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名義貸しとは|潜むリスクと違法性
賃貸や金融などの契約にあたり、本人以外の名義で結ぶことは違法になります。「ローン契約の名義貸しを頼まれた」「友人の賃貸契約で名義人になってほしいと頼まれている」といったことで悩んでいる場合は、名義貸しのリスクや対処法などを理解することが大切です。
本コラムでは、名義貸しのリスクやよくある事例、万が一名義貸しを行った場合の対処法などを紹介します。
1. 名義貸しとは?
名義貸しとは、自分の名前を他の人に貸して、実際の契約者になることです。会社経営や金融取引、賃貸の契約などさまざまなケースで行われることが想定されますが、名義貸しは親子や家族、親しい友人の間柄でもトラブルに発展するケースが少なくありません。
(1)名義貸しが行われるケース
ここでは名義貸しが行われる具体的なケースを挙げて解説していきます。
たとえば過去に債務整理を行ったため、賃貸契約の審査が通らない状態の友人がいるとします。その友人が、どうしても住む場所が必要なので、賃貸の契約のために名義を貸してくれないかと頼んできました。ここでもしあなたがその友人に名義を貸し、部屋が借りられたとすると「実際にその物件に住む本人」と「契約者」は別の人ということになります。
このようなケースが名義貸しです。名義貸しにはさまざまな危険が伴いますが、意外にそのリスクに気づいていない人が多いかもしれません。異なる名義で賃貸契約をした場合は本人だけでなく、名義貸しをした人も罪に問われる可能性があり、他人事ではいられません。
他にも、名義貸しと見なされるケースとしては、他人が使用する銀行口座を自身の名前で開設する、営業職の友人から頼まれて営業ノルマ達成のために商品の契約に名義を貸す、他人の携帯電話を自身の名前で契約する、宅建、薬剤師などの資格者として実際にその営業所に在籍しないにもかかわらず名義を貸す、などが該当します。
2. 名義貸しを行うリスク
名義貸しは、貸すことにより受け取れる報酬に目がくらんでつい、人助けのために、と軽い気持ちで行われることがありますが、さまざまなリスクを伴うことを見落としてはいけません。ここからは名義貸しに潜むリスクについて解説します。
(1)犯罪行為に巻き込まれる可能性がある
異なる名義を使って契約をした場合は、名義を借りた本人だけでなく、名義貸しをした人も違法となる可能性が大いにあります。
たとえば、名義貸しをして契約した携帯電話番号が振り込み詐欺に使われた、名義貸しをして開設した銀行口座がマネーロンダリング、詐欺行為に使用されていた、といった場合は名義を貸した本人も、刑法第62条第1項の詐欺行為へのほう助と見なされる可能性があります。
その他にも携帯電話を契約した本人と実際に利用する人が違う場合は携帯電話不正利用防止法違反となり、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。
もしSNSや知人などから「代わりに銀行口座を開設してほしい」「携帯を代わりに契約してほしい」などの依頼が入っても応じないことが大切です。
(参考:「携帯電話不正利用防止法」(総務省・警察庁))
(2)損害賠償請求を受ける可能性がある
たとえば、会社の経営者や役員として名義貸しを行っていた場合に、その会社が他の企業などに何らかの損害を与えたとします。その場合、自分が実際の経営や役員として関わっていなかったとしても、民法400条の管理者の注意義務にのっとり、監督として報告を行わなかった責任を問われて損害賠償義務を負担しなければいけなくなる可能性があります。
また、車の購入に名義貸しを行った場合に、実際に車を利用している運転者が事故を起こしてしまったとすると、名義貸しを行った当人も車の所有者と見なされるため、自動車損害賠償保険法第3条に基づき被害を受けた相手への損害賠償責任を負うことになります。
(3)借金の返済義務を負うほかトラブルに巻き込まれる可能性がある
クレジットカードやローン、消費者金融からの借り入れなどで名義貸しをした場合は、借金の支払い義務は名義人にあると見なされます。そのため、返済が滞った際の督促は名義人に届くことになります。名義人自身が信用情報機関のブラックリストに載ってしまったり、「自分は名義を貸しただけだから関係ないのでは」と督促を無視したりしていると、どんどん延滞利息が膨れ上がってしまったといったことになりかねません。
また、借り入れにあたっての名義貸しが発覚した場合は、詐欺罪に問われる場合もあります。
3. 借金の返済義務を負ってしまった場合の対処法
名義貸しを行ったばかりに借金を負ってしまった場合は、どのように返済を行うかを考えなければなりません。対処法についてみていきましょう。
(1)名義を貸した相手に支払ってもらう
最も望ましいのは、借金をした本人と連絡を取り、なるべく早く借金を返済してもらうことです。
しかし、督促状が届いている場合は、相手はすでに支払いが困難になっており、返済が難しいことがほとんどです。連絡先を変え、住む場所もわからないといった音信不通の状態では返済の要求をすることさえ困難です。
(2)自分で返済する
借金をした本人が返済できない場合は、名義人へ返済義務が残るため支払いをしなければならなくなります。なるべく早く切り上げで完済することが、借り入れ利子を少なくするためにも望ましいですが、多額の借金がある場合は一括での返済が難しいと考えられます。
そのような場合は、債務整理を行う選択肢があります。債務整理とは、利息を減額し支払額を減らしたり、支払期限を延ばしたりすることで返済負担を軽減する手続きのことです。債権者とのやり取りや資料作成などが必要となるため、専門知識を有する弁護士に依頼するとスムーズです。
(3)弁護士に相談する
「借金をした本人と連絡はつくものの返済してもらえない」といった状況で困っている場合は、弁護士を通すことで解決方法が見つかる可能性があります。
また、自身での返済が厳しい場合も弁護士へ相談するのがおすすめです。法的な手続きや交渉など、専門家ならではの、できるだけ不利益にならない解決方法の提案が受けられます。
名義貸しで借金を負ってしまった、損害賠償を問われる係争に発展してしまった、といった思いもよらないトラブルで困ったときは、専門家である弁護士のサポートが頼りになります。一人で悩まず、まずは相談してみましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年11月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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