弁護士のパワハラ元職員が提訴「俺が病気にしたっていうのか」罵倒にPTSD発症も

弁護士JP編集部

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弁護士のパワハラ元職員が提訴「俺が病気にしたっていうのか」罵倒にPTSD発症も
会見を行った元事務職員の女性(2月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

神奈川県横浜市内の法律事務所に勤めていた元事務職員の女性(40代)が、パワハラを受けて退職を余儀なくされたなどして、2月7日に法律事務所を共同経営する弁護士の男性2人に解雇無効や損害賠償(計約891万円)を求める訴えを横浜地方裁判所に起こした。

訴状などによれば、女性は2010年から2020年7月までこの事務所に所属。入所の翌年頃から弁護士B(80代)から継続的に、機嫌が良いときにはセクハラ、機嫌が悪い時にはパワハラが行われるようになった。さらには「頭を出せ」とゲンコツで叩かれる暴力なども伴い、次第にエスカレート。

セクハラ、パワハラが続いたことで体調を崩した女性は、B氏の息子である弁護士A(50代)へ相談。「なんとかするからこの話は私に預けてほしい」(弁護士A)と言われ期待したが、状況は何ら改善されることはなかったと主張する。

パニック状態で事務所内に倒れた

その後、女性の体調はさらに悪化。2019年3月にはうつ病と診断され、同年10月から休職を余儀なくされた。

この際(休職前の9月)、休職について弁護士Aから弁護士Bから話されると聞いていたがなされておらず、弁護士Bは「そんな話は聞いていない。みんな俺のことを何だと思っているんだ。俺が病気にしたっていうのか」と大声で怒鳴り、女性はパニック状態で事務所内で倒れ、以降PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症。

女性は休職中の2020年5月に労災申請をしたが、同年7月には解雇。2021年3月2日にはパワハラが原因の精神疾患が、横浜南労働基準監督署において労災認定。

労災認定後、業務上疾病について療養のため休業期間中の解雇は無効である(労働基準法第19条)旨を主張する書面を代理人弁護士を通じて送り解決を試みたが、弁護士Bからのみ書面で「継続的なハラスメントはまったくしていない」旨の回答などからいたらず、今回の提訴となった。

「弁護士のパワハラ・セクハラは少なくない」

弁護士によるパワハラをめぐっては、昨年4月、川崎市内の法律事務所に所属していた男性弁護士が、経営者の男性弁護士によって長期間のパワハラを受けたとして慰謝料を求めた裁判で、パワハラが認定され慰謝料など計520万円の支払いを命じた(横浜地方裁判所川崎支部)例などがある。

法律家によるパワハラ・セクハラの存在は信じがたくもあるが、女性の代理人として会見に同席した佐々木亮弁護士は、「噂話でも、弁護士のパワハラ・セクハラがあると耳にすることは残念ながら少なくない。しかし表に現れるのは稀で、本件もその中のひとつ」と話す。

同じく代理人で”ブラック企業”問題に関する著作もあり、労働問題も多く対応している嶋﨑量弁護士は「同業者が加害者ということで他人事ではなく、責任のいったんのようなものも感じる。法律事務所、会計事務所、個人病院といった小さな職場で、とりわけ社会的な影響力・地位があると思われている使用者の元で働く労働者は、言いたいことが言えない環境になりやすい」とコメントした。

同業者として責任のいったんも感じると語る嶋﨑量弁護士(2月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

「白髪で背の高い男性を見ると…」

会見を行った元事務職員の女性は、「以前より収まってきたものの、当時(2019年9月)のことがPTSDとなり、今でも白髪で背の高い男性を見ると発作が起きる。

やりがいを持って、一生懸命に仕事に向き合ってきた。天職だと思っていた位辞めたくなかったので、解雇されたのはとても悔しい」と時折感情の高ぶりを抑えるように話した。

さらに、「本来、法を順守すべき法律事務所に、重いうつ病、PTSDへ追い込まれた。狭い職場環境で同じような思いをされている方がいたら、『自分が悪い』のではなく、『自分の立場が異常』だと気がついて、病院などの専門家に相談してほしい」と訴えた。

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