いじめの損害賠償請求したい! 相場・内容証明・訴訟の手続きなど
  • 2021年05月11日
  • 学校・教育

いじめの損害賠償請求したい! 相場・内容証明・訴訟の手続きなど

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

「子どもがいじめ被害に遭い、転校を余儀なくされてしまった」「加害者親や学校側に相談したが、改善の見込みがまったくない」そんな状況により、法的措置を検討している方もいらっしゃるかもしれません。いじめ被害に対して法律上認められている社会的制裁としては、民事裁判での損害賠償請求が挙げられます。

では実際に裁判を起こして勝訴した場合、どの程度の金額を獲得することができるのでしょうか。いじめの損害賠償金の相場や手続きの流れについて、解説します。

1. いじめによる裁判と損害賠償金の具体的ケース

(1)いじめにより自殺した事件

高校の吹奏楽部で起こったいじめによる自殺事件です。被害者の女子生徒は、高校入学後に吹奏楽部に入部した直後から、「アトピーが汚い」「邪魔」などの言葉によるいじめを受けていました。その後うつ病と診断され、自宅トイレで自殺しました。被害者の両親は学校宛てに質問書を提出しますが、学校側の回答は「いじめという認識はしていない」でした。被害者の両親は、加害者生徒と県に対して損害賠償請求訴訟を起こしましたが、加害者生徒のうち2名は証拠不十分として請求棄却されたため、残りの1名のみと戦うことになりました。第一審の判決(横浜地裁平成18年3月28日)には当事者双方が控訴し、最終的には加害者生徒と県との和解が成立しました。和解の中で、加害者生徒1名は“謝罪と弔慰金30万円の支払い”を、県は“謝罪と和解金440万円の支払い・いじめ防止策の徹底”などを約束しました。

(2)いじめにより転校した事件

同級生からいじめられた男子生徒が中学校を転校し、さらに引っ越しもせざるを得なくなったというケースです。
被害者本人は、加害者らに対して、連帯して、慰謝料等約330万円を、被害者の両親は、加害者らに対して、連帯して、転校に伴う費用相当額の損害金等約565万円を請求しました。しかし、裁判所は、加害者生徒に被害者本人に対する55万円の損害賠償金支払いを命じるにとどまりました(京都地裁平成22年6月2日)。
加害者生徒は問題児として学内でも有名な生徒でした。被害者に対しては、「性器を見せろ」「みんなの前で歌え」など言葉による嫌がらせや強要のほか、弁当のおかずを奪う、体を殴るなどの暴力も加えていたと報告されています。
なお、上記はあくまで一例となります。いじめの背景や加害者・被害者、学校側の対応によって個々に異なる点をご注意ください。

2. 損害賠償請求の相場・訴訟手続きの流れ

(1)損害賠償額はケース・バイ・ケース

いじめ被害に遭った場合、加害者とその親に対しては民法上の不法行為責任に基づく損害賠償請求を、学校側(公立校の場合は設置者である都道府県)に対しては不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができると考えられています。しかし損害賠償金の相場は、被害の態様や背景、証拠の有無などによりケース・バイ・ケースです。まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめします。具体的な状況をヒアリングした上で、適切な金額を提示してもらえるでしょう。

(2)まずは内容証明郵便による任意交渉

依頼を受けた弁護士は、一般に内容証明郵便等による任意交渉を行います。弁護士は被害者の代理人として学校・教育委員会、そして加害者の親に状況を説明し、損害賠償金を請求します。
ここで相手方が損害賠償請求に応じてくれれば、民事訴訟を起こす必要がなくなる可能性があります。学校側や加害者がいじめの事実を認め、謝罪し、再発防止策を講じるなど真摯に対応してくれない場合には、最終手段として訴訟を起こすことも考えられます。

(3)訴訟手続き

民事訴訟で損害賠償請求を行う場合には、いじめの事実を裁判官に証明できるような証拠が必要となります。たとえば、日記、録音データ、動画データ、SNSのスクリーンショット、メール履歴、同級生の証言などです。日時・場所を含む詳細な状況が把握できるものが、望ましいとされています。なお、民事訴訟の手続きには専門知識と実務経験を要するため、弁護士に依頼するのが一般的です。

いじめにより負った心身の傷を完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、相手の非を公にし、損害賠償金を転校・進学などの教育費に充てるなどして、子どもの明るい将来に役立てることは可能です。

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