江頭2:50過激すぎるYouTube「忖度なし」の商品レビューは法的に問題なし!?

中原 慶一

中原 慶一

江頭2:50過激すぎるYouTube「忖度なし」の商品レビューは法的に問題なし!?
2022年1月31日公開の動画「江頭56歳、初めてのコンビニレジ横ホットスナック」より(https://www.youtube.com/watch?v=uU1s6PHFdYQ)

「刑事上の犯罪にはならないです。民事で訴えられる可能性も高くはないです」

犯罪や刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士がこう話すのは、お笑い芸人の江頭2:50(56)のYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」の企画について。

江頭さんは、1月31日に同チャンネルで、「江頭56歳、初めてのコンビニレジ横ホットスナック」という動画を公開。要は食べ比べ企画なのだが、これが〝ここまで言っちゃっていいの?〟と視聴者をザワつかせる過激な内容なのだ。

「無人島に1か月放置されても買わない」

動画は「今日も一切忖度なし。正直な感想しか言わないから!」の宣言でスタート。江頭さん自身が順に各コンビニのホットスナックを食べていき、感想を言うという構成だ。

江頭さんはファミリーマートの「ファミチキ」は「普通」、ローソンの「からあげクン」は「凄えマズいよ」、セブンイレブンの「からあげ棒」は「無人島に1か月放置されても買わない」などと言いたい放題。「からあげクン」に至っては、「名前で釣って、実際食わせたら、犬の××みたいな感じ(××部分は伏せ字と効果音で伏せられている)」とバッサリだ。

途中、「※個人の感想です」、「ローソン様 この男はただただ頭がおかしいのです。誠に申し訳ございません」などとエクスキューズ的にテロップが入るのだが、ここまで過激で大丈夫なのか。夕刊紙芸能記者はこう話す。

「コロナの影響でYouTubeを始める芸能人は多いのですが、江頭は、コロナ禍以前の20年2月にいち早くYouTubeチャンネルを開設。もともと地上波に収まらない芸風だったこともあり、今ではチャンネル登録者数280万人と芸能人でもトップクラスです。中でも、江頭が〝忖度なし〟で食べ比べするシリーズは大人気で、500万回近い再生数を叩き出したものもあります」

確かに昨年9月に公開した動画では、マクドナルドやモスバーガーの食べ比べをしており、そこでモスバーガーの商品を絶賛する一方、マクドナルドの商品を「マックの肉はぺちゃーっとしてたじゃない。犬の餌みたいだった」「マックのダブチは最悪」「マックの開発部は能なし!」とディスりまくり、物議を醸した。

忖度なしの食べ比べが大好評(「江頭56歳、初めてのコンビニレジ横ホットスナック」(https://www.youtube.com/watch?v=uU1s6PHFdYQ)より)

「名誉毀損」と単なる「批評」の違いはどこに?

テレビ局の大スポンサーであるマクドナルドや大手コンビニチェーンの商品をここまで悪様に罵ることは、地上波では絶対にできない内容だ。前出の杉山弁護士はこう続ける。

「しかし、単に商品を悪く言ってるだけの内容は、名誉毀損で捕捉しやすいものではなく、刑事事件として取り上げられる可能性は少ないです」

一方、今年1月に放送された「ジョブチューン」(TBS系)の「セブン・ファミマ・ローソンの人気商品を一流料理人がジャッジ!」という企画では、あるシェフが、ローソンの和風ツナマヨおにぎりを「このおにぎりは僕に食べてみたいって気にさせない」として一口も食べずにジャッジしようとしたことが大炎上となった。

結局、このシェフは、批判が殺到し、SNSを閉鎖する騒動にまで発展。また同性の別人シェフの元にも間違えた視聴者からの嫌がらせの電話が殺到するなど騒動は拡大した。

「ジョブチェーン」に関しては、番組の「演出」だった可能性もあるものの、こうした過激な批評はどこまで許されるのか。我々一般人でも、グルメサイトなどに「レビュー」や「口コミ」を書き込むこともある昨今、「名誉毀損」と単なる「批評」の違いはどこにあるのか。

「判例の基準など、法律的な言い方はいろいろあるのですが、感想は原則自由なわけで、『嘘を前提としていない』ことが最も重要です。本当のことを前提に行われた評価であれば、よい評価も悪い評価も相互に提示され、人々が目にすべきものとなりますが、嘘に基づいた意見や評価に、法律が保護する価値はありません。

本当だったら何でもセーフというわけではないのですが、はっきりとダメ、名誉毀損と言えるのは、嘘、虚偽の事実に基づいている場合です」(杉山弁護士)

個人の「悪評価」が違法性を帯びにくいワケ

つまり、相手を貶めるために、故意に嘘を付いて書くことなどは最低限避けておくべきと考えておいたほうがいい。江頭さんやシェフも実際に商品を目の前にして感想を言っているので、嘘を付いている訳ではなく、「名誉毀損」にはあたらないという訳だ。

杉山弁護士はこう付け加える。

「商品を評価するときは、『その商品がコンセプトや目的を達成できているか』という基準で評価すると、意味のあるコメントになると思いますね。個人の口汚い悪評価がなぜ違法性を帯びにくいかというと、法律側の発想としては、根拠事実などがともなっていない言説が周囲に与える影響はたかが知れていると考えているところもあると思います。

しかしながら実際は、著名人にならって、みんなが同じ言葉を繰り返していると、だんだんそのように感じられてくるのが怖いところなわけですが…」

江頭さんの食べ比べ企画に対しては、現在のところメーカー側からクレームが入った様子はない。過激な発言は〝芸風〟として、見逃されている側面もあるようだが……。

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