ライブ配信で投げ銭トラブル。対処法はある? 事前の防止策は?

ライブ配信で投げ銭トラブル。対処法はある? 事前の防止策は?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

ライブ配信アプリなどでの「投げ銭トラブル」が多発しています。

国民生活センターにも、未成年の子どもが親のクレジットカード番号を使って投げ銭を繰り返してしまい、多額の請求を受けたといった事例が報告されているとのことです。

なかには、中学生の子どもが投げ銭を含めて数か月で100万円以上のサービスを利用した事例もあるので、とつぜん高額な請求を受けた親の驚きは大きいでしょう。

やはり、わが子が利用した投げ銭などのサービス利用料は親が支払いの責任を負うのでしょうか?

1. 「投げ銭」とは?

「投げ銭」という用語は比較的に新しい用語です。ネットサービスに慣れている子どもたちの世代では当然のように使われていますが、どういう意味なのでしょうか?

(1)投げ銭の意味

「投げ銭」とは、リアルタイムで動画を配信する「生配信」やSNSの「ライブチャット」と呼ばれるサービスにおいて、配信者に応援金を支払う課金機能です。大道芸や音楽演奏などのストリートパフォーマンスに対して通行人やファンがお金を渡す、古くは「おひねり」と呼ばれる風習のネット版だと考えればわかりやすいでしょう。

ほかにも、サービスによっては「スーパーチャット(スパチャ)」「お布施」など別の名称で呼ばれることがありますが、意味は同じです。

投げ銭をするには、クレジットカードで直接決済するほか、サービスごとに「コイン」などと呼ばれるポイントを購入してポイントを消費する方法もあります。

(2)投げ銭が原因で起きた実際のトラブル

投げ銭をすると、配信中の動画で名前を呼ばれたり、質問に対して優先的に配信者がコメントを返したりするというメリットがあります。この点が過熱を生み、トラブルに発展する事例は少なくありません。

令和4年6月には、スポーツ協会の重役による巨額の着服が発覚して大きな話題になりました。着服した資金はほぼ全額がネットの投げ銭につぎ込まれていたそうです。

投げ銭トラブルは、子どもだけでなく、大人の世界でも深刻化しています。

2. 子どもが無断で多額の投げ銭! 取り消すことができる?

未成年の子どもが投げ銭に過熱して、勝手に多額をつぎ込んでいた場合、誰が責任を取るのでしょうか?

(1)未成年者取消権による取り消しが可能なのか

民法第5条第2項では、未成年者が親権者の同意を得ずにおこなった法律行為について、その法律行為を取り消すことができると定められています。未成年者が勝手に結んだ契約は、あとから親権者による取り消しが可能です。これを「未成年者取消権」といいます。

子どもが無断で投げ銭をつぎ込んでいたとしても、請求を受けた親は「未成年者取消権」を理由とした取り消しの主張が考えられます。

(2)未成年者取消権が認められないケース

未成年者取消権が存在しているからといって、必ず契約の取り消しが認められるわけではありません。

  • 子ども自身が「成人だ」と偽ってサービスを利用した

このようなケースでは、未成年者取消権が認められるのが、少し難しくなります。

民法が未成年者取消権を設けているのは、類型的に判断能力が乏しいと思われる未成年者を保護するためです。

一般的に、未成年者が自らを成年者であると偽ったのであれば、「詐術」(民法第21条)によるものとして取り消すことができません。

なぜなら、未成年者に騙すだけの高い能力があったといえるため保護する理由に乏しく、また、契約の相手方のことを考えると大人と思って契約したにもかかわらず実は未成年で取り消しと言われれば、予想外の損害が発生する可能性があるからです。

しかし、インターネット上の投げ銭においては、リアルの(対面での)場合と異なって見た目という判断材料がなく、また、単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックする場合では騙すだけの高い能力があったとはいえない上に、企業としても未成年者が契約をしている可能性を考えるべきでしょうから、「詐術」とは、言いがたいでしょう。

実際の事例において、未成年者取消権が認められるのかは、弁護士にご相談ください。

3. 投げ銭トラブルを防止するために今すぐやるべきこと

投げ銭トラブルを防ぐためにはどんな対策を講じればよいのでしょうか?

(1)クレジットカード情報を厳格に管理する

投げ銭が思わぬ多額になってしまう背景には、ショッピングの限度額が高額なクレジットカードの利用があります。

子どもが無断でクレジットカードやカード情報を使用しないように、カードそのものをたとえ家族でも勝手に使えないように保管する、ショッピングなどの利用時にカード情報を自動で入力しないように設定する、決済時には親のスマホなどに通知するよう設定するといった対策が大切です。

(2)スマホやアプリの使用を制限する

日常生活における礼儀やマナーを子どもに教えるのと同じで、現代ではインターネット社会の常識や安全利用も教育の一環として親が子どもに教えなければなりません。

スマホに依存しすぎないように利用時間を取り決める、アプリケーションの利用状況を確認する、不適切なアプリをインストールしていたら本人に言い聞かせて削除するといった制限が考えられるでしょう。

子どもが勝手に投げ銭をして配信者に多額を投げうっていたとしても、返金や取り消しが認められる可能性は決して高くありません。

実際に未成年者取消権が認められる可能性がある状況なのかの判断や運営会社・クレジットカード会社との交渉は簡単ではないので、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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