“ごま油”カルテル疑い…4社協議し価格引き上げたか 消費者の財布を直撃する「不当な取引制限」とは?

弁護士JP編集部

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“ごま油”カルテル疑い…4社協議し価格引き上げたか 消費者の財布を直撃する「不当な取引制限」とは?
ごま油国内シェア一位のかどやもカルテルに参加していた疑いがもたれている(弁護士JP編集部)

ごま油の販売で、卸向け販売価格を事前に協議し引き上げていた「カルテル」の疑いがあるとして、13日に公正取引委員会が日清オイリオグループ(東京都中央区)など4社に、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査を行ったことがわかった。

報道によれば、立ち入りがあった4社は日清オイリオグループ、ごま油販売最大手のかどや製油(同品川区)、老舗の竹本油脂(愛知県蒲郡市)、九鬼産業(三重県四日市市)だ。この4社はごま油の市場シェアの大部分を占めている。

各社の担当者は原材料の価格上昇などを受け、利益確保を目的として情報交換を行い、協議した上で販売価格を引き上げたと見られる。現時点では、カルテルが始まった時期は不明だという。

「カルテル」何がいけないの?

「カルテル」(不当な取引制限)とは、本来事業者が自主的に決めるべき、商品の価格や販売数量、取引先などを、複数の事業者が共同で決め、競争を回避する行為のことだ。

たとえば、市場シェアの大きい複数の事業者らがカルテルを形成し、商品の価格を高く設定して維持する「価格カルテル」、販売数量や生産数量を絞り、商品やサービス等の市場への供給を減少させ、商品の価格を高く維持する「数量カルテル」などがある。

本来であれば市場原理が働き、価格競争を通じて適正な商品価格に落ち着くが、「価格カルテル」や「数量カルテル」が発生していると、商品が高値となり、結果的に消費者が不利益を被ることになる。

カルテルへの罰則

カルテルは未遂であっても刑事罰・過料の対象となっている。

今回「不当な取引制限」容疑で立ち入り検査が行われた4社には、今後、独占禁止法(第89条第1項第1号)にもとづき、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる可能性がある。(※両罰規定により、法人・団体については5億円以下の罰金)

公取委により課徴金の納付が命じられることもある(独占禁止法第7条の2)が、課徴金は公取委への報告・調査協力を行った場合、減免される。

東京霞が関にある公正取引委員会(弁護士JP編集部)

ごま油「カルテル」長期間行われていたか

日清オイリオグループは昨年10月、原材料のごま種子価格が高騰しているとして今年1月の納入分から取引先への販売価格の4~26%引き上げを発表。

かどや製油でも、昨年10月出荷分から出荷価格で7~15%引き上げ(家庭用)。竹本油脂、九鬼産業も11月、業務用価格をサイズや品質に応じて10%以上引き上げた。

ごまの主力輸出国であるアフリカでは政情不安が高まり、いりごまなどの食品用も含めたごまの輸入価格は2年半で約2倍になっている。しかしカルテルによる価格のつり上げは、大口の顧客からの値下げ要請などに対抗するため、長期間にわたって行われていた疑いが持たれているという。

食卓にかかせないごま油をめぐるカルテルの疑いに、インターネット掲示板やSNSなどでは「なんか高いと思ってたんだよね」「高くても風味が良くて買っていたけどこんな事されていたのは残念」と消費者の落胆の声が並んでいる。

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