離婚家庭へ子ども給付金10万円届かず。DV被害の妻へ役所は「当人同士で解決を」

弁護士JP編集部

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2022年01月19日 12:45 (更新:2022年02月03日 15:55)

離婚家庭へ子ども給付金10万円届かず。DV被害の妻へ役所は「当人同士で解決を」 元夫の口座に給付金が振り込まれたという女性。DV被害を受けており直接連絡を取ることは難しい(1月18日 霞が関/弁護士JP編集部)

「相手(元配偶者)の口座に入り、受け取れない」
「(給付金が)入っていないと嘘をつかれ、ブロックされ連絡取れない状態」
「当人同士で解決してくれとそれしか言われなかった。出来てたら相談しない」

昨年11月に決定した「18歳以下への10万円給付」は、スピード感を重視して進められていたはずだ。ところが今、届くべきはずの10万円を受け取れないひとり親世帯が相次ぎ、問題となっている。立憲民主党の試算によると、その数は約2万7000世帯。子どもの数にして約4万1000人にものぼるという。

「届くべき人」へ届けられず。仇となったスピード感

冒頭の声は、離婚や別居により子どもをひとりで養育しているものの、給付金10万円が、子どもを養育していない元配偶者の口座に振り込まれてしまった親たちの悲痛な叫びである。

なぜこんなことが起きているのだろうか。その背景として指摘されるのは、政府が採用した「プッシュ型」の給付方法だ。

10万円給付といえば、2020年の特別定額給付金「1人一律10万円」が記憶に新しい。この時は、国民1人1人が振込先を郵送やインターネットで申請する必要があったため、給付の遅延を招き、政府は大きな批判を受けた。

そんな苦い経験を踏まえ、今回の給付では中学生以下の子どもに対し、すでに口座情報が紐づけられている「児童手当」のリストが活用されることとなった。しかし離婚や別居により、昨年9月以降に児童手当の振込先を「養育する側の親」へ変更した場合、口座情報の更新が間に合わず、もともと児童手当が振り込まれていた「養育していない側の親」の口座へ給付金が渡ってしまうケースが多発しているのだ。

役所に助けを求めるも「当人同士で解決を」と突き放され…

一般社団法人 ひとり親支援協会の調査によると、自治体の窓口に問い合わせたとしても「当人同士で解決を」と言われるケースがほとんどだという。

同協会代表・今井智洋さんは18日に開いた記者会見で「DVやモラハラがある場合は、当人同士が連絡を取ること自体が危険」と指摘。また「元配偶者から逃れるため遠方に転居した場合や、婚姻中に専業主婦だった場合など、離婚直後は経済的基盤が弱いケースも珍しくない。現行の制度では本当に必要な人に給付金が届かない」と現状を語った。

記者会見には、元夫の口座に給付金が振り込まれてしまったという30代のシングルマザーも出席。DV加害者である元夫からは養育費の支払いがなく「もし給付金が入れば、食費や子どもの洋服代に使いたかった。自分のような状況の人は他にもたくさんいる。きちんと給付金が届くよう制度を改善してほしい」と訴えた。

一般社団法人 ひとり親支援協会の調査には親たちの悲痛な声が多く寄せられた(撮影:弁護士JP編集部)

給付金を渡さない元配偶者に法的罰則は? 弁護士に聞いた

子どもに渡すべき給付金を自分の懐に入れるとは、あるまじき行為だろう。法律的には罪に問われないのか、桐ヶ谷彩子弁護士に聞いた。

桐ヶ谷弁護士「今回の子育て世帯等臨時特別給付金は【子どもたちを力強く支援し、その未来を拓く】という観点から支給されるものです。その趣旨に沿う受取人は子の監護者ですから、支給を受けた非監護者から監護者へ渡すことが原則と考えるべきだと思います。

とはいえ、残念ながら、今回の給付金の制度そのものに、給付金の趣旨に反した場合の罰則がありません。そして『児童手当の振込先を利用する』という制度設計である以上、振込み先として登録されている非養育者が給付金を受け取ったこと自体を罰することも、難しいと思われます。

なお現在は、このようなケースの救済のため、すでに相談窓口を設置している自治体もあるようです」

国会では非養育者へ給付金の返還を求める法案も

現在会期中の国会では、この問題を解決しようという動きも出てきている。立憲民主党は18日、受給できていない養育者の支援を目的とした「離婚世帯子ども給付金支給法案」を提出。制度の網目から漏れてしまった世帯を対象に特例給付金を支給できるようにするとともに、非養育者であるにもかかわらず給付金を受け取った親への返還請求を可能にする内容も盛り込まれているという。

20日の参議院本会議では、岸田文雄内閣総理大臣が、基準日以降に離婚し受け取れなかった養育者への給付を自治体に要請することを表明した。

国民の数だけ、それぞれの事情がある。広い視野をもって有意義な改善策が議論されることを願うばかりだ。

国会議事堂では1月17日から第208回通常国会が開催されている(撮影:弁護士JP編集部)
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