“どんちゃん騒ぎ”で「くも膜下出血」リスク上昇!? 「さっきまで元気だった人が突然…」“恐ろしすぎる病”のメカニズム

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

“どんちゃん騒ぎ”で「くも膜下出血」リスク上昇!? 「さっきまで元気だった人が突然…」“恐ろしすぎる病”のメカニズム
何かと宴会が多い年末年始だが…(Fast&Slow / PIXTA)

脳卒中のひとつである「くも膜下出血」は、発症した人の約30〜40%が死亡すると言われている。運よく一命を取り留めたとしても、重大な後遺症を患う人は約30%。社会復帰できる人は約30%だという。

著名人でも、元プロ野球選手の木村拓也さん(死亡)やジャニー喜多川さん(死亡)、globeのKEIKOさん(リハビリ中)、星野源さん(社会復帰)らの発症を聞いたことがある人も少なくないのではないだろうか。

死亡率の高さはもとより、ほとんどのケースにおいて何の前触れもなく突然発症するというのもまた、この病気の恐ろしさ。そして、それを誘発する“危険因子”のひとつとされているのが「飲酒」だというのだ。

くも膜下出血の原因は「よく分かっていない」

「くも膜下出血は『脳動脈瘤』(血流負荷によって弱くなった脳血管の壁が風船状に膨れたもの)が破裂することによって発症します。そして、脳動脈瘤の破裂を誘発する危険因子としては『過度の飲酒』『高血圧』『喫煙習慣』が報告されており、そのうちもっとも相対危険率が高いのが『過度の飲酒』だと言われています」

こう話すのは、聖マリアンナ医科大学東横病院 脳神経・脳卒中センター長を務める植田敏浩氏。ただし厄介なのは、脳動脈瘤が「なぜできるのか」よく分かっていないことだ。

「『脳卒中データバンク2021』によれば、くも膜下出血の発症者は7割が女性でした。50代から右肩上がりに増加し、70代がピークになっています。男性の場合は50代がピークです。

女性の発症数が多いのは、おそらく女性ホルモンの影響ではないかと考えられていますが、実のところ詳細は解明されていません。

著名人の発症例からも分かるように、くも膜下出血は性別や年齢に関係なく、男性でも、若くても、誰にでも発症の可能性があるということは心得ておいたほうがいいでしょう」(植田氏)

ホースから水が吹き出るように血液が広がる

くも膜下出血の死亡率が約30〜40%と高い理由について、植田氏は「血液が脳の内面から表面まで脳全体へ一気に広がるから」と言う。

「前述のように、くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂によって発症します。水を流していたホースの一部が突然パンッと破裂して、水が吹き出るようなイメージです。

ほとんどの場合において少量の出血では済まず、血液が脳全体に広がって強いダメージを与えます。そして怖いのは、脳動脈瘤ができても、それが破裂するまで自覚症状が出ることはほとんどないということです。

脳動脈瘤が破裂すると、突然、これまでに経験したことのないような激しい頭痛(後頭部痛)とおう吐に襲われます。そして、さっきまで元気だった人がそのまま意識不明の重篤な状態になったり、あっという間に亡くなってしまったりすることも珍しくありません」

宴会の“どんちゃん騒ぎ”でもリスク上昇?

冒頭の「飲酒が危険因子となる」というのは、アルコールによって血圧が上がることで、脳動脈瘤が破裂し、くも膜下出血が引き起こされるというもの。ただし前述のように、脳動脈瘤はできても自覚症状にほとんど表れないため、誰しも警戒すべきであることは間違いない。

「お酒を飲めば血管が拡張するので、血圧は一時的に下がります。しかし過度に飲めば、交感神経が緊張して興奮状態になり、血圧が上がります。加えて宴会などで騒ぐことも、血圧の上昇に拍車をかけます。

くも膜下出血をきたす“過度な飲酒”の基準は『1週間に純アルコール量150g以上』と言われており、5%のビールなら350ml缶11本弱に相当します(※)。『1週間に2〜3日飲みに行けば簡単に越えてしまう』と、ドキッとした方も多いのではないでしょうか。

過度な飲酒をすれば、必ずくも膜下出血を引き起こすというわけではありませんが、誰もがリスクを抱えているということは、頭の片隅にとどめておいていただきたいです」(植田氏)

※ くも膜下出血に限らなければ、たとえ少量の飲酒でも発症リスクが上がる疾病もあるので注意が必要

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア