震災でも議論呼ぶ“デマ投稿のインプ稼ぎ”実は「まったく割に合わない」ワケ…拡散だけで「責任」生じる可能性も

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

震災でも議論呼ぶ“デマ投稿のインプ稼ぎ”実は「まったく割に合わない」ワケ…拡散だけで「責任」生じる可能性も
悪質な「インプ稼ぎ」の投稿は、以前から問題視されていた(bee / PIXTA)

1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」から約1か月が経過した。

岸田文雄首相は1月8日「被災地での犯罪発生の報告を受けています。強い憤りを感じています」とX(旧Twitter)に投稿。

警察庁なども、地震に便乗した悪質商法への警戒を引き続き呼びかけている。

東日本大震災では「19億円超」被害 能登半島地震“便乗”詐欺に警察庁など「迅速」注意喚起のワケ

一方、今回の地震を巡ってはSNS上で「インプ稼ぎ」と呼ばれる投稿も注目された。

以前から批判の声、今回の地震でも問題に

Xでは昨年夏、広告収益配分プログラムが導入され、一定数以上のインプレッション数(閲覧数)を集めたユーザーが収益を得られる仕様になっている。

1インプレッションあたり何円になるのか、といった基準は明記されていないものの、過去には「2ちゃんねる」開設者で実業家のひろゆきさんが約36万6000円の振り込みがあったと明かしていた。

広告収益が支払われることで、インフルエンサーやクリエイターらにとってはメリットとなる一方、「インプレゾンビ」と呼ばれるアカウントや、悪質な「インプ稼ぎ」の投稿が問題となっている。

話題となっている投稿に対して意味のない、もしくは意味不明なリプライを送るといった行為や不確かな情報などをもとに人々の不安感をあおる、といった投稿があてはまり、以前から一般ユーザーらからは批判や不満の声が上がっていた。

そして今回の地震では「迷惑系YouTuber」などが被災地を訪れ、「インプ稼ぎ」目的の投稿をしているとして、アイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともかさんが「被災地は『映えスポット』じゃない」と訴えるなど再度議論をよんでいる。

また、今回の地震に関連した「インプ稼ぎ」を目的としたと思われる投稿の中には、内容が偽情報であるものも見受けられており、政府もネット上の偽情報への注意を呼びかけている。

中にはウソの救難要請もあるといい、関西テレビによると警察がこうした投稿を受け出動したケースもあるという。

デマ投稿は「まったく割に合わない」

では、こうした「インプ稼ぎ」の投稿に、法的なリスクはないのだろうか?

IT関連問題などに詳しい鮎澤季詩子弁護士は「SNSにデマを書きこむだけでは、ただちにそれが違法であるとはいいきれませんが、書かれた内容によっては刑事上及び民事上の責任を問われる可能性があります」と話す。

「たとえば、会社の業務活動を妨害することになれば、偽計業務妨害罪に問われます。平成28年の熊本地震の際には、『動物園からライオンが逃げた』などとSNSでデマを流した人が、偽計業務妨害罪の疑いで逮捕されました。

ウソをついて救助隊を架空の災害現場へ急行させ、無用な実害を発生させた場合も同様と考えられます。

また、提供された食事に異物や昆虫が混入している写真を捏造してデマを広めた、というような場合には、信用棄損罪に問われる可能性があります。

その他、今にも殴りかかろうとしているように見えるよう写真を加工・捏造などして、襲われかけたとデマを流したというような場合には、名誉棄損に問われる可能性があります。

いわゆる「インプ稼ぎ」は、1つ1つの投稿に対する対価が決して高額ではないことを考えると、デマを書き込むことによって前科前歴がついたり、民事上の賠償責任が生じたりするリスクがある、というのはまったく割に合わないといえるでしょう」(鮎澤弁護士)

“拡散しただけ”でも責任を問われる可能性が…

鮎澤弁護士は、SNS上のデマを拡散した場合のリスクについても指摘する。

「リポスト(旧リツイート)行為は、他人の投稿を引用して再投稿する行為ですが、内容によっては違法な投稿に賛同する意思表示の投稿主体として、引用元の投稿主と同様の責任を問われる可能性があります。

令和元年にも、他人を誹謗中傷する内容の投稿をリポスト(旧リツイート)した人が、名誉棄損に問われ、民事上の賠償責任を負ったケースがありました。

災害救助を求める投稿などは特に、人助けの気持ちで反射的に拡散させたくなってしまいますが、デマを拡散することになれば、災害現場を混乱させ、真に救助が必要な人の救助が遅れる可能性があります。

デマかもしれないという視点を持って拡散を思いとどまる、信用できる情報源の裏どりをする等、インパクトのある投稿に接したときほど、冷静な対応が必要といえます」(同前)

デマを「拡散しただけ」であっても、それによって生まれるリスク、与えてしまう影響は決して小さくない。そうした情報を再度「自分が流す」前に、一度立ち止まって考えることが必要なのは言うまでもない。

取材協力弁護士

鮎澤 季詩子 弁護士

鮎澤 季詩子 弁護士

所属: ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィス

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア