「人生台無しになるよ…」 “盗撮ハンター”犯罪者の弱みにつけ込む極悪手口

中原 慶一

中原 慶一

「人生台無しになるよ…」 “盗撮ハンター”犯罪者の弱みにつけ込む極悪手口
犯行グループは「役割分担」をしてターゲットを追い込むという(sasaki106 / PIXTA)

「盗撮犯」の弱みにつけ込む男たちが御用だ。

先月26日、女性を盗撮した男性に路上で声をかけ、現金100万円を脅し取ったとして、A(33)、B(34)、C(26)の容疑者の3人が恐喝などの疑いで警視庁池袋署に逮捕された。

3人は昨年8月18日、午後5時半過ぎ、JR池袋駅近くの路上で、女性の下半身をスマートフォンで盗撮していた30代の男性に対して示談金を要求し、現金100万円を脅し取った疑い。池袋駅周辺では、同様の被害が確認されており、警視庁は余罪があるとして調べを進めている。

「認めなかったら警察に連れて行くぞ」

「3人は巧みに『ターゲットを見つける役』『声かけ役』『代理人役』の役割分担をして、チームで動いていました」(夕刊紙記者)

“ターゲットを見つける役”が盗撮の現場を確認すると”声かけ役”に連絡。”声かけ役”は、ターゲットが現場から離れたところで、「さっき盗撮しただろ。携帯出せよ。認めなかったら警察に連れて行くぞ」などと脅し、商業施設などの人気のないところに連れていく。

そこに女性の代理人を装った”代理人役”が現れ、「最低100万円は払え、会社や家庭にバレたら人生台無しになるよ」などと脅し、現金がない場合は、消費者金融に連れていかれ、申し込みさせられた上、金をむしり取られることになるという手口だ。

「やり口は非常に手慣れていて、新宿や渋谷など、別の繁華街でも同様の手口で悪事を働いていた可能性があります」(同前)

「盗撮」行為自体は違法だが…

この”盗撮ハンター”、スマホでの撮影が一般的になり、盗撮が容易になったここ数年で増えていたという。

報道などによれば、その特徴は「実際に被害者との接点はない」、「実際に警察には連れていかない」、「その場で示談金を支払わせようとするが、金額を自分で決めさせられることもある」、「消費者金融の手続きに詳しい」、「免許証の写真や謝罪動画を撮影されたり、携帯番号を聞き出されたりする」などがあるという。

犯罪や刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士はこう話す。

「当たり前ですが、彼らのやっていることは立派な犯罪です。基本的には、『脅迫』。金品を要求していたら『恐喝』、何かを命令したら『強要』にあたります」

そもそも「盗撮」行為自体が違法なのだが、盗撮をやったという弱みから、こんなヤカラの餌食になったら事はさらに厄介なことになる。彼らに金品を払ったところで、示談など成立していないし、携帯番号などの個人情報が彼らの手にわたってしまえば、盗撮の事実を盾に、後々までゆすられるリスクもあると言う。

”ニセ万引Gメン”に”未成年買春恐喝”パターンも

“盗撮ハンター”と同じようなパターンで犯罪行為につけこむ犯罪はまだある。”ニセ万引Gメン”だ。

2015年には、「万引Gメン」を装って現金をだまし取ったとして、D容疑者(当時35)が和歌山県警に詐欺容疑で逮捕されている。

Dは、和歌山市内のコンビニエンスストアで、少年が飲料水を万引したとして、一緒にいた友人の母親に、万引Gメンを装って、「損害賠償金を支払えるのか」「警察に届けるか、それとも店に賠償金を支払うか」などと言い、母親から現金約7000円をだまし取ったという。金を渡した後に不審に思った母親がコンビニに確認したところ事件が発覚した。

さらに現在、社会問題化している新宿・歌舞伎町の素人女性による「立ちんぼ」(売春行為)に関しては、こんな話もある。

「女性と交渉が成立し、いざホテルに入ろうとした瞬間、または一戦交えてホテルから出てきた瞬間に、スマホで顔写真をパシャリと撮られ、『お前、未成年と何やってんだ。警察に突き出されたくなかったら示談金を払え』などと恐喝され、10万円ほど、支払わされたという話があります。女性とグルになっていたようです」(歌舞伎町に詳しいライター)

大久保公園前で交渉した女性が“未成年”だと因縁をつけられたという話も(弁護士JP)

「自身のリスクの度合いをよく把握すること」

この手の”盗撮ハンター””ニセ万引Gメン””未成年買春恐喝”などは、いずれも、本人の違法行為が出発点ではあるが、遭遇した場合にはどう対処すべきなのか。「もちろん、そもそもの違法行為を犯さないことが基本ですが」としたうえで、前出の杉山大介弁護士はこう話す

「犯罪に問われるのではないかと焦らず、自身のリスクの度合いをよく把握することです。犯罪と言っても、逮捕されない・報道されない・刑務所には行かないといったものもありますから、おびえすぎる必要はないケースもあります。犯罪を助長する行為はしませんが、弁護士として依頼を受ければ、想定されるリスクは正確にお伝えします。理想としては、”盗撮ハンター”などに捕まったら、その場で即座に「示談」をしようとせず、まずは弁護士に相談しますと帰ることですね」

「警察に話せばわかってもらえる」がNGなケースも少なくない

一方、盗撮などをした覚えはまったくないのに、こうした手合いに絡まれて、この手の犯罪に巻き込まれた場合にはどうすべきか。

「これは痴漢冤罪(えんざい)などに近いケースかも知れません。しかし相手も百戦錬磨ですから、スマホに証拠が残っていないとしても、勝手に写真を撮られて『盗撮犯としてバラまくぞ』と恐喝されるリスクまで考えておくべきです」(前出の夕刊紙記者)

杉山弁護士はこう話す。

「自力で解決しようと思わないことですね。穏便に済ませようとその場しのぎの行動をした場合、犯罪の証拠かのように使われてしまうこともあり得ます。一方で、『やってないんだからちゃんと警察に話せばわかってもらえる』という考え方もNG。証言者がそろうと、被疑者の話など聞いてくれなくなるのが常です。つまり、この場合の対処法も、”すぐに弁護士に相談すべき”です」

確かに、痴漢冤罪のケースなどと同じように、常日頃からすぐに相談できる弁護士事務所の保険に入っておいたり、相談先を決めておくことも一考だろう。

ただし、繰り返しになるが、そもそも、犯罪を行うべきではないのだが。

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