綾瀬はるか、弁護士役で月9初主演 『元彼の遺言状』原作者が語るキャスティングの妙

弁護士JP編集部

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綾瀬はるか、弁護士役で月9初主演 『元彼の遺言状』原作者が語るキャスティングの妙
『元彼の遺言状』 (C)フジテレビ

月9ドラマ『元彼の遺言状』が、4月11日からフジテレビにて放送される。本作は、第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した新川帆立の同名小説を原作に、主人公の敏腕弁護士・剣持麗子を綾瀬はるかが演じる。

今回は原作者の新川帆立に、作品が生まれた経緯からドラマ化への期待まで話を聞いた。自身も弁護士としての勤務経験のある新川ならではの視点や、女性の描き方に込めた思いに、ますますドラマへの期待が高まる。(取材・文=Nana Numoto)

ドラマ化は「嬉しい」よりも「役に立つことができてよかった」

さっそくですが、『元彼の遺言状』の執筆に至った経緯を聞かせてください。

新川帆立

新川帆立(以下、新川):もともとはファンタジーやSFを書きたいと思って作家を目指していました。でもお世話になった元編集者の方から「まずは身近なものを深く書けるようになってから範囲を少しずつ広げていったほうがいい。そうでないと、いろんなものを小器用に書く作家というイメージになってしまう」とのアドバイスを頂き、納得したんです。当時、私は弁護士だったので、同じ年齢で、同じ女性で、同じ仕事の弁護士という人物を主人公にしようと思い『元彼の遺言状』を書きました。性格は私と全然違うタイプなんですけどね。

『このミステリーがすごい!』大賞の作品は映像化されることも多いです。受賞後に映像化したいという思いはありましたか?

新川:これは何も考えていませんでしたね。作家デビューしたいという気持ちが一番でしたので、自分の本が世に出ることが嬉しくて、その先のことは全然想像できてなかったです。

実際に映像化の話が来た時のお気持ちを聞かせてください。

新川:嬉しいというよりも、こんな私でも何かしら世の中の役に立てることがあってよかったという感じです。書くことが好きなので、書き終わったあとは「楽しかった」と自分の中で一区切りついてしまうところがあるんです。それが社会で役に立つコンテンツになるというところまでは想像していませんでした。自分が作品を世に出すことで派生のコンテンツが世界に生まれていくというのは、すごく良いことだと思っています。

本作の中ではベントレー、ハリーウィンストン、ロールス・ロイスといった固有名詞が登場します。それとは対照的に「ハイブランドのスリッパが転がっている」という表現にとどまっているところもあります。両者のかき分けや、固有名詞を出したところに意図はありましたか?

新川:これは読者さんがわかりやすいように選んでいます。固有名詞を出したほうがわかりやすいかどうかです。ロールス・ロイスと書くと車の形が浮かぶと思いますが、どういう形かを言葉でごちゃごちゃと書くとわかりづらくなる。あえてわかりやすいようにブランド名を使っています。逆に「ブランドのスリッパ」と書いてあったら、みんな適当に思い浮かべると思うので、そこは書かなくていいかなと。

麗子の性格はスカーレット・オハラ?

女性の登場人物や女性同士の関わりの中で具体的に描きたかったものを聞かせてください。

新川:現実の女性になるべく近づけたいと思いながら書きました。自分の周りでハイキャリアとして仕事を頑張っている女性たちを見ると、正当に認められたいという気持ちはみんな持っていますが、付き合う相手がお金持ちじゃないと嫌だという人は少ない気がします。そういう自分の周りのリアルな女友達や女性の同僚や先輩を見て参考にしています。私は女性同士の関わり合いでどろどろとしたものは、あまり経験してきませんでした。友達関係もそうですし、職場でもむしろ女性同士が協力することの方が多かった。そういう関係性は意外とフィクションの世界では書かれていないので、なるべく自然なリアリティのある女性を書きたいなと思いました。

女性同士だから変につるむとか敵対するっていうところがなくて、フラットだなと感じました。

新川:何であんなにフィクションでは、ごちゃごちゃしているものが多いんだろうと思いますけどね(笑)。中学生くらいまでは、つるむとかある気もするのですが、大人で普通に働いていたら、そんなことないでしょと思ってしまって。女性の読者さんからは、そこが良かったという声をいただくこともあって、嬉しいです。

主人公の麗子は大変個性的なキャラクターでしたが、モデルとなる人物はいますか?

