国内観光地「写真撮ってあげる」費用請求でトラブルも…“サービス押し売り”に違法性はない?

弁護士JP編集部

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国内観光地「写真撮ってあげる」費用請求でトラブルも…“サービス押し売り”に違法性はない?
京都・南禅寺の境内は広大だが、どこであっても撮影“押し売り”行為は「許可しておりません」(Ken/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染症分類が引き下げられたことにより、観光地に人が戻りつつあるが、国内屈指の人気観光地・京都の寺院からある注意喚起がなされ話題となっている。

京都「南禅寺」の公式サイト・SNSによれば、寺の境内で「写真を撮ってあげる」などと観光客に声をかけ、預かったスマートフォンや自身が持っていたカメラなどで写真を撮影し、撮影後に500円~1000円を請求する人が出没しているというのだ。

海外観光地でよくある“写真撮影トラブル”だが…

“善意”で写真撮影をしてくれたと思っていた相手から、後に金銭を要求されるといったケースは海外の有名観光地などでよく耳にするトラブルだ。

たとえば、南米・ボリビアに滞在していた20代の男性は「写真を撮ってあげると言われて、撮ってもらうとお金を取られるトラブルは観光地でよく起きていた」と話す。中には撮影をするふりをしてカメラやスマートフォンを預かり、そのまま逃亡するという悪質な被害も聞いたことがあるという。

また、「ニューヨークでアベンジャーズの格好をした人たちに『一緒に写真撮ろう』と声をかけられたことがある」というアメリカに留学経験のある20代の男性は、「お金を要求されることを知っていたから逃げた」というが、それらを知らず撮影に応じ、渋々お金を支払っている観光客もいたという。

これらはもちろん海外の話で、“国内”の観光地である京都「南禅寺」の注意喚起に、SNS上では「日本でこういうトラブルが起きるなんて…」と驚きの声も上がっている。

海外の観光地でよくある“撮影トラブル”が、日本国内で起きた場合、撮影者が罪に問われる可能性はあるのだろうか。バッグパッカーとして世界各地を旅した経験を持つ藤澤周平弁護士に、海外でよくあるトラブルのケース別に話を聞いた。

だまして購入させれば「詐欺罪」が成立し得る

①勝手に撮影し「思い出にどうですか?」などと写真を販売するケース

「遊園地や水族館などでもよく行われているサービスですね。購入するかしないかは自由なので、基本的に法令違反に該当するケースは少ないと思います。もっとも、さも購入する義務があるかのようにだまして購入させれば詐欺罪が成立し得ますし、脅して購入させれば恐喝罪が成立し得ます」

②「写真撮りますよ」などと声をかけて、撮影後にお金を請求するケース

「①と同様に法令違反に該当するケースは少ないですが、だましたり、脅して購入させれば詐欺罪や恐喝罪が成立し得ます。

また、この行為をした人が観光地の管理者でない場合や管理者の許可を得ず行った場合は、管理者の意思に反してその施設に立ち入っているため、『建造物侵入罪』も成立し得ます」

③コスプレをして「一緒に写真撮りましょう」などと声をかけて、撮影後にお金を請求するケース

「①②と同様です」

④「写真撮りますよ」などと声をかけて、スマホやカメラを盗む(ひったくる)ケース

「①②の問題に加え、窃盗罪が成立します。被害者を強引に振りほどいて奪ったりすると強盗罪も成立し得ます。これは、すぐ警察に逮捕されるレベルです」

「最初から払わない」が一番の対策に?

今回の南禅寺のケースのように、国内でトラブルが想定されるのは②だろう。もし「写真撮りますよ」と言われ撮影後に金銭を請求された場合、お金は支払わなくてもよいのだろうか。

藤澤弁護士は「最初から払わないのが一番重要」ときっぱり話す。

「こういった商売をする人は、当然自分が悪いことをしている認識があります。すでに撮影後だったとしても、『払わない』といって立ち去れば追いかけてこられる心配は少ないでしょう。捨てセリフ位はあるかもしれませんが、後で嫌がらせをされる可能性もほとんどないと思います。それでもしつこく請求されたり、付きまとってくるのであれば、施設の管理者や近くの人に助けを求めましょう。

もしお金を支払ってしまえば、回収できるのは犯人がすぐ逮捕された時くらいで、それ以外に回収できる可能性は限りなく低いです」

観光地側「防犯カメラ」「立て看板」の設置も有効

一方、撮影後に金銭を要求する悪質な撮影者が現れた観光地では、どのような対応がとれるのか。

「悪質な行為を無くすためには、まずは『防犯カメラの設置』が有効です。撮影者に悪いことをやっているという認識がある以上、行為の現場や自身の顔が撮影される、証拠保全されるのを嫌がります。

また、『立て看板』も有効でしょう。観光客が、悪質な行為の危険性があることを認識していれば、被害にあうことを防止でき、迅速な通報も期待できます。悪質な撮影者はこういった観光地は避けるようになるはずです。

それ以外にも、施設側のスタッフの定期巡回、今回トラブルが起きた『南禅寺』のようにHPやSNSで周知することも有効です。ひとつひとつは当たり前の対応ですが、当たり前のことを積み上げることで、悪質な撮影者を排除できるかと思います」

海外特有? 「費用請求系」トラブルとは…

“撮影をめぐるトラブル”に遭ったことはないという藤澤弁護士だが、同じような「費用請求系」のトラブルに遭った経験があるという。

「インドのバラナシという都市で、入場者のほとんどが現地の人という寺院に行ったときです。私が外国人だと分かると別の参拝ルートに誘導され、唐突に額にターメリックの粉を付けられ、お香をたかれたり頭に油を垂らされたりした後、1000ルピー(当時1500円位)を請求されるということがありました。

その時は『手持ちがない』と値切って200ルピー(約300円)で許してもらいましたが、本来なら費用が掛かってもおかしくなく、しかもそれなりに満足感のあるサービスを受けた後は、無償でしてもらったことを申し訳なく感じてしまい、いくらかの金銭を支払ってしまいやすくなります。これは『返報性の原則』と言われています。

写真撮影系でも、浴衣などの衣装や顔はめパネルなどを用意して、それらを使わせて撮影するなどの工夫がなされれば、お金を支払ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。それでも、サービスの“押し売り”は法律的に断ることができますよ 」

取材協力弁護士

藤澤 周平 弁護士
藤澤 周平 弁護士

所属: ネクスパート法律事務所西船橋オフィス

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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