潮干狩り“NG行為”で罰金の落とし穴 「採ってはいけない」貝類 「使用禁止」道具とは?

弁護士JP編集部

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潮干狩り“NG行為”で罰金の落とし穴 「採ってはいけない」貝類 「使用禁止」道具とは?
潮干狩りの定番“アサリ”も決められた場所以外で採るのはNGだ(Yotsuba / PIXTA)

ゴールデンウィーク(GW)も後半戦。どこに遊びに行こうかと悩んでいる人も多いかもしれない。そんな人に朗報だ。

実は今年のGW後半は、「潮干狩り」に最適な潮汐(ちょうせき)になっている。大潮、つまり「潮が引く」状態となり、沖の方に生息する大きなあさりを採りに行くことができるようになる。特に5月5日の「こどもの日」前後は全国的に大潮が予想され、絶好の“潮干狩りチャンス”となりそうだ。

潮干狩りは少ない道具で簡単に楽しむことができ、老若男女に人気のレジャーだが、実は「やってはいけない」行為があることはご存じだろうか。

貝を「絶対に」採ってはいけない場所とは?

潮干狩り場には、「自治体」が管理する公園や海岸と、「漁協組合」などが運営する場所があり、その場ごとにルールが定められている。一方で、全国どこでも一律に“禁止されている”行為がある。それは、「潮干狩りを許可されていない場所で貝を採る」ことだ。

アサリやハマグリなど潮干狩りでとれる定番の貝も、ウニやイセエビなどの高級食材と同様に「第一種共同漁業権」の対象になっている。そのため、万が一潮干狩りが許可されていない場所で採取すれば、漁業法に違反した“密漁”とみなされ、20万円以下の罰金が科される可能性がある(漁業法143条)。2019年には、名古屋海上保安部が「ハマグリやアサリなどの貝類を密漁した疑いがある」として、10~80代の男女23人を摘発したケースもある。

貝の赤ちゃんは採らないで!

特に守りたい潮干狩りのルールとして「稚貝を採るのはNG」と語るのは、潮干狩り歴70年の“潮干狩り超人”こと原田知篤氏だ。神奈川県横浜市の「海の公園」と「野島公園」を主なフィールドとして活動し、横浜シーサイドラインの潮干狩り広報部長も務めている。

原田氏によればアサリの場合、横浜では2cm以下、東京都では2.5cm以下のものの採取は禁止されている。各自治体や潮干狩り場で禁止されている大きさが異なるが、原田氏は持って帰ることができる貝の大きさについて、おおよその目安を次のように語った。

東京都産業労働局「海で楽しむ皆さんへ」(https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/suisan/yuugyo/recreation/sea/)より(※画像を一部編集しています)

「2cmの貝は見るからに小さく、スーパーなどで売っているものとあまりに違います。まさか小さい貝を目当てに潮干狩りをする人はいないと思いますが、“売ってるくらいの大きさ”以上の大物を狙って採ってもらえるといいと思います」(原田氏)

「じょれん」「忍者くまで」使ってはいけない道具には要注意

使用してはいけない道具も、多くの潮干狩り場で決まりがある。特に、柄の先に網やカゴが付いている「じょれん」と呼ばれる道具を禁止している場所は多い。前述した摘発事例でも、一部の人たちはじょれんを使用していたという。

漁業者以外が使用すれば条例違反になる地域もある「じょれん」。茨城県「鹿島灘での潮干狩りのルール」(https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/gyosei/chosei/leasure/shiohigari201804.html)より

また、近年は「くまで」の爪に網がつけられた「忍者くまで」の使用が禁止されるところも増えている。原田氏のフィールドである横浜海の公園でも、今年から忍者くまでの使用が禁止されることになったという。

神奈川県「磯遊びのルールを守りましょう」(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/kb2/docs/yugyo/isoasobi.html)より

「普通は、くまでが貝に当たった後は手で砂を掘り返して貝を探します。でも網やカゴがついているとスコップのようにしても使える。ザッと掘って貝が採れちゃうんです。これはやっぱり“ずるい”と思いますね」(原田氏)

原田氏は「ざる」も条例に明記こそされていないものの、「限りなく黒に近い怪しい道具」だと顔をしかめる。ざるを使用しドジョウすくいの様に砂を大量にすくい上げて、砂をこして貝を探す。およそ“潮干狩り”とは言えないような方法で貝を採ろうとする人もいるのだという。

大量採取につながるざるを使った行為は、現時点では禁止こそされていないが「みんな冷たい目を向けてます」(原田氏)。

通常のくまでであっても、幅・柄の長さ・つめの長さなどの規定がそれぞれの場所で決まっているため、潮干狩りに行く前にその場所のルールを確認しておくと安心だ。

茨城県大洗の海岸で使用できるくまでの大きさ。大洗観光協会「よかっぺ大洗」(https://www.oarai-info.jp/page/page000011.html)より ※潮干狩り場によって使用可能なサイズは異なります。

規制が厳しくなる背景には全国的な「不漁」が…

大量採取に対する規制が年々厳しくなる背景には、「アサリの不漁もある」と原田氏は説明する。アサリは10年で漁獲量が80%減、2020年はピークだった1983年の3%まで激減している。静岡県浜名湖では、今年で5年連続となる潮干狩りの中止が発表された。「近年は横浜でも貝が少ない年が多くなってきました」と肩をすくめる原田氏は、だからこそ「稚貝を採らない」、「持って帰っていい量を守る」など基本的なルールを守ることが大切だと語る。

「1人が一度に採っていい量もその潮干狩り場によって決められています。1kgまでのところもあれば、2kgまでのところもあるし、千葉県などの有料の潮干狩り場では超過料金を払えば持って帰ってもOKというところもある。そもそも、行こうと思っている潮干狩り場は今年どれくらい貝が採れるのかなども、行く前に調べてから行くといいですね」(原田氏)

潮干狩りは、行く“時間”が命

今年のGW、原田氏は海に行くのか尋ねると「もちろんです」と力強い答えが返ってきた。

「遊園地のアトラクションなどと違って、潮干狩りは潮の満ち引きがあるため、楽しめる時間が決まっているいわば“コンサート”のようなもの。そういう意味で、今年のGW後半はベストです。関東では干潮のタイミングも午前中とレジャーにもぴったりの時間帯です。

ただし、みんな同じ干潮の時間をめがけて海を訪れるので、駐車場などは特に混み合います。ベストなタイミングを逃さないためには、少し離れたところに車を停めたり、公共交通機関を使う方がかえって良いかもしれません。しっかり予定を立てて楽しみましょう」

宝探しのような潮干狩り。“ずるい手”を使って思い出に水を差すことなく、正々堂々と大物の貝をつかみ取りたいものだ。

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