netgeek(ネットギーク)中傷問題に判決「モンスタークレーマー」他複数記事の名誉棄損を認定

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

netgeek(ネットギーク)中傷問題に判決「モンスタークレーマー」他複数記事の名誉棄損を認定
判決後に会見を行った原告・弁護団ら(2月15日東京・霞が関/弁護士JP)

匿名ニュースサイト「netgeek(ネットギーク)」に名誉を毀損(きそん)されたとして、運営会社と代表である男性に対し合計1650万円の損害賠償を求めていた裁判の判決が2月15日あった。原告側への名誉毀損の成立が一部認められ、東京地裁(武部知子裁判長)は運営側に計121万円の支払いを命じた。

この裁判は2019年4月8日コンサルタント、大学教授ら5人が集団で訴訟を提起。訴状によれば、被害については、代表の男性らが2015年から2018年にかけ、原告らを侮辱、名誉を毀損する記事がネットギークに掲載され、それにより精神的苦痛を受けたと主張していたもの。

記事の中には事実に基づかない虚偽に近い内容も紛れ、それを信じたと思しき人物が自宅や勤め先まで押し掛けてくるといった被害もあったという。

ネットギークは主にネット記事を基に自らの論評を加えるという形式のニュースを配信するサイト(当時)。運営主体や執筆者の情報は一切掲載しないというスタイルをとっていた。

「提訴によって目的の大半は達成した」

判決では、会社経営者男性の嫌煙行動についての投稿に対し「奇行」「インチキコンサルタント」、大学教授のネット投稿に関して「モンスタークレーマー」などとしたものをはじめ、複数の記事について社会的評価を低下させるものと名誉毀損認定している。

一方、被告側の反訴(※)については一部認め、原告側にも計33万円の支払いを命じている。

判決後に原告4名、弁護団による会見が開かれた。

代理人の野間啓弁護士は裁判の意義について、「現在のネットギークは、以前のような個人のプライバシーを暴くようなものはなくなり、もっぱら動物に関する可愛らしい投稿サイトに変貌した。逆に言うと名を明らかにすればやれないような言動だと認めてるに等しい。したがって提訴によって目的の大半は達成したと思う」とした一方、判決については、

「(賠償の)金額が安すぎる。表現の自由は責任が伴うからこそ保護される意味、価値がある。そこを逸脱して匿名でPVを稼ぐこと主として、原告の生活に支障があるようなことまでされた。今後の抑止を考えてもこの金額の感覚は到底理解できない」と控訴の可能性も併せて評価した。

実際に被告と裁判所で会った際、「本当に気の弱そうな銀行員というような印象で皆でびっくりした」という原告のひとり会社経営者の永江一石さん。

今回の裁判については「書いた原稿も外部のライターが悪いんだと発行責任を全然認めない。それだったら何でもできてしまう。ただ、今は(ネットギークが)可愛い猫サイトになっているので、今後同じような被害者が出ないだけでも、(裁判を)やった甲斐はあると思う」(永江さん)と話した。

「提訴によって目的の大半は達成した」と語る野間啓弁護士(2月15日東京・霞が関/弁護士JP)

見知らぬ男女に罵詈雑言を浴びせられた

原告の男性のひとりは、非正規社員としてテレビ番組に出演し、自らの困窮の状況を紹介。その後顔写真、実名とともに『結婚できないのも正社員になれないのも、こうした偏屈な人格と社会活動に原因があるからと言えないだろうか』などとする記事がネットギークに掲載された。

記事の公開後、職場だったスーパーのレジに面識のない男女2人組が訪れ、接客中に罵詈雑言を言われる。会社のクレーム用ポストに見覚えのない自らに対する内容のものが投函され、会社側から注意を受けるなどの実害が発生。訴える先も分からず「何もなすすべもない状況だった」(男性)という。

同じく原告の千田有紀教授は、「反論を行使できないような一般の人を狙い撃ちにしたところが、個人的に1番許せないところ」と指摘。ネットの炎上がある種のショーとなり、ビュー数を稼ぎ、ビジネスとなっていた状況。それらが提訴によってある程度解消されたのが成果のひとつであるとも話した。

※被告が原告を相手に提起する新たな訴え

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア