「こんなの茶番だ!」ジャニーズ会見で飛んだ怒号… 記者席のイラ立ちと“混沌”のワケとは?

渋井 哲也

渋井 哲也

「こんなの茶番だ!」ジャニーズ会見で飛んだ怒号… 記者席のイラ立ちと“混沌”のワケとは?
記者の質問に応える東山紀之・新会社社長(右)井ノ原快彦・同副社長(左)(10月2日都内 / 渋井哲也)

故・ジャニー喜多川氏の性加害問題についてジャニーズ事務所は2日、都内で記者会見を開いた。

会見に出席したのは東山紀之・新会社社長。井ノ原快彦・同副社長。チーフコンプラアイアンスオフィサー(以下CCO)の山田将之弁護士、そして木目田裕弁護士だ。

発表によると、ジャニーズ事務所は「スマイル・アップ」と社名を変更した上で、被害者救済に特化する方針を明らかにした。タレントのマネージメントと育成からは完全に撤退し、補償救済を終えたら廃業するという。補償業務のみを行うために、被害相談の受付窓口を設け、3人の裁判官経験のある弁護士からなる「被害者救済委員会」も設置した。

一方で、タレントのマネージメントに関しては新会社を設立、会社名はファンクラブを通じて公募することも明らかにした。また、現段階で被害者として申請をしてきた人数も公表された。

被害者「少なく見積もって数百人」

「外部専門家による再発防止特別チーム」の調査結果によると、ジャニー氏の性加害のうち、古いものでは1950年代に当時20歳前後の男性が被害を受けていたという訴えもあったという。1970年代から2010年代半ばまで、多数のジャニーズJr.に対して性加害が行われていたとし、その数は「少なく見積もっても数百人以上」との証言が得られたとしている。

前回(9月7日)の会見後、被害の申請をしてきた当事者は現段階で478人。補償を求めているのは325人で、このうち過去にジャニーズ事務所に所属していたことがが確認されたのは150人程度と公表された。

この点に関連し、筆者は補償の範囲について以下のように質問した。

「被害を申請している478人のうち、150人程度は所属タレントと確認ができているというが、所属していないタレントやタレントではない人が性被害に遭ったと考えることもできる。所属しているかどうか、タレントかどうかで補償・救済の内容は変わるのか」

これに対し木目田弁護士は「(所属については)確認中」としたが、井ノ原副社長はジャニーズ事務所がタレントをきちんと管理・把握できていない時期があったと説明。

「『所属』(の範囲)が難しいんですが、やっぱりそれはしっかりと対話して、僕らじゃなくて、専門の方ときっちり判断していく、対応していくということになると思います」と曖昧な回答にとどまった。

東山社長も「もし本当に被害に遭われていたとしたら、やはりそれは補償しなければいけないなと思います。 そこらへんを皆さんのご協力のもと、しっかりと考えていきたいなと思っています」と、井ノ原副社長と同様の範囲で答えた。

指名されない一部の記者がイラ立ち…

記者からの質問は前回通り、挙手をした記者を司会者が指名。マイクを通じて質問をする形がとられた。しかし、指名されない一部の記者がイラ立ち、マイクを持たずに大声で質問をするという前回と同様の光景も見られ、司会者が何度も挙手をして質問するようにお願いしていた。

会見の途中には、他の記者の質問への回答にかぶせるように、指名されていない記者が質問を重ねる場面もあった。

例えば、新会社「スマイル・アップ」が早期の補償を考え、11月から被害者に補償金を支払うとの発表について、ある記者が “算定基準”の質問をした。山田CCOが「被害者救済委員会が被害内容を考慮し、委員会で補償額を提示する」と回答した後、すかさず、指名されていない記者が「民事訴訟の賠償額を超えるものになるのか?」「救済委員会に元裁判官の弁護士しか入っていないのは問題ではないか?」との質問をかぶせた場面などだ。

この頃は、まだ質問時間に余裕があったためか、会場は騒然としていなかった。しかし、会見の後半、指名されない記者がイラ立ち、指名されていないにもかかわらずマイクなしで質問をするようになった。

「どうか落ち着いてお願いします」(井ノ原副社長)

「東山さんも性加害者だという話が出てきています」

「こんなの(手を挙げているのに指名されないのは)茶番だ!」

司会者が「これは司会者として言わせてください。最初に皆さんにお願いしたのは1社1問でございます。みんなそれで、ちゃんとルール守って聞いていただいています」と、再び会場の記者たちにお願いをした。

そんな後に指名され「よろしいでしょうか…」と質問し始めたのが、実話誌『実話ナックルズ』だったため一部に笑いが起こり、一瞬会場の空気が和んだ。しかし、司会者に指名されない記者らの不満は止まず、騒然としていた会場で井ノ原副社長が記者たちを諭すように話しはじめる。

「こういう会見の場は、全国に生放送で伝わっています。小さな子どもたち、自分にも子どもがいますが、ジャニーズJr.の子たちもいます。それこそ、被害者のみなさんが、自分たちのことでこんなに揉めているのかっていうのを僕は見せたくないので、できる限りルールを守りながら、ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたい。どうか落ち着いてお願いします」

一部の記者たちからは拍手が起こったが、その後会見が終わると再び、指名されなかった一部の記者が、大声で「東山さんは性加害をしている告発もある」などと問い詰め、東山社長が「していません」と、従来の回答を繰り返す一幕があった。

記者の中には「こんなこと(会見が終わっている中での質問)を許していいのか」「他の記者だって、質問したいことがあるのに、なぜあの記者だけ…」などの声もあがっていた。

今回の会見ではムービーカメラマンが最後列だった(10月2日都内 / 渋井哲也)

ちなみに前回の会見ではペン記者が最前列だったが、今回はスチールカメラマンが最前列。その後ろにペン記者となった。

政治家の謝罪会見では最前列がスチールカメラマンということが多い。会見者の細かい表情をカメラで狙えるからだ。筆者は前回の会見で、スチールカメラマンが、ムービー同様に後ろだったことに違和感があった。今回の会見スタイルも当初は同じ配置だったが、直前に参加する記者向けの案内で、スチールカメラマンが最前列になったことが示されていた。

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