新川:特定のモデルはいないです。私は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラが凄く好きなのですが、彼女はけっこうわがままで強めの女性。そんな風に癖のある子を書きたいなあというのが最初にあり、それで麗子をこの性格にしました。作者自身がモデルではと言われることも多いですが、全然私には似ていないと思います。ただ、前向きというか比較的ポジティブなところは似ているかな。あまり意識はしていないのですが、ポジティブな人間が書くとポジティブな人間になってしまうということかと思っています。

主人公は2人で遊びに行ける”友達”

キャラクターを作りこんでいく作業は難しかったですか?

新川:作品の最初の60ページくらいは思うように書けなくて苦労することもありますが、何回か書き直して、このストーリーを歩んでもらうのに適している子は「こういう子」だと深めていくと、そのあとは結構するすると書けるイメージですね。登場するキャラクターは自分の“友達”という感覚でいます。“友達”になれたキャラクターは、一緒に遊びに行った時にどういう動きをするかが何となく分かる。書きながら発見する部分はありつつも、ある程度こういう人だと分かっているので、あんまりキャラクター作りでは苦労していないです。

登場人物の裏設定のようなものは作らないのですね。

新川:作れなくはないのですが、あまり作る必要を感じていなくて。キャラクター表は作りませんが、自分の化粧品を買いに行った時に「あ!麗子ちゃん、このマスカラ使ってそう」みたいなことはありますよ。麗子ちゃんは絶対デパコスだし、ランコムとか使っていそう(笑)。他の作品のキャラクターですが、この子はドラッグストアで豆乳イソフラボン乳液を買っている子だと思いながら書いていたり。

新川帆立『剣持麗子のワンナイト推理』(宝島社)

日常生活でも、例えばランコムの前を通った時に麗子のことをパッと思い出す瞬間があるのでしょうか?

新川:あります。ここで唐突に宣伝を挟むんですけれども、4月8日に3作目になる『剣持麗子のワンナイト推理』という作品が発売され、麗子ちゃんが再び登場します。また麗子ちゃんの話を読みたいという読者さんからのリクエストもありましたが、私も久しぶりに麗子ちゃんに会いたくて。そこは友達感覚だから「また一緒に遊びに行きたい」という気持ちで、麗子ちゃんを主人公に書いたところがあります。主人公は2人で遊びに行ける“友達”で、脇役の子はグループでなら遊べる“友達”といった感じです。脇役の子とは2人で出かけたら会話が詰まりそう、その子のことをあまり知らないから(笑)。そのキャラクターについて私が知っている量というものも違うんですよ。

綾瀬はるかさんなら「間違いない」

フジテレビの『月9』という注目の集まる枠での映像化となりますが、作品が手を離れてしまう不安やドラマ化への期待があれば教えてください。

新川:不安はなくて、楽しみですね。全然どんな話になるか知らないので、ワクワクしています。脚本はいただいていますが、出来がどれだけ良くても、読むと絶対に直したくなるので読まないと決めています。やはりドラマ化は、そのクリエイターさんの作品になるので、私は口出ししない方が結果的に作品のクオリティは上がるだろうというふうに思っています。

映像化に関して何かリクエストしたことはありますか?

新川:特にないのですが、プロデューサーさんとお話したときに「現代の女性たちを応援したいという気持ちで書いています」といった話はしました。

麗子役は綾瀬はるかさんですが、これはイメージ通りですか?

新川:ピッタリだと思いました。麗子ちゃんって強くて怖いところもあるんだけど、ちょっと抜けていたり、忘れっぽかったり、天然な感じもあって。そういう多面的な女性として書いたので、人間らしさを表現できる役者さんに演じてもらいたい気持ちがありました。なので、綾瀬さんと聞いたときには「間違いない」と思って、すごく嬉しかったです。

新川帆立『元彼の遺言状』(宝島社)

小説のイラスト表紙と同じポーズを綾瀬さんがとっている全面帯(画像参考)もありますが、ビジュアルもピッタリだなと思いました。

新川:綾瀬さんの、イラストに負けない美しさにびっくりしました。表紙イラストを書いていただく際にもお伝えしたことですが、麗子ちゃんのビジュアルは峰不二子みたいなイメージです。キャリア女性というキャラクターを作るときに、たいていのイラストや実写ではショートカットやボブカットのようなスタイルに前髪なしでキリッみたいな感じが多い。でも世の中の女性たちはそうでもなくて、普通に可愛い感じの服を着てバリバリ働いている人もいますので。麗子ちゃんはフェミニンなイメージで書いていて、セリフもあえて女言葉を使っています。“女の子”のまま社会に出て行ってほしいなあと思っているんです。

