人日本スポーツ振興センターと災害救済給付制度について契約していた場合、金銭的救済を受けられる可能性があります。学校の管理下で児童生徒が負傷したり亡くなったりした場合、学校の責任の有無を問わず、病院で「医療等の状況」の証明を受けることで、災害給付金が支払われることがあります。

この制度は、健康保険が適用される療養が対象となります。また、医療費の月分ごとに、2年の間に請求を行わないと請求できなくなるので注意しましょう。

2. 学校事故で請求できる損害賠償の種類

学校事故で請求できる費用の種類として最もメジャーなのが「慰謝料」です。請求できる慰謝料の種類は大きく分けて3種類です。

(1)入通院慰謝料

学校事故が原因で被害者の児童生徒が怪我を治療するために入院や通院が必要となった場合は、入通院を余儀なくされたことにより被った精神的苦痛への賠償として入通院慰謝料を請求できます。

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、学校事故が原因で被害者の児童生徒に残った後遺症の症状が後遺障害に該当する場合に生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。

この慰謝料は、後遺障害であることが認定された場合に請求が可能です。認定される後遺傷害等級は第1級を最重度とし全体で第14級まであります。最も等級の低い第14級でも裁判となれば110万円程度、第1級ともなると2800万円程度にもなることがあるため、後遺障害等級認定は受けるべき認定といえます。

(3)死亡慰謝料

学校事故が原因で被害者の児童生徒が死亡したことで生じる精神的苦痛に対する慰謝料として、被害者の近親者は死亡慰謝料を請求できることがあります。

この慰謝料の中には、死亡した被害者児童本人への慰謝料のほか、被害者家族が請求できる慰謝料も含まれており、交通事故の例では、一般的に2000万円〜2500万円といわれています。

2. 学校事故で教職員や学校へ損害賠償請求はできるか?

学校事故が発生した場合に教職員や学校に損害賠償請求ができるかについて、私立と公立のそれぞれのケースにおいて解説していきます。

(1)私立学校での学校事故の場合

私立学校で発生した学校事故の場合、事故を起こした教員や学校に対して、直接損害賠償を請求することができます。私立学校での学校事故で損害賠償を請求する法的な根拠としては、主に以下の3つがあります。

①不法行為責任

不法行為とは、故意または過失によって他人に損害を与えた場合に、その損害を賠償する責任を負うことです(民法709条)。

たとえば、体育の授業において教員がわざともしくはうっかり不適切な指導をした結果、児童が骨折してしまった場合、教員に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

②使用者責任

使用者責任とは、ある事業のために「他人を使用する者=使用者」が、「使用される者=被用者」の行為によって他人に損害を与えた場合に、その損害を賠償しなければならないとすることです(民法715条)。

被用者の行為によって損害が生じた場合でも使用者が賠償責任を負うことから、使用者責任と呼ばれます。

たとえば、体育の授業において教員が不適切な指導をした結果、児童が骨折した場合に、教員を使用して業務を行っている使用者である学校に対して、使用者責任を追及することが考えられます。

③土地の工作物等に関する責任

土地の工作物等に関する責任とは、土地の工作物の設置または保存に瑕疵(かし)があることによって、他人に損害が発生した場合には、その工作物の占有者が賠償責任を負うということです(民法717条1項)。

少し難しい言葉になりますが、学校事故においては以下のような解釈となります。

  • 土地の工作物…学校の施設や遊具など
  • 瑕疵…施設や遊具に不備があること
  • 工作物の占有者…学校のこと

たとえば、学校の校庭に設置されたブランコで遊んでいたところ、ブランコの鎖が壊れていたために児童が骨折してしまった場合に、工作物であるブランコの占有者である学校に対して賠償責任を追及するなどです。

(2)公立学校での学校事故の場合

国家賠償法1条では、国または公共団体の公務員(教員)が、職務中に故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合に、国または公共団体が賠償責任を負うことを定めています。

したがって、国公立の学校事故では、教員や学校に対して直接賠償責任を追及するのではなく、教員や学校が所属する国または公共団体に対して賠償責任を追及することになります。なお、国立の学校の場合は国、公立の場合は県や市などの公共団体が対象になります。

たとえば、A市立学校の体育授業で教員が誤った指導をした結果、児童が骨折した場合には、教員や学校に直接損害賠償請求をするのではなく、公共団体であるA市に対して損害賠償請求をします。

私立にせよ公立にせよ、学校事故の責任を認めさせるには、重要となる事実や証拠を把握したうえで、適切な法的根拠に基づいて主張し請求をすることが重要です。

学校事故の損害賠償請求は、基本的には示談交渉から始めることが多いですが、慰謝料の算定と請求には法律の知識が不可欠となりますので、早い段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年05月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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