3000人以上の退職を代行「辞めさせ屋」が明かす…「辞めるハードルが高い会社」の特徴とその “意外”な原因

弁護士JP編集部

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3000人以上の退職を代行「辞めさせ屋」が明かす…「辞めるハードルが高い会社」の特徴とその “意外”な原因
「辞めさせてください」が言えずに苦しむ会社員は意外に多い(タカス / PIXTA)

辞めたいのに言い出せない、辞められない…。

パワハラ、セクハラ、待遇が悪い、仕事が合わないなど、理由はともかく、辞め時を見失ない、憂鬱な毎日を過ごしている会社員は少なくないかもしれない。たとえ退職が辛すぎる”関門”となってしまっていても、通過せずに希望を実現するのは社会人失格だ。

「辞めさせてほしい」が言いづらい人が増えている

昨今は転職がより一般的になり、人材の流動性は高まっている。3年以内に限れば、離職率は長らく3割前後で推移するなど、経験が少ないほど高い傾向もある。もちろん、離職者の多くは、”最後の務め”として自ら対応し、跡を濁さずに去っていく。

だが、なかなか言い出せず、こじらせ、ついには切り出すチャンスを逃してしまう退職希望者もいる。とりわけ昨今は人材不足が顕著で、社内で直接上司に言い出しにくいムードも充満している。そこで、離職を切り出せない社員が頼りにする選択肢の一つが『退職代行サービス』だ。

退職代行サービスを提供する企業の数は、2020年の時点で100社を超えている。それだけ退職しづらい会社、そして退職を切り出せない離職希望者が増大している証しといえるだろう。いまだ増加傾向の一方で、サービスの質にバラつきが目立つのが昨今の状況だという。

なぜ、退職を第三者に委ねざる得ないのか…

そうした中、これまでに「退職代行OITOMA」で3000人以上の退職を支援してきたという5Coreの齋藤大河氏。自らも退職時に辛い思いをし、退職代行の利用経験もある。利用側とサービス提供者の両方の立場を知る齋藤氏に、まずは本来自分の口で告げるべき退職の意思を第三者に委ねざる得ない要因について聞いた。

自らも退職拒否にあい、退職代行を利用した経験のある齋藤氏(弁護士JP)

「ひとつは、 “上司が高圧的な態度”であったり、 “会社の空気感が言いだしにくい”といった【会社自体に問題がある】ケースです。もうひとつは、 “生まれつき人一倍繊細な気質のHSP(ハイリ―・センシティブ・パーソン)”であったり、 “気まずくてなかなか言いだせなかったりする”など、【退職希望者本人側の精神的な側面に起因する】パターンがあります」。

前者については、いわゆるパワハラ上司だけに「辞める」とは言い出しにくいのは理解できる。後者については、内面的な側面も大きく、見落としがちだが、確かにありそうな原因だ。

齋藤氏は「円満退社を目指すなら、基本的には自分の口で意思を告げ、会社側と本人双方が納得した上で退職するのが一番」とした上で、「『意志を伝えても取り合ってくれない』『パワハラが怖くて言い出せない』といった、話し合う余地がないケースも確かにあります。こうしたケースでは、退職代行に頼るのもやむなしかと。なぜなら、精神面が擦り切れ、精神疾患になると、その後の社会復帰が難しくなる可能性もあり、いち早くその状況から脱することが最も重要だからです」と力を込める。

プロの辞めさせ屋が遭遇した “修羅場”

退職希望者本人に代わり、数多くの退職現場に立ち会ってきた斎藤氏は、これまでに遭遇したハードな事案についても教えてくれた。

上司からパワハラを受け、退職を希望していた依頼者のケースでは、会社側が退職はおろか、有給なども認めない状況だったという。当該上司は代行の現場でも怒鳴ってばかりで、終始何を言っているのかわからない状況…。結局、相手側が弁護士に相談することになり、その弁護士にこちら側の事情を説明することでようやく決着したという。

退職しづらい会社の意外な原因

退職がこじれるのは、このように会社側に問題があるケースがほとんどだというが、「ただ、“依頼者側に問題があるケース”という事案も忘れてはいけません」と齋藤氏。なんと、依頼者自身の問題で、退職が難航する場合もあるという。

「あるケースでは、代行が入ることで退職のお話自体はすんなりと終わりました。ところが、依頼者が退職届や保険証を一向に送付せず、職場に残した私物に関しても解答なし。次第に職場側も苛立ちを露わに。最終的に依頼者に直接電話をし、現状と今後について、最悪、契約解除もあると説明。それでようやく退職届の重要性や会社側が勝手に私物を廃棄できない理由を理解したようで、そこからはスムーズにご案内できました」(齋藤氏)。

退職を業者に代行したらそれで安心してしまうのか、すっかり他人事でそういう人は「自分で自分の首を絞めている」と齋藤氏は忠告する。

退職代行が「できること・できないこと」

言い出しにくい退職を使者として代行してくれる業者は、困り果てた退職希望者にとっては頼もしい限りだろう。だが、業者が退職を代行する際にできることには “厳格なライン”があることも知っておく必要がある。何も考えず、悪徳業者に依頼してしまうと、場合によっては退職手続き自体が違法になるリスクもある。

例えば、裁判に関係する事案や未払いの残業代請求、公務員の退職等は、退職代行業者が行うことは許されていない。もしも、代行業者が未払い残業代の請求もやることを謳ったり、実際に対応しているようなら、最初から弁護士に依頼するのが賢明だ。

齋藤氏の「退職代行OITOMA」の売りは、労働組合による運営。そこで、「組合員に対しては、 “研修段階で弁護士が必要なケース” “労働組合では対応できないもの”をきちんと説明し、それらに関してはできないと回答するように厳しく指導しています」(齋藤氏)と丁寧に教育・指導することで法令順守を徹底しているという。

退職代行で “逆上しがちな会社”の特徴

できれば使わず「円満に」が退職の理想形だが、代行に依頼する場合も少し気になることがある。自分の口ではなく、代行会社に退職を依頼することで、会社側に逆上されてしまうことはないものなのか…。

「確かに一部の会社様にそうしたケースもございます。その特徴としては、比較的 “むかし気質”の職場、 “パワハラ気質”の職場です。それから、 “依頼者側が問題を抱えている”場合も逆上されやすい傾向にあります」(齋藤氏)

前者は、いわば退職代行が求められる典型のパターンといえるだろう。だが、後者のように、”社会不適格社員”の尻ぬぐいのような退職の代行は、あまりやりたくないのが本音かもしれない。

ちなみに相場は3万から4万円前後。料金の他、返金保証や付帯サービス等で差別化されている。高い、あるいは安いと感じるかは本人次第。ただ、置かれた環境が厳しくても、意を決して『自分の口で意思を告げて去ること』にも、お金に換えられない価値があることは、次のステップを見据えても認識しておいて損はないだろう。

【齋藤大河】
2018年、都内マーケティング会社に入社。主にライティング業務を主に担当。2019年にSEO事業部長に任命されるも、時間外労働や連日のサービス残業、上司からのパワハラで過換気症候群を発症。退職意向を伝えたが、人手不足を理由に拒否され、出社困難に。その後、「退職代行」を利用して退職。2021年に独立し、マーケティング支援の株式会社5core(https://5core.co.jp/)を創業。併せて「退職代行というサービスをブラック企業に苦しむ国民の多くに知ってほしい」という思いから、「退職代行OITOMA」(https://o-itoma.jp/)を立ち上げる。

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