その辺りの描き方とか思いは、すごく進んでいると感じました。女性がフェミニンでコンサバだと、女らしくて嫉妬深いというステレオタイプのイメージがつきやすかったりしますし、女性らしい体つきとなると逆に今度は性的なイメージがつきやすかったりすると思うんです。けれどこの作品はそこが全部フラットで、あらゆる点で解消されている。今お話を聞いて嬉しかったです。

新川:よかったです。かわいい感じの子がすごいバリバリ働いていたりとか、現実では全然ありますからね。峰不二子みたいな体つきの人でも全然“お色気”みたいな感じじゃない。そういう意味では、女性をちゃんと人間として書きたいという気持ちはありますね。

大泉洋さんにはびっくり! 配役の妙

そして大泉洋さんの篠田役ですが、年齢などは作品で言及されたビジュアルとは少し異なる印象もありますけれど。

新川:これは、めちゃくちゃ驚きました!言われてみれば確かに面白そうですが、思ってもいなかったので。確かに作中の篠田くんのビジュアルとは違うけれど、全然いいと思います。むしろ楽しみですね。配役の妙みたいなものに感銘を受けました。

役者としての綾瀬さん、大泉さんに感じる印象があれば、改めてお伺いしたいなと思います。

新川:私が言うのはちょっと恐れ多いのですが、どちらにもポジティブなエネルギーを感じるし、明るい印象があります。ギャグじゃないのにちょっと笑ってしまうみたいな。人を笑顔にするセンスをお持ちの方たちだと思っています。この作品はミステリーで重たい展開の部分もあるのですが、全体的にはカラッと明るい作品なので、そういうカラーにすごくマッチしている2人だなと感じております。

その他のキャスト陣も公開されたばかりです。

新川:元カノ2人(原口朝陽役/森カンナ、森川雪乃役/笛木優子)と、元カノになれなかった子(森川紗英役/関水渚)の3人が出てきますが、その女性陣にぴったりの役者さんをキャスティングしてくださっているなと感じました。それがすごく嬉しかったです。役者さんってすごいなと思うのは、場面写真を撮られた時のふとした表情がすごくそのキャラクターっぽい。多分普段からそういう顔をしているのではなく表情を作っているんでしょうけれど、その入り方に納得してしまって、しみじみ感動していました。

生田斗真さんは、麗子の元彼・栄治とその兄・富治を一人二役で演じられますね。

新川:生田さんの一人二役については全く予想していませんでした。性格がかなり異なる兄弟なので、生田さんの演技はもちろん、衣装や小道具など、どのように違いを出してくるのか楽しみにしています。

改めてドラマに対して注目して欲しい部分などあれば聞かせてください。

新川:立体的な人間を書こうとキャラクターにこだわって書いた小説なので、役者さんたちがどういう演技をしてくださるのかが一番楽しみです。原作者の立場を離れた一視聴者としてですが、綾瀬はるかさんと大泉洋さんは共演していそうでしていなかったので、この2人の絡みがどんな感じになるのかをすごく楽しみにしています。この組み合わせは絶対に面白いというのが、わかりますもの。

原作小説情報

『元彼の遺言状』(宝島社文庫)
著者:新川帆立
出版社:宝島社
価格:本体682円+税
公式サイト

ドラマ放送情報

『元彼の遺言状』
フジテレビ系にて、4月11日(月)スタート、毎週月曜21:00~21:54放送
※初回30分拡大(21:00~22:24放送)
綾瀬はるか 大泉洋 /生田斗真/ 浅野和之
関水渚 森カンナ ・ 笛木優子 要潤
野間口徹 佐戸井けん太 笹野高史 萬田久子
原作:新川帆立「元彼の遺言状」(宝島社)脚本:杉原憲明 音楽:川井憲次
プロデュース:金城綾香 宮崎暖 演出:鈴木雅之 澤田鎌作 西岡和宏 制作著作:フジテレビ
公式サイト
公式Twitter:@motokare_cx_
公式Instagram:@motokare_cx

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