特殊詐欺の指定暴力団組長らを提訴「被害者の方は安心して相談を」弁護団呼びかけ

弁護士JP編集部

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特殊詐欺の指定暴力団組長らを提訴「被害者の方は安心して相談を」弁護団呼びかけ
大都市圏の高齢者を中心に被害が高い水準で発生している(写真:Ystudio/PIXTA)

暴力団の組員が関与する詐欺組織によって行われた「特殊詐欺事件」の被害者2人が、指定暴力団住吉会組長らを相手どり1月20日、損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。

訴状などによれば、この事件は詐欺グループの「架け子」が金融機関の行員を装い被害者に電話を架け、電話の相手がそれぞれ当該人物とまちがって信じさせた上で、キャッシュカードを騙し取るという特殊詐欺(預貯金詐欺)の手口によるもの。平成31年1月28日に100万円、翌29日に97万円の合計197万円の被害を受けた。

この日会見を開いた弁護団長の古田雄久弁護士は「暴力団に対してダメージを与えるため公益活動として(訴訟を)行っている側面もある」とその意義を語った。

訴訟について「被害の実効的回復」の実現以外に、「暴力団の資金源対策(経済的な打撃)」「今後の特殊詐欺事犯に対する抑止効果」も併せて考えられているという。

会見を開いた古田雄久弁護士ら弁護団(1月20日 霞が関/弁護士JP編集部)

「自分を責める」被害者も

警察庁によれば、令和2年の特殊詐欺の認知件数は1万3550件で被害額は285.2億円といずれも前年に比べて減少、検挙率に関しても54.8%とここ数年は上昇傾向という状況だ(被害額については過去最高となった平成26年(565.5億円)から約半減)。今回の被告のような暴力団構成員等の総検挙数に占める割合は15.3%となっている。

しかし、依然として大都市圏の高齢者を中心に被害が高い水準で発生しており、深刻な情勢であることは変わりない。

さらには、「被害者の中には自分を責めたり、思い出したくないと家族にすら被害を言わない方も少なくない。ましてや今回のような暴力団が相手となるとなおさら提訴をためらってしまうケースもある」(弁護団・髙木薫弁護士)という。

反社会勢力に対する特殊詐欺の民事訴訟は、解決も含めて今回で13件目。申し立てるまで徹底的に調査をした上での提訴となるので「被害に遭われた方はぜひ安心して警察関係者や弁護士会へ相談してほしい」(髙木薫弁護士)と呼びかけた。

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