大学教授の著書「著作権侵害」にあたらず「26か所の対比表」提出ジャーナリストの訴え棄却

弁護士JP編集部

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大学教授の著書「著作権侵害」にあたらず「26か所の対比表」提出ジャーナリストの訴え棄却
判決後に会見を開いた三宅勝久氏(2月24日東京・霞が関/弁護士JP)

中京大学教授の大内裕和氏に著作権及び著作者人格権を侵害されたとして、ジャーナリストの三宅勝久氏が賠償請求を求めていた裁判の判決が2月24日にあった。東京地裁(田中孝一裁判長)は原告側の訴えを棄却した。

この裁判は、『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)など大内氏の著作の中で、三宅氏がそれ以前に発表した著作物の表現に酷似した箇所が複数見つかったとして、三宅氏が訴えを起こしたもの。三宅氏によれば、2020年7月から和解協議が行われていたが決裂し、2021年4月28日に提訴にいたったという。なお2人は、2013年に発売された『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房)では共著者だった。

東京地裁は訴えを棄却

三宅氏が執筆した「奨学金『取り立て』ビジネスの残酷ー『借金漬け』にして暴利むさぼる」(2012年4月発行雑誌「選択」)と、「若者の借金奴隷化をたくらむ『日本学生支援機構』ー延滞金を膨らませて骨までしゃぶる“奨学金”商法」(2013年『日本の奨学金はこれでいいのか!』第2章)の記述と、大内氏が執筆した書籍『奨学金が日本を滅ぼす』はじめ12編に及ぶ記事の記述が酷似しているとして、三宅氏は裁判所に該当26箇所の対比表を提出。著作権の侵害に加え、公表権などを含む「著作者人格権」の侵害を訴えていた。

さらに、「仮に原告の記述に創作性を有する部分がないとしても、被告の記述は原告の記述と文章の構成が同一であり、かつ具体的表現においても酷似していることからデッドコピー(※)といえ、不法行為である」と主張し、合わせて争点としていた。

※他人の著作物やデザインなどの創作物をそのまま模倣、模造すること。

訴えに対し、東京地裁は、「原告の記述は、奨学金の金融事業化についての一般的考察として、思想又はアイデアに属するものというべきであり、被告記述とは、表現自体ではない部分において同一性を有するにすぎない」と判断。記述順序が同一の箇所についても「その記述順序自体は独創的なものとはいえず、文章の分量も短く簡潔で、表現も特徴のないありふれたものといわざるを得ず、表現上の創作性が認められない」とし、複製又は翻案にあたらないとした。

デッドコピーによる不法行為についても、「著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情があることが具体的に認められる証拠が見当たらない」として認められなかった。

判決後の会見で三宅氏「納得がいかない」

判決後に原告の三宅氏による会見が行われ、「フィクションであれば創作性がわかりやすく著作権の主張をするのは簡単だが、私は(ジャーナリストとして)事実を書くことを仕事にしている。事実を丹念に調べ、意図的にわかりやすく簡潔に書いている。それを、『一つ一つの文章が短く簡潔だから』著作権を認められないと言われるのは納得がいかない」と判決を不服と訴えた。

「短い一文だけを抜き出して著作物だと主張しているわけではなく、文章の塊や流れが似ていることについて訴えている」と控訴して引き続き争う意向を示した。

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