ホンダが“国内初”「自動運転タクシー」車両を公開…2026年サービス開始目標の前に立ちふさがる “4つの壁”

弁護士JP編集部

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ホンダが“国内初”「自動運転タクシー」車両を公開…2026年サービス開始目標の前に立ちふさがる “4つの壁”
初公開された自動運転タクシー「クルーズ・オリジン」(10月25日東京ビッグサイト/弁護士JP)

本田技研工業が10月25日、「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト=東京・江東区)のプレスデー(一般公開は28日~11月5日)で会見し、自動運転タクシーで活用する車両「クルーズ・オリジン」を公開した。26年初頭に、都内を中心にサービス開始を目指す。数十台規模からスタートし、段階的にエリア拡大も視野に入れ、500台規模での運用を見込む。

ドライバー不足の救世主として俄然、期待が高まる自動運転タクシー。実現すれば日本では初となるだけに、車両を初公開した同社三部敏宏社長の声にも力がこもった。

「クルーズ・オリジンは人にとって絶対的な制約の『時間』から解放してくれる自動運転車両です。この車は車内が完全なプライベート空間になるため、移動中に打ち合わせをしたり、周囲に気兼ねせず、家族で何かを楽しみながら移動したり、移動時間を自由に使うことができます」

運転席のない車内は広々した空間が広がる

その言葉通り、車内に運転席がないことがひときわ目につく。先行する海外の自動運転タクシーには運転席があるだけに、同車には近未来感が充満。”乗客ファースト”で広い空間を確保し、「移動の喜び」を追求した姿勢が見て取れる。

配車から決済までをスマホアプリで完結

目指すのは、配車から決済までをスマートフォンアプリで完結するタクシー配車サービスだ。まさに次世代の移動手段というにふさわしい、実現が待ち遠しくなるこだわりと機能がワンボックスカーより少し大きめの車体に凝縮されている。

同社はこのサービスの開始日を2026年初頭に設定。それも過疎地ではなく、交通量が多く、障害となるものがあふれる東京都心部で、だ。順調にいけば、わずか2年半後には都心を無人の自動運転タクシーが走行していることになる。

初の無人タクシーの前に立ちさがる壁。タイムリミットは2年半

もはや夢物語ではなく、現実的なプロジェクトとして、同社の自動運転タクシーのプロジェクトは急ピッチで進行している。もちろん、前例のない取り組みであり、その前には、クリアすべきいくつもの大きな”壁”が立ちふさがる。

まずは、車両の日本の道路事情への順応だ。ベースとなる車両のクルーズは米国製で、そのまま日本で走行させるにはチューニングすべき部分が多々ある。そこで2021年9月から栃木県で試験車両を使い、実証実験を開始。米国での走行のクセを直すべく、調整が続けられている。

実用化を東京都心部としており、東京での実証実験も必須だ。今回、同サービスが目指すのは「レベル4」での自動運転。人が介在することなく走行し、万一の際も自ら自動で安全に停止する機能を備えた自動運転車の運行であり、2023年の法改正で解禁はされている。

ただし、該当の車両を走行させるには運行場所を管轄する公安委員会の許可を受ける必要がある。そこには「他の交通に著しく支障を及ぼすおそれがないと認められること」といった要件もあり、ハードルは決して低くない。

今回、一番の高い壁となりそうなのは、運転席がない車両を認可してもらうことだ。前例のないことだけに、クリアすべき条件が多岐にわたることは不可避だろう。とくに、安全性については強く求められるはずで、徹底した検証が必要となりそうだ。

併せて、ドライバー席がなく、無人のため、万が一事故が起こった際、責任の所在はどうなるのかといった、複雑な法的問題も立ちはだかる。

課題が山積する中、追い風も

タイムリミットが迫る中で、クリアすべき課題は多く、大きいが追い風もある。政府も、こうした動きを後押ししており、経産省は10月19日に2025年度までに新たな自動運転移動サービス実現へ向けた「レベル4モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」を立ち上げた。

11月に予定される初会合では、同社の取り組みを議題とし、自動運転タクシーの国内での実現へ向け、専門家らを交え、意見交換。より大規模かつ複雑な交通環境での次世代モビリティサービスの実現へ英知を結集し、力強くバックアップする。

夢の詰まった車両を前に、三部社長は「私たちはモビリティメーカーとしてさまざまな価値をお客様や社会に提供し続け、今年 76 周年を迎えました。その道のりを振り返ってみると、創業以来、夢を原動力に誰もが無理ではないかと思うようなことに果敢にチャレンジをし、成長してきた会社、それがホンダであると考えています」と力強く語った。

まだ誰も見たことのない世界ーー。国内初の自動運転タクシー実現の前には、いくつもの壁が立ちふさがるが、それは前例がないからこそ。同社は立ちふさがる壁を乗り越え、モビリティメーカーとしてホンダイズムを全開に、これまでも成し遂げてきたように新しい未来を切り拓く。

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