高齢者狙う “訪問販売”卑劣な手口で約3500万円荒稼ぎ… 犯行グループ再逮捕「準詐欺罪」に問われた理由とは

弁護士JP編集部

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高齢者狙う “訪問販売”卑劣な手口で約3500万円荒稼ぎ… 犯行グループ再逮捕「準詐欺罪」に問われた理由とは
犯人らがターゲットにしていたのは高齢者が多く住む集合住宅だったという…(白熊 / PIXTA)

10月24日。大阪府警は被害者の心神耗弱に乗じて作業代金等の名目で複数回にわたり金銭を詐取したとして無職・野崎永遠(とわ)(26)、弟の宇宙(そら)(24)被告ら5人を “準詐欺”容疑で再逮捕した。

野崎らは訪問販売会社を名乗り、火災報知機の電池交換などの名目で男女4人(30~80代)から現金をだまし取ったとして9月4日に詐欺容疑等で逮捕、起訴されていたが、のちの捜査で2件の準詐欺容疑が発覚。再逮捕および発表となった――。

「ボケてくれてたらめっちゃいいんですけどね」

府警担当記者は野崎兄弟らが行っていた詐欺の手口を解説する。

「野崎らは去年8月から今年5月にかけ、訪問販売で『火災報知機の電池の交換が必要』『期限が切れていると消防法に違反する』などと勧誘を行い、新品だと偽り中古電池に交換するなどの手口を繰り返していました。野崎らがターゲットにしていたのは、おもに高齢者が多く住む集合住宅で、同様の手口で約3500万円を売り上げていました」

1回目の逮捕後、警察が野崎らのSNSを精査したところ、認知症などの同一高齢者宅を複数回訪問し、多額の支払いを受けていたことが判明。グループトークの履歴には「ボケてくれてたらめっちゃいいんですけどね」「訪販(訪問販売)やってるから絶対そういうやつ取っていかないと」などの文言が残されていたという。

「野崎らは健常者だけではなく、アルツハイマー型認知症および意思疎通が成り立たなかった高齢女性者宅を複数回訪れ、ライト交換や部屋の掃除名目で合計94万6000円を支払わせていました。犯行グループは何度も契約が取りやすい訪問先のことを『凸(とつ)』『凸先』と表現。再び訪問して契約を取ることを『凸る』とやゆしていました」(前出の記者)

エアコン清浄などの名目で約300万円を支払わせていた

この認知症の高齢女性を狙った犯行で野崎らは “準詐欺罪”といったあまり耳慣れない罪名で9月25日に再逮捕されていた。

準詐欺罪とは『18歳未満の児童の知慮浅薄(ちりょせんぱく)又は人の心神耗弱に乗じて、財物を交付させ、または財産上不法の利益を得、もしくは他人にこれを得させること』を内容とした刑法第248条に規定された法律だが、発表事案となった今回の準詐欺罪の適用は明確な認知症状があった2回目の高齢女性への同罪適用とはやや法解釈が異なり、当局の「総合的な判断」(同前)からだったという。

「野崎らは昨年11月中旬から5月上旬にかけ、ろうあ者の女性が理解力が脆弱であることに乗じてエアコン清浄などの名目で約300万円を支払わせていました。女性は言語獲得期以前に重度の聴覚障害を患っていたため、コミュニケーションの手段は手話で、犯行グループとの会話は筆談でした。

一般論として、一人暮らしの高齢ろうあ者が物事を理解できず、耳の聞こえる人に迎合し、言いなりになる傾向はありますが、ろうあ者=心神耗弱者ではない、と当局は説明。ですが被害女性が野崎らから21回も訪問を受け、金銭を支払っていたことなどから総合的に心神耗弱と判断し、準詐欺容疑での再逮捕に至りました」(同前)

社会的弱者を狙った悪質極まりない犯行――。警察は野崎らの認否に関して明らかにしていないが、ほかにもろうあ者の被害者は「複数人いる」(同前)という……。

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