年賀はがき「自爆営業」廃止後もSNSで“継続中”投稿の真相は? 日本郵便は「否定」も政府に指摘された“構造的問題”
郵便局員に課される「年賀はがきの販売ノルマ」は、販売しきれなかった枚数を局員が自腹購入せざるを得ないいわゆる“自爆営業”が問題視されたことから、2018年末に廃止された。しかし2023年11月に内閣府「規制改革推進会議」の事務局が公表した資料によると、2020年以降も一部の郵便局では自爆営業が続いているという。先日もX(旧Twitter)上で、過剰なノルマを課せられた郵便局員が、大量の年賀はがきを買い取り業者に持ち込んでいるとの投稿が話題になった。
こうした現状について、日本郵便株式会社はどのように捉えているのだろうか。
年賀はがきを「レターパック」に交換して金券ショップへ?
話題になったXの投稿によると、自爆営業による“錬金術”はこうだ。まず郵便局員が年賀はがきをレターパックに交換し、懇意の買い取り業者へ持ち込む。そして、その業者がレターパックを金券ショップへと売りさばいているという。ただし匿名アカウントの投稿ゆえ、真偽は定かではない。
一般的に広く知られていないが、未使用の年賀はがきは1枚につき5円(100枚以上は1枚につき10円)の手数料を払えば、郵便局窓口で同額分のレターパックや切手などに交換できる。もし63円の年賀はがき100枚をレターパックに交換すると、手数料500円を引いた5800円分のレターパックに換えられるわけだ。
件(くだん)の投稿には「レターパックが金券ショップに山積みになっている」とも書かれていた。そこで、金券ショップが多く集まる「ニュー新橋ビル」(東京・港区)をのぞいてみると、“山積みのレターパック”こそ見られなかったものの、ショーケースの中に見本が置かれていたり、店頭に「在庫アリ」の貼り紙が掲示されたりするなど、多くの店がレターパックを販売していることが分かった。
価格帯はレターパックプラス(正規料金520円)で480~500円。レターパックライト(正規料金370円)は350円前後といった様子。年賀はがきそのものも売られていたが、ほとんどが売り切れとなっていた。
“自爆営業”について日本郵便の見解は
ネット上のウワサが本当なのか、店先の様子からは分からない。そこで、自爆営業の実態について日本郵便株式会社に質問状を送ったところ、以下の回答が得られた。
「社員による年賀はがきの買取りや、金券ショップへの持ち込みなどについては、年賀はがきの販売目標が設定されていたことにより行われていたものです。現在は販売目標の設定を全般的に廃止しているため、実需のない買取りが一部の現場で続いているといった事実は確認されておりません。仮にノルマを課すような現場があれば、厳正に対処いたします」(日本郵便株式会社・広報部担当者)
日本郵便としては、あくまで自爆営業はなく、全社員に対して適切な営業活動の指導を徹底しているとの答えだった。もしネット上のウワサのように金券ショップに大量に“横流し”する行為が発覚した場合、何か罰則などは設けられているのだろうか。
「実需のない年賀はがきの買取りは不適正な営業活動であり、厳に禁止と指示しております。判明した場合は、社内規定により厳正に対処いたします」(同前)
各業界で自爆営業”規制強化、政府はガイドライン策定を検討中
公式には“ない”とされている郵便局員の自爆営業。しかし冒頭で紹介したように、政府の調査資料では、2020年以降の事例として「年賀はがきについて郵便局では1万枚の『目標』が示され、社員の自爆営業によって約100人の社員の8割が達成する。売り切れない分は自費で買い取り、金券ショップで転売するが、通常の販売額との差額は自腹で負担し、2万円ほど自腹で負担する例もある」と、転売の実情も含めて報告されており、「日本郵便はノルマの廃止を打ち出しているが、拠点数が多く、指示が現場に徹底しないため、一部の現場では続いている」との見解も示されている。
自爆営業そのものは、法律違反やパワハラに該当しない。それゆえに、内閣府の規制改革推進会議では以前から問題視されており、ガイドライン策定に向けて協議が進められてきた。2023年12月26日に開かれた会議では、自爆営業の基準を設け、法律違反やパワハラになり得る事例を明確化し、「パワハラ防止指針」改正について検討を始めることが確認された。今後は厚生労働省で議論が進められるという。
年賀はがきに限らず、コンビニのクリスマスケーキや恵方巻などの季節商品、保険業界や大手通信キャリアショップでも自爆営業は横行している。ガイドライン策定により、果たして状況は変わるのだろうか。今後の動きに注目したい。
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