ハウスメーカー参入で活況の「トレーラーハウス」市場… 税金面などメリット満載だが、運用には”落とし穴”も

弁護士JP編集部

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ハウスメーカー参入で活況の「トレーラーハウス」市場… 税金面などメリット満載だが、運用には”落とし穴”も
牽引車でどこへでも移動できるのがトレーラーハウスの魅力だが注意点も(のびー / PIXTA)

移動できる居住スペースとしてトレーラーハウスの注目が高まっている。世界の市場規模は2030年には約4.5兆円に達するとの予測があり、国内でも異業種から続々参入するなど、市場は拡大フェーズにある。背景には住まいに対する考え方の変化や働き方の自由度が高まったことなどがある。2023年9月にはハウスメーカーが参入。居室としてより品質の高いモデルが登場し、国内市場も活気づいている。

ハウスメーカーが本気でつくった本格派の高い質感

木肌感のある床材、同じ質感・色調の天井やベンチ収納、たっぷり光を取り込む大開口のサッシ、ホテルライクの上質なシャワーやトイレの水回り設備…。

車両内とは思えないディテールまだこだわった居室内(都内/弁護士JP編集部)

都内にあるミサワホームの展示スペースに設置された同社製造のトレーラーハウス『ムーブコア』。その居室内に一歩足を踏み込むと、武骨で無機的な外観との大きなギャップに驚かされる。それもそのはずで、同トレーラーハウスには同社がこれまで家づくりで蓄積したノウハウや技術が惜しみなく投入されている。

水回りもホテルクオリティといっていいレベル(都内/弁護士JP編集部)

「われわれがトレーラーハウスに参入した大きな理由は、弊社の工場生産による高度工業化住宅をより多くの方に知ってもらうため。ムーブコアは車両ではありますが、住居としてのクオリティにも一切妥協はしていません」と同社商品・技術開発本部技術担当部長の秋元茂氏はハウスメーカーのプライドをにじませながら力説した。

トレーラーでけん引することで、どこにでも移動でき、それでいてつくりはハウスメーカー仕様の本格派。だから、アウトドアシーンでも多様な用途に展開できる。トレーラーハウスという形態は、同社にとってその高い住宅品質をより多くの人にじかに知ってもらう意味でもなにかと都合がいい。

ターゲットはBtoB、BtoG。仮設住宅としての活用も

「ムーブコアは、多様な”いつも”と”もしも”の安心を両立します。平時は安らぎの住まいとして、災害等の非常時は仮設住宅のような使い方など柔軟に対応可能です」と秋元氏。個人利用のニーズもありそうだが、対象はあくまで企業や自治体などという。

緊急時・災害時は仮設住宅として量産も対応(都内/弁護士JP編集部)

想定用途は、事業用としてはキャンプ場などでのオープンカフェやグランピング施設での宿泊スペース、自治体向けには地域活性化の一環としてワーケーション用「リゾートオフィス」などになるという。地震や台風などの被害を受けた非常時・緊急時は、仮設住宅としての活用も可能で、工場での量産供給にも対応する。

トレーラーハウスに関わる法律

車両と住宅の2つの顔を持つトレーラーハウス。だが、法律的な扱いとしての原則は車両だ。基準となる法律は道路運送車両法。車幅や車高の法定基準をクリアすることはもちろん、車検も義務付けられている。「移動住居」として運用する分には、固定資産税を支払う必要はない。

「車両として」なら建築基準法の規制から外れるため、例えば住宅建設に適さないような土地でも設置可能となる場合もある。

一方、設置後、移動できる状態になければ、車両ではなく建築物とみなされる。「移動できない」とは例えば、電気や水道の配線・配管を簡単に取り外せない、タイヤを非装着で移動できない、階段やベランダなどで付属物が固定されており、移動の支障になっているなどの場合だ。いうまでもなく、その場合は住居とみなされ、固定資産税を支払う義務が発生する。

2つの法律をまたぐことに潜む注意点

けん引車両で全国を回り、移動した土地を気に入れば固定の住居として、それよりも転々としながら生活する方が性に合っているというなら、「車両」として運用していけばいい。特に後者の場合、かつてなら、よほど自由の利く仕事に従事していなければ難しい選択肢といえたが、働き方の多様化が浸透しつつある昨今なら可能な会社員も一定数いるだろう。

ただし、住居として運用する場合には注意すべきことがある。前述のようにトレーラーハウスは原則、車。だからこそ、建築基準法の規制からフリーとなることもある。逆に言えば、「車両として」の運用でなければ、建築基準法が基準となるため、その設置場所によっては建築基準法を逸脱する脱法行為となりうることは認識しておく必要がある。

常識に囚われない住まいとの向き合い方

長めの休暇をゆったり過ごすためのセカンドハウスとして、在宅勤務オンリーで通勤の必要がない会社員なら本拠地を転々としながらのノマドライフの拠点として、大自然の中での暮らしを希望するなら移動先での本拠地として、飲食等の事業者なら新規エリア開拓の切り込み拠点として…。トレーラーハウスをどこへでも移動できる居室と捉え、拠点の一つとして取り入れれば、生き方・働き方の選択肢は無限に広がるだろう。

車両価格は個人利用向けなら500万円前後からあるが、装備によっては1000万円を超えるタイプもある。それでも固定の住居に比べれば格段に安いが、手を出しづらいという場合は、タイニーハウスの企画開発等を行う「YADOKARI」が提供する「LIFESTOCK」というサービスを活用する手もある。

”収益物件”的側面を持ったオーナーになる手も

同サービスは、購入者がトレーラーハウスのオーナーとなり、管理や運用は同社に委託。契約で設定した期間は購入者が個人で利用し、それ以外の期間は宿泊施設として貸し出すことで収入を得るというもの。特にセカンドハウスとしての運用を検討しているなら、リスクの少ない、理にかなったトレーラーハウス保有の選択肢といえるだろう。

在宅勤務の浸透、都心と地方の物件価格の地域格差拡大など、昨今の住まいを取り巻く環境変化は、土地に縛られない本拠地の確保を合理的にしつつある。必ずしも万人向けとはいえないかもしれないが、住まいを考える際の一つの選択肢として、”移動できる住居”も十分現実的であり、面白い存在といえそうだ。

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