時速500kmでも「まっすぐ」走れていれば“危険”じゃない? 死亡事故遺族が「理不尽な法運用」見直し訴える

弁護士JP編集部

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時速500kmでも「まっすぐ」走れていれば“危険”じゃない? 死亡事故遺族が「理不尽な法運用」見直し訴える
「高速暴走・危険運転被害者の会」の井上保孝さん(左)波多野暁生さん(右)(8月30日 霞が関/弁護士JP編集部)

時速160㎞以上で車を走らせ死亡事故を起こしても「危険運転」ではないのか――。

今年2月に宇都宮市の国道で発生した死亡事故をめぐり、「高速暴走・危険運転被害者の会」が30日に宇都宮地検を訪れ、宇都宮地裁で係属中の事故加害者の訴因を「過失運転致死罪」から、より量刑が重い「危険運転致死罪」(※)に変更するよう求める要望書と署名を再提出した。

※ 危険運転致死罪の罰則は「人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役(最長20年)」。一方、過失運転致死罪の罰則は「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」と大幅に軽い

法律が縮小解釈されている

同会の共同代表を務める佐々木多恵子さんの夫・一匡さん(当時63歳)は今年2月、宇都宮市の国道をオートバイで帰宅中に、時速160kmを超えるスピードで走行してきた乗用車に追突され死亡した。

乗用車を運転していた石田颯汰被告(当時20歳)の起訴に際し、宇都宮地検が訴因としたのは「過失運転致死罪」。より量刑の重い「危険運転致死罪」の成立要件には、

その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為(自動車運転処罰法第2条2号)

が規定されているものの、実際の運用上は、まっすぐ走れていれば「制御できていた」と判断され、「危険運転」ではなく「過失運転」となるケースが後を絶たず、涙をのむ被害者遺族が後を絶たない状況だ。

同会の代理人弁護士である髙橋正人弁護士は「既存の裁判例に従うと、制御困難であるかは『進路を逸脱して衝突した場合に限る』、しかもその際に『他の走行車両や通行人の存在を考慮に入れてはいけない』ということになっている。これは『直線道路であれば時速500kmで走っても制御可能』という意味であり、法律が縮小解釈されている状況です」と憤る。

署名7万筆…司法解釈と“実態”の溝深く

30日の記者会見には、1999年に東名高速飲酒運転事故で幼い娘2人を失った井上保孝さん(同会会員)、2020年に東京・葛飾区で赤信号無視の乗用車にはねられた当時11歳の一人娘を失った波多野暁生さん(同会事務局長)も出席し、現状の法運用に対する胸の内を語った。

「(東名高速飲酒運転事故をきっかけに成立した)今の法律で十分対応できると思っているにもかかわらず、法解釈・運用がおかしくて非常にショック。何とかしなければ」(井上さん)

「司法が条文を狭く解釈している。今の司法では事故を起こした場所が直線道路である限り、どんなに悪質でも危険運転が適用されづらい。あまりにも一般常識とかけ離れている」(波多野さん)

同会がこれまでに集めた署名は7万筆近くに上る。社会的関心が高まる中、司法の解釈と“実態”の溝が1日でも早く埋まることが期待される。

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