「小学校休業等対応助成金」個人申請“使いづらさ”のなぜ

弁護士JP編集部

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(更新:2022年02月09日 11:38)

「小学校休業等対応助成金」個人申請“使いづらさ”のなぜ
小学校休業等対応助成金を巡る現状を記者らにリモートで訴えるTさん。右は首都圏青年ユニオン・栗原耕平さん(2月2日 霞が関/弁護士JP編集部)

新型コロナウイルスの子どもへの感染が止まらない。1月、都内では新規感染者のうち10代以下の子どもの割合が20%を超えた。今月に入っても、連日多くの小学校や保育園で臨時休校・休園が発生している。

そんな中、働く親たちが救いを求めているのが、昨年8月に国が打ち出した制度「小学校休業等対応助成金」。子どもを預けられなくなった従業員に、年次有給休暇とは別に有給休暇を取得させれば、事業主が助成金を受け取れるという制度だ。当初の予定では休暇取得の期間が昨年12月31日までとされていたが、オミクロン株による感染拡大を受け、今年3月31日まで延長された。

ところが今、この助成金の申請を拒む企業が相次いでいるという。従業員3400名ほどのアパレル企業で販売員(正社員)として働く40代の女性Tさんも、その一人だ。

助成金申請求めるも「他の従業員に不公平」

3人の子どもを育てるTさんの家庭では、昨年9月、自身を含む家族4人が新型コロナに感染(子どもは当時小2、5歳、2歳)。会社に対し小学校休業等対応助成金の活用による給与補償を求めたものの「(シフトの穴埋めをした)他の従業員に対し不公平感がある」と拒否された。

小学校休業等対応助成金には2通りの申請方法があり、Tさんのように企業側から助成金の申請を断られた場合には、従業員による個人申請も可能だ。ところがその場合も、自身が勤める企業の協力がなければ申請ができない仕組みになっている。

「小学校休業等対応助成金」個人申請の方法は?

いざ個人申請しようと、インターネットで厚生労働省の「小学校休業等対応助成金」のページを見てみても、申請フォームや、個人申請に必要な書類一式をダウンロードできるリンクが見当たらない。不正受給や二重取りを防ぐため、労働局から勤め先の企業に対し、タイムカードや給与明細など、休暇取得の裏付けとなる資料の提出を求める仕組みになっているからだ。

東京労働局の例では、個人申請から助成金が支給されるまでの流れは以下の通り。

  • ①勤務先の事業所がある都道府県の労働局「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」に電話(平日8時30分~17時15分)
  • ②労働局から事業主に、小学校休業等対応助成金を活用するよう働きかけを行う
  • ③②で事業主が助成金の活用に応じない場合、労働者が個人申請できるよう、労働局から事業主に「個人申請」へ協力するよう同意を求める
    ※ここで同意が得られなければ個人申請はできない
  • ④個人申請の必要書類一式が申請者の自宅に郵送される
  • ⑤必要書類を提出し、早ければ1カ月半ほどで助成金が振り込まれる

ただし、オミクロン株の拡大により子どもへの感染が広がる今、小学校休業等対応助成金の申請は殺到しており、振り込みまでに1カ月半以上かかるケースも珍しくないという。

小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口(厚生労働省ホームページより)

勤め先からの報復を恐れて労働局に相談できないケースも

冒頭のアパレル企業で働くTさんのケースでは、勤務先が個人申請に協力してくれることになったものの、中には労働局に連絡したことに対する事業主からの報復を恐れて、申請をためらう人もいるという。

2月1日の衆議院予算委員会でも、日本共産党の宮本徹衆議院議員が「労働局に相談したらクビにすると言われた」といったTwitterの声を引き合いに、利用しやすい制度への改善を後藤茂之厚生労働大臣に求めた。

これに対し、後藤厚生労働大臣は「引き続き労働局から事業主に丁寧に働きかけを行っていきたい」と発言をとどめたが、8日の閣議後記者会見で「感染状況や科学的知見の蓄積を踏まえつつ、時宜にあった対策を引き続き強力に行っていく」と発言。個人申請の際、勤務先の確認を事前にとらなくても申請できるよう、手続きを簡略化する方針を示した。

申請対応窓口の一つである東京労働局に問い合わせると、9日時点で、実際に簡略化された手続きでの運用が始まる時期は未定とのこと。最前線に立つ担当者の心苦しそうな口調からは、多くの人が一刻も早い手続き簡略化を望む様子が伺われた。

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