盗撮に児童買春……ハレンチ校長先生の「社会的制裁」は十分か?
学校教師のハレンチ事件が後を絶たない。
「セフレとのセックス動画をツイッターにアップして3月4日に懲戒免職処分になった墨田区立小学校勤務の男性教諭(32)、担当していたクラスの男子生徒と自宅で性行為に及び、同じく懲戒免職になった都内中学校の女性教諭(32)、勤務先の高校で、女子生徒や同僚の下着をスマホで盗撮し、3月23日に福岡県教委から懲戒免職処分となった男性教諭(27)など、この春、学校教師の性犯罪は特に多い印象ですね」(夕刊紙記者)
極め付けは、2月15日、岡山市立開成中学校の校長A(60)が、コンビニエンスストアで女性のスカート内を盗撮し、県迷惑行為防止条例違反容疑で現行犯逮捕され、懲戒免職処分となった事件。現役の校長先生の犯罪に周囲は唖然となった。Aは市立幼稚園長も兼務していた。
Aは容疑を認めた上で、「欲求を満たす目的で若い頃から盗撮を繰り返し、近年は加工した靴の中にスマートフォンを隠し入れていた」と供述。同市教委の懲戒規程では、盗撮は停職または減給が相当とされているが、悪質性や立場も鑑み、最も重い懲戒免職処分が下された。
「ハレンチ校長」と言えば思い出されるのは、7年前の2015年4月8日、マニラのホテルで13~14歳の少女3人と淫行し、その様子をデジタルカメラで撮ったとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで神奈川県警に逮捕され、その後、懲役2年(執行猶予4年)の判決を受けたT元校長。
Tも元横浜市内の中学校の校長だったが、昭和63年以降、25年以上に渡り、のべ1万2600人以上の少女らを買春、410冊のアルバムに約15万枚の写真を残していた。
逮捕当時、すでに退職していたT元校長は横浜市教委から、「在職中に重大な信用失墜行為をしており、懲戒免職に相当する」として退職金約3000万円の返金を命じられている。
「社会的地位が高い」=「厳罰」ではない
いずれも重い刑罰を科せられているが、犯罪や刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士は、〝社会的地位の高い人〟のこの手の犯罪に対する刑罰についてこう話す。
「量刑の理屈で言うと、『社会的責任が高く発覚時のリスクが大きい犯罪』は〝一般に規範を乗り越えるハードルも高いと考えられるのに、それを乗り越えた以上、強度の犯意ないし犯罪との親和性がある行為と言えるので、より重い処罰が必要〟といった論理から、その行為責任が重く評価されることはあると思います」
本来、人を教育する立場にある先生、それも校長ともあれば、厳罰だと考えるのは市井の常だ。ただ、杉山弁護士自身の考えを聞いてみると……。
「社会的責任・道義的責任を刑罰に持ち込むことには、私は性犯罪に限らず懐疑的です。そもそも何らかの社会的責任を負って生きていない人は少なく、性犯罪を犯して逮捕され報道されれば、職や学校を失い、家族との関係にも支障が出るのは、何も教師や医者に限ったことではないです。
わざわざ刑罰の重さを『人』ではなく『行為』の程度で評価する論理を採用していながら、結局人の地位に軸足を置いた理屈に重く処罰しようとするのは、やや矛盾するようにも思います」
刑罰は「感情」に任せずに行われないよう注意が必要
杉山弁護士の話は、その根底にある「刑罰」に対する考え方に及んだ。
「このように理屈にこだわる理由は、結局、刑罰が国家による個人に対する正当化された暴力であり、ルールなしに、感情に任せずに行われないよう、注意が必要だからです。教師や医師といった地位に責任を求めるのであれば、それはその資格に関わる法において行われれば良いのであり、たとえば実際に医師の資格については、医師法に行政処分の規定があり、公務員よりも資格への影響が生じやすくなっています。
教師についても『教員による児童生徒性暴力防止法』で、その地位の是非を問う方向は強化されています。そのように、社会的地位が伴っている人には、その資格や地位を取り扱う法があり、そこで問題とされれば十分に、『こんな(エラい)人が~していて良いのか』という問題には答えられます。刑罰の適用場面では、教師も医師も国家の強制力の前に立たされた、ただの人であり、その地位ゆえに厳罰という方向には傾くべきでないと考えます」
つまりしっかりした行政処分がなされれば、刑法の前では平等であるべきだということだ。いずれにせよ、これ以上、〝ハレンチ先生〟による事件が頻出しないことを願うばかりだが……。
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