免許不要&ノーヘル即OK? 注意すべき“電動キックボード規制緩和”のカン違い

弁護士JP編集部

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2022年04月27日 10:41

免許不要&ノーヘル即OK? 注意すべき“電動キックボード規制緩和”のカン違い 早くとも2年後までは免許&ヘルメットが必須(Ystudio / PIXTA)

電動キックボードの新たな交通ルールを示した道路交通法の改正案が4月19日の国会で可決・成立した。2024年春ごろまでに施行される見通しだ。

改正により電動キックボードに対する規制は、現在の「原付」並みから「自転車」並みへ緩和が進むとされている。

賛否を含め議論がなされてきた電動キックボードだが、なぜ今規制緩和の流れが生まれているのだろうか。

規制緩和の背景

電動キックボード普及のきっかけとなったシェアリングサービス(※1)が世界的な広がりを見せる理由は、環境問題への貢献だろう。

(※1)時間単位で自転車や電動キックボードを借りるサービス。

フランスでは、2017年ごろから普及し一挙に市民権を得たシェアリングサービス。その浸透には、2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素)達成を目標に掲げたフランスの「エネルギー・気候法」の後押しがあった。電動キックボードのCO2排出量は自動車の約40分の1と言われている。

またパリ市では公共交通機関での新型コロナ感染を防ぐため、自転車専用レーンが新たに設置された。これも大きな追い風となり、2020年の電動キックボードの販売数は34%増加した(前年比)。

マイクロモビリティが挑む社会問題解決

日本政府もまた、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、「地域脱炭素ロードマップ」を策定。重点対策のひとつとして「車中心から人中心の空間への転換」が挙げられており、電動キックボードも該当するマイクロモビリティ(※2)の普及が期待されている。

(国土交通省自動車局「地域から始める超小型モビリティ導入ガイドブック」より)

(※2)自動車よりコンパクトで環境性能に優れ、地域の移動の足となる1~2人乗り程度の車両のこと。超小型モビリティとも呼ばれる。

マイクロモビリティの普及により個人の移動範囲の拡大が見込め、街の回遊性の向上から、人口の都市部一局集中、高齢者の移動(買い物)問題など、社会問題解決の糸口になる可能性があると言われている。

法改正に不安の声も・・・

しかしフランスでは、法整備が充分になされていないまま電動キックボードの利用者が増加したため事故も多発した。フランス政府は世論や事故状況に合わせ規制を強めている。

特に利用者の多いパリ市では、国に先行して規制強化を進めた。歩道走行は全面的に禁止され、一回目の規制では最高25kmだった時速を20kmに減速、現在では10kmまで抑えられた(一部幹線道路は20kmで走行可能)。

日本では各国の動きや国内での実証実験の結果をもとに今国会で可決・成立した改正法だが、ドライバーや歩行者からは不安の声も上がっている。

規制緩和でどうなる?

現行では「原動機付自転車」という車両区分に該当している電動キックボード。

改正案について、一部の報道では「自転車」並みの規制に緩和されると報道されているが、自転車が属する軽車両扱いになる訳ではない。新たな基準を設け「特定小型原動機付自転車」という車両区分を創設する。

基準の詳細は未定だが、「特定小型原動機付自転車」に分類された車両であれば、運転免許証が不要になるほか、ヘルメットは着用必須から努力義務へ。さらに速度が時速6kmに制御される機体であれば例外的に歩道の通行も可能になる。

一方で、新たな基準に該当しない車両は、改正法施行後も今まで通り「原動機付自転車」のままであり、免許もヘルメットも必要だ。

「特定小型原動機付自転車」はまだ決まっていない部分が多い

マイクロモビリティ推進協議会の事務局長を務める城氏は、「道路交通法で定められた項目以外について、自賠責保険の適用やナンバープレートをどうするのかなども含めて、『特定小型原動機付自転車』の基準はこれから改めて各省庁によって決定されます。内閣府令で定められるスピード以上の速度を構造上出すことができる機体は、今後も免許・ヘルメットは必要です」と現時点では新たな基準が決まっていないことを強調する。

見た目で「原動機付自転車」と「特定小型原動機付自転車」の識別がしにくく、取り締まりも難しいのではないか。協議会として新たなルール作りに協力をしているという城氏は、その疑問に対し以下のように答えた。

「一般の方や警察官が一目でそれぞれを見分けられるよう『特定小型原動機付自転車』の機体には”識別灯火”を搭載し、歩道走行可能な6キロ以下で走行している機体は何色、20キロ以下では何色とランプの色で区別、”識別灯火”がついていない機体については今まで通り原付とするなどの案が国交省で議論されています」(城氏)

電動キックボードによる事故と予防策

警視庁の調査(2021年)によると、電動キックボードを当事者とする交通事故は東京都内で68件(うち人身事故18件、物損事故50件)、交通違反で取り締まった件数は207件だった。スマートフォンを操作しながら救急車に衝突した物損事故や、大阪では、2人乗りで歩行者をひき逃げし重傷を負わせた人身事故も起きている。

電動キックボードのシェアリングサービス利用時にはアプリの登録が必要となり、乗車の際にGPSによる位置監視がなされる。仮に違反すれば、アプリのアカウントが停止されるなど、安全運転への意識を利用者と共有しやすい。仮に事故を起こした場合の対応についても、アプリを通じ周知に努めているという。

ただ、個人で購入した電動キックボードの利用者は、本来であれば整備が必要な機体(サイドミラーがない状態のものなど)を購入し、そのまま公道を走行するといったことも起きやすい。

大手通販サイトなどで日本の整備基準に合わない海外製品を直接購入することもできてしまうほか、国内の販売店であっても声掛けが不足していたり、商品説明に記載された注意書きの文字が小さく気づきにくいと言った報告も城氏の元には寄せられている。

マイクロモビリティ推進協議会 事務局長城氏

城氏らマイクロモビリティ推進協議会は、警察庁が立ち上げた「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」に参加し、シェアリング事業者だけでなく販売事業者、そして警察、自治体、国土交通省などの担当者と一緒になって、ルールを確認しあい、法整備に沿った安全な電動キックボードの普及活動に取り組んでいるという。

新しい移動手段としての可能性を多く持つマイクロモビリティ。その安全かつ快適な導入のために各省庁や事業者には適正な規制を、そしてユーザーには交通ルール順守の徹底を求めたい。改正法の施行は2年後だ。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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