東京・銀座「白タク」運行の疑いで4人逮捕…「効率よく稼げる」現役ドライバーが語る“白タク業界”裏事情
「3割引きで乗せる」――。
東京屈指の繁華街、銀座周辺のタクシー乗り場周辺で酔客に対し、そんなうたい文句で無許可タクシー営業、いわゆる“白タク行為”を行っていた都内に住む73～77歳の高齢男性4人が道路運送法違反（無許可運送事業）容疑で警視庁交通捜査課に逮捕された。
逮捕された4人の中には無年金者や借金を抱えていた者も含まれていたという。
「生活費が欲しかった」
警視庁担当記者が事件について説明する。
「逮捕された4人は今年1月から6月にかけ、銀座周辺で白タク行為を繰り返していました。都内で個人タクシー事業の許可を得るには申請時に65歳未満であることや、過去にタクシーの運転経験があることなどが条件となっていますが、4人は許可に必要な条件を満たしていませんでした。4人に組織性はないものと見られています」
今回、4人が逮捕されたのは「警視庁内部への通報」（捜査関係者）だったという。
「通報を基に行動確認をしたところ、3回にわたり現認（声掛け等）したので逮捕となった」（同前）
逮捕後の警察の取り調べで4人は、「生活費が欲しかった」「車を走らせたかった」などと供述しているというが、今回の逮捕に対し、現役の白タクドライバーA氏（60代男性）は、「（今回のように）声掛けでもしない限り、捕まるリスクはほとんどない」とまったく意に介さない。
「兼業白タクドライバー」も！？
元サラリーマンのA氏は一身上の都合で会社を退職し、今から数年前に銀座周辺で営業する“白タクドライバー”に転身。現在は白タクドライバーをメインの収入源にしている。そんなA氏が、「まだ業界が浅いのでそれほど詳しくはないですが」と断りつつも銀座周辺の白タク事情について明かしてくれた――。
「今回のように客への“声掛け”のような目立つ行為をしない限り、捕まるリスクはほとんどないですよ（笑）。なぜなら私らのような銀座周辺の白タクは銀座の店やママ、ホステス、ポーターなどの個人的なつながりで乗客を乗せてますから、普通は声掛けなんてしません。私自身、後部座席に乗客を乗せていた時に何度か職質されたこともありますが、『友人です』『彼女です』なんて言い訳すればそれ以上、警察も追及してきません」（A氏）
そして、「（警察に）金銭授受の現場さえ抑えられなければ、いくらでも言い逃れはできる」とA氏は言う。そうした背景からか、近年ではデリヘルのドライバー、不動産業者、車屋などの兼業白タクドライバーも存在しているという。
「簡単に始められる商売ではない」理由
そうした兼業ドライバーの存在が示すように、運転免許所と車さえあれば簡単に新規参入できそうな白タクだが、A氏は、「銀座などの繁華街では“夜の街”とのつながりがないと成立しない」と業界事情について声を潜める。
「銀座周辺には夜の街に精通した“仕切り役”がいる白タクグループがいくつか存在していて、そうした仕切り役から『何時に○○で何人』というような配車連絡を受ける。仕切り役はもちろん色々な店のママやホステスさんらとのつながりでグループ内のメンバーに配車を行うんです」
A氏自身、知人を介してあるグループの仕切り役を紹介されたことから白タクドライバーになったというが、グループによっては乗車料金の何割かを仕切り役にキックバックするのが慣例のようだ。
A氏が続ける。
「ですから車と免許を持っているからと言って簡単に始められる商売じゃないんですよ。ですが、一度乗せると乗客から直接連絡がある場合もあって、そうした場合には基本、仕切り役に1本連絡を入れます。長年、商売をやっていると最初はグループに属していたとしてもリピーターから別の客を紹介してもらうことも多く、ある程度個人の顧客ができればグループから独立してフリーの白タクドライバーになる人もいます」
白タクの場合、運賃の相場は「約半額から7割」（同前）だそうだが、 「正規のタクシー業者と違って相乗りしても運賃は一人一人個別にもらいます。ですから相乗りした乗客らの運行ルートがうまくつながると美味しい。たくさん人を乗せることができるアルファードなどの大型車で白タクをやっている人間もいます」（Ａ氏）
白タクドライバーのリアルな「稼ぎ」とは…？
これまで、知られざる銀座白タク業界の事情について語ってくれたA氏。果たしてどのぐらいの収入を得ているのだろうか。
「実働時間は銀座の店が閉店する夜の12時頃から朝4時ごろまでの３，4時間。一日平約3便走ったとして平均1万5000円～2万円は稼げます。土日は休み。ガソリン代や高速料金は自腹ですが、それでも月平均実利で20～25万にはなりますから効率よく稼げる。今回の報道では生活に困った高齢者がやむにやまれず白タクを行っていた、とのトーンですが、ドライバーのなかには若い女性もいる。不況下で効率のいいアルバイト感覚ですよ」（A氏）
夜の10時から翌1時まで（土曜日・日曜日・祝日及び休日を除く日）は乗車禁止地区を設け、圧倒的にタクシーの台数が少ない東京屈指の繁華街、銀座――。白タクはそうした銀座ならでは成り立つ商売かもしれない……。
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