愛知・ベトナム人が51台分「軽自動車」の不正名義変更で逮捕… “法の抜け穴”突いた巧妙手口とは?

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

愛知・ベトナム人が51台分「軽自動車」の不正名義変更で逮捕… “法の抜け穴”突いた巧妙手口とは?
国土交通省・中部運輸局(PRock / PIXTA)

「事件発覚の端緒となったのは今年4月に愛知県津島市で起きた4人組のベトナム人による窃盗事件でした。事件後に警察が現場の防犯カメラを調べたところ、犯行に使用された車両が昨年12月にすでに出国していた犯行グループとは別の30代のベトナム人名義だったことが判明。捜査を続け、今回逮捕されたベトナム人の関与が浮上しました」(愛知県警担当記者)

犯罪グループや無免許の顧客らに販売

10月24日。愛知県警は他人の名前を使用して車の名義変更を行ったとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いでベトナム国籍のグエン・タム・ミン容疑者(31)を逮捕した。グエンは法の“抜け穴”とも言える巧妙な手口で不正な名義変更を繰り返していたという……。

前出の記者がグエンの手口について解説する。

「愛知県春日井市で自動車修理や販売業を営んでいたと見られるグエンは、正規のオークションで“軽乗用車”を入手し、すでに出国していたベトナム人男性の住民票のコピーを使用して不正に名義変更をしていました。道路運送車両法では登録車両(普通乗用車等)の名義変更の届け出先は運輸局となっていますが、軽自動車は国土交通省に認可を受けた独立行政法人や『軽自動車検査協会』と管轄は別で、名義変更の際の提出書類にも相違点があります」

前出の記者が続ける。

「印鑑証明書などの原本が必要な登録車両とは違って軽自動車は印鑑証明書や住民票のコピーでも受理されます。グエンはこの“法の抜け穴”とも言える制度を突き、他人名義で窃盗事件に使用された車両を含む29台の名義変更をしていたようです」

グエンはそのようにして不正に名義変更した軽自動車を冒頭のような犯罪グループや在留資格の切れた不法滞在外国人、無免許の顧客らに販売していたと見られている。

登録車両と軽自動車の法的区分の違いで…

さらに今回、名義変更の際に使用していた29台分の住民票のコピーには在留期限が2023年1月との記載があり、名義変更を行った今年1月~3月にかけて本人はすでに出国していたことも判明している。一体なぜこのような名義変更が可能だったのだろうか?

軽自動車の検査・登録を行う『軽自動車検査協会』は次の様に話す。

「軽自動車は名義変更の際、登録車と違って道路運送車両法の登録にかかる条項での除外対象となっていますので、所有者を変更する際の提出書類は求められていません。ですが、使用者が変更になった場合(名義変更)、『使用者の住所を証するに足りる書面』が必要となります。こちらは使用者の住所を証するに足りる書面であればコピーでも受理しております」

登録車両との法的区分の違いにより、軽自動車の名義変更の際には原本ではなくコピーでも可能なことは理解できるが、すでに在留期限の失効していた住民票のコピーが受理されたのは果たしてどのような理由からだろうか?

「われわれは国土交通省の認可機関であり、国に代わって名義変更等の手続きを行っていますが、協会で定めた検査義務規定を同省に提出し、認可を受けています。既定の中には名義変更の際の残留期限は含まれておらず、他の公的書類と同様、発行日から3カ月以内のものは有効としています。今回のような事件を防ぐためにも今後は国土交通省とも相談をしながら何らかの対策を検討していきます」

他にもすでに出国したベトナム人男女の名義を使用し、計51台分の名義変更を不正に行っていたと見られているグエン容疑者――。

警察は車両の販売をほう助したブローカーなどの存在も視野に入れ捜査を続けているが、取り調べに対し、「逮捕された理由がわかりません」と容疑を否認しているという……。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア