四国犬が児童ら12人にかみつき、トイプードルも犠牲に…飼い主が負う法的責任は?

弁護士JP編集部

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四国犬が児童ら12人にかみつき、トイプードルも犠牲に…飼い主が負う法的責任は?
飼い主に従順だという四国犬(anahtiris / PIXTA ※事件の加害犬ではありません)

2月7日、群馬県伊勢崎市で飼育されていた四国犬が脱走し、小学生ら12人がかまれけがをした事件で、かんだ犬が狂犬病の予防注射を打っていなかったことが明らかになった。

日本では、1950年に制定された「狂犬病予防法」に基づき、飼い主には犬の登録(市区町村への届け出)と、年に1回の狂犬病予防注射を犬に受けさせる義務がある。登録や予防注射を行っていない場合は、20万円以下の罰金が科せられる(狂犬病予防法第27条)。

しかしそれ以前に、ペットが逃げて他人をケガさせてしまった場合、飼い主には法的責任が問われる。

ペットが他人にケガを負わせた…飼い主の責任は?

動物愛護法に詳しい小泉将司弁護士は、今回の事件について、 「ペットが逃げたことについての“不注意(過失)”の程度により、飼い主は過失傷害罪(刑法209条)または重過失傷害罪(刑法211条1項後段)に問われる可能性があります」と説明。また、地域によっては「条例違反」によって処罰される可能性もあると指摘する。

事件が起きた群馬県では、「群馬県動物の愛護及び管理に関する条例」で「飼い犬の係留」を義務付けており、これに違反していたと認められる場合は5万円以下の罰金が科せられることになっている。

さらに、民事上の損害賠償責任(民法718条)も発生すると小泉弁護士は続ける。

「被害者は、加害動物の飼い主に対して、ケガの治療費、通院費用や、負傷に対する慰謝料、後遺障害が生じたときはその等級に応じた慰謝料を請求できます。慰謝料は通常、交通事故と同じような基準で算定され、賠償額が数百万円に達することもありえます」

なお、民法718条には「動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をしたとき」は賠償責任は生じないと書かれているが、小泉弁護士によれば、現実に「相当の注意」を払って管理をしていたと認定されるケースは“まれ”だという。

他人の“ペット”が死んでしまったら…

今回の事件では、被害を受けたのは小学生ら12人だけではない。報道によると、近くを散歩していた小型犬のトイプードル1匹もかまれるなどの被害に遭ったといい、飼い主が救急病院に連れていったが死んでしまったという。

人ではなく、他人のペットにケガを追わせてしまった場合などについて小泉弁護士はこう語る。

「ペット同士の争いは刑事事件にはなりませんが、相手の飼い主から民事訴訟を起こされて損害賠償を請求される可能性があります。その場合、相手の動物の治療費はもちろん、死亡してしまった場合には、飼い主の精神的苦痛に対する慰謝料が認められるケースもあります」

「危険な犬種」の飼い主は責任も重い?

現時点で12人にけがをさせ、犬1匹を死亡させたとみられる「四国犬」。

公益社団法人「日本犬保存会」 のホームページでは、四国犬は「動作は敏捷(びんしょう)で優れた骨格を備え」「総体的に頭の良い犬」と紹介されている。

四国犬を含む日本犬は、オオカミに近い犬種で、かつては狩猟犬としても用いられていた。

小泉弁護士は、「飼っている動物の種類によって責任や罪の重さが変わることはない」としつつ、飼い主に求められる「注意義務の程度」が変わることはあると指摘。

「動物が危険であればあるほど、『相当の注意』を払っていた、もしくは 『過失』がなかった、と認められるためのハードルは高くなるといえます」

取材協力弁護士

小泉 将司 弁護士
小泉 将司 弁護士

学生時代、寮内に住み着いていた猫を、廃寮・転居時に連れ出し一緒に暮らし始めたのをきっかけに、猫保護団体(ボランティア)に所属し保護活動に従事。現在も自ら保護した猫とともに暮らしています。

所属: ベリーベスト法律事務所 京都オフィス

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