夫がスナックの女性と不倫、子ども生まれ認知も…「慰謝料請求」が認められなかった“妻の誤算”
今回お届けする事件は・・・
妻
「夫がスナックの女性と不倫しました!」
「その女性に慰謝料請求します!」
裁判所
「ふむふむ...」
「たしかに肉体関係アリですね」
「でも慰謝料請求はムリです!」
なんで!?
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▼ 本日のポイント
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夫婦関係がオワっていれば浮気相手に慰謝料請求できない。
以下、包丁チラつかせ事件とともにお届けします。(最高裁 H8.3.26)(弁護士・林 孝匡)
※ 裁判を一部抜粋し簡略化、判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換しています
登場人物
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▼ 妻
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・41歳
・子ども2人(12歳、9歳)
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▼ 夫
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・40歳
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▼ Y子
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・夫の不倫相手
・スナック勤務
どんな事件か
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▼ 夫婦関係が悪化
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結婚して13年くらいたったころ。夫婦関係が悪化し始めます。原因は、2人の性格の違いやオカネに対する考えの違いです。離婚原因のトップシェアを占めるヤツですね。
ーーー 奥さん、あと、どんなことが不満だったんですか?
妻
「転職してから残業が多く、深夜に帰ってくることが多くなったからです」
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▼ 包丁チラつかせ事件!
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その3年後くらいのこと。夫は、勤めている会社の経営を引き継ぐこととなり、代表取締役に就任しました。
また、会社の資金繰りのために自宅の土地建物に抵当権を設定したりしました(ザックリいえば借金のカタにとるってやつです)。
これに妻がブチギレ。夫が借金を負うかも...とブチギレたんです。そして、先に財産分与するよう要求しました。
そして事件です! 夫が帰宅した際に包丁をチラつかせたんです。
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▼ もう、コイツとはやっていけん
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と、夫は考えたのでしょう。3年後には、別居を求めて裁判所に夫婦関係調整の調停の申し立てをしました。
しかし、妻は欠席。妻は夫に付き合っている女性がいると考え、離婚の意思もなかったからです。調停はムダに終わりました。
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▼ あなた、私の夫とどういう関係?
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妻が大暴れします。夫の会社の関係者(女性)にTELをして、夫との関係を問いただしました。これを聞いた夫は、ウッゼ〜、さらに妻を疎ましく感じるようになりました。
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▼ ラブストーリーは突然に
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その1年後くらい。夫とY子が知り合います。夫はスナックの常連客だったのですが、そのスナックでY子がアルバイトとして働くようになったんです。
夫はY子に「妻とは離婚することになっている。マンションを購入したが妻にはバレたくないので電話などの名義を貸してほしい」などと頼み、Y子は了承。
その翌月には、夫が自宅を出ます。別居スタート。そして夫とY子の親密度がアップし、自然と男女の関係に至ります。出会ってから1年10か月後くらいには、Y子は夫の子どもを出産。夫は認知しました。
妻が訴訟を提起
妻がY子に対して「慰謝料1000万円を払え」という訴訟を提起しました。
ジャッジ
裁判所
「妻の負けです。Y子は払わんでよろし。夫婦関係が破綻していたからです」
ーーー なんで夫婦関係が破綻してたら浮気相手は払わなくていいんですか?
裁判所
「そもそも浮気がダメなのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害するからです。そうすると、夫婦関係が破綻していたときに浮気相手がSEXしたとしても、別に婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害したとはいえないからです」
裁判所
「そして本件では、夫とY子が肉体関係を持ったときには、すでに夫婦関係は破綻していたと認定しました。よって妻の負け!」
■ どっちが先よ?
肉体関係があった時期と夫婦関係が破綻していた時期、どっちが先? はチョー重要です。その時期の先後で慰謝料数百万円が左右されます。今日もどこかの裁判所で、この点について熾烈(しれつ)な戦いが繰り広げられていることでしょう。
浮気マメ知識
「夫婦関係は破綻していた!」という主張は、超あるあるです。浮気裁判で浮気相手から99.9%出てくる主張です。
今回は、人の性格の違い・オカネに対する考えの違い・包丁チラつかせ事件・夫が調停を申し立てていたなどの事情を総合考慮して、裁判所が「夫婦関係は破綻していた」と認定しました。
しかし! 裁判所が夫婦関係が破綻していたと認定するケースは...少ないです。法律婚をなるべく尊重しようとする姿勢なのかもしれません。
Q.
夫婦関係がオワってるかどうかって、裁判官に分かるんですか? 夫婦にしか分からないのでは?
A.
それを裁判官がジャッジする。そういうルールなので仕方ないんです。というわけで、
■ 浮気している方へ
夫婦関係がオワっていたことを立証するために、さまざまな証拠を集めて整理しておきましょう。
■ 浮気相手に慰謝料請求したい方へ
夫婦関係がオワっていたと認定されたら負けです。弁当を作る、ねぎらいのLINEを送るなどしてみてください。裁判所に「こりゃ形だけだな...」と思われたら負けですが「夫婦関係は瀕死(ひんし)寸前だけど、いまだご存命!」と思ってもらえたら勝ちです。
訴訟では、絶対的な真実はありません。【裁判官の目に映る事実】が【真実】となります。
今回は以上です。普段は働く人に向けて知恵をお届けしています。またお会いしましょう!
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