海外スリ犯に狙われる“日本人のクセ” 旅行先「やってはいけない」“いつもの”行動とは

弁護士JP編集部

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海外スリ犯に狙われる“日本人のクセ”  旅行先「やってはいけない」“いつもの”行動とは
花の都パリでも多くの日本人旅行者が窃盗被害に遭っている(弁護士JP編集部)

海外旅行の需要が徐々に戻りつつある。FNNの報道によれば、今年のゴールデンウィークに予約されている航空各社の国際線は、昨年の2倍以上に増えているそうだ。

外務省「海外安全ホームページ」では、各国の安全に関する最新情報を確認できるが、「日本人が被害者となる犯罪の手口」として多くの国で注意喚起されているのが「スリ」「置き引き」「ひったくり」などの窃盗犯罪。3月には、アジア人観光客とおぼしきカップルがパリ・エッフェル塔前の広場で記念撮影をしていたところ、足元に置いていたリュックサックを一瞬の隙に盗まれてしまう動画がTwitterで拡散し話題となった。

もしかすると、自身や身近な人たちの実体験として「海外旅行中にパスポートや財布が盗まれた」というエピソードを持っている人も少なくないかもしれない。果たして、“日本人ならでは”の「ターゲットになりやすい理由」や、それを踏まえた対策はあるのだろうか。

日本人が狙われやすいワケ

「一般的に、日本人は多額の現金や高価な装飾品を持ち歩いていると思われているため、ターゲットにされやすいのです」

そう話すのは、海外における日本人旅行者の安全対策などについて情報提供を行う「海外邦人安全協会」の岩崎照男さん。ここ数年でキャッシュレス決済が急速に普及し、多額の現金を持ち歩く人も少なくなってきたが、海外ではいまだに「日本人=現金主義」というステレオタイプが残っているのだろう。

日本では、スマホをテーブルに置いて食事する、食事中に荷物を置いて席を立つ、電車などで足元に大きな荷物を置く…といった光景は日常的に見られるが、もともとターゲットにされやすい上に、海外でうっかり“いつものような”行動をとれば、犯人の恰好の餌食となることは想像に難くない。

「スリや置き引き、ひったくりは、複数人の“連携プレー”で行うのが常とう手段です。たとえば、1人が通りすがりの観光客にケチャップやマヨネーズをかけて、もう1人が親切に助けるふりをしながら注意を引き、その隙にもう1人が財布などを盗み出して、バイクなどに乗った“運び屋”に渡して逃げる…といったように、巧妙な手口で、あっという間に貴重品を盗み去ってしまいます」(海外邦人安全協会・岩崎さん)

国によって事情は異なるそうだが、スリなどの窃盗団は現地の人だけではなく、近隣国から“出稼ぎ”にきているケースもあるという。中には「日本人の旅行シーズンを狙ってやってくる」といった話もあるのだとか。

“旅行者の雰囲気”を出すほど高リスク

前述のように、スリ、置き引き、ひったくりにおいては、ターゲットの注意を複数人で巧妙に引きつけ、油断させた隙に金品を奪うのが常とう手段だ。日本人に限らず、そもそも観光客は「ターゲットとして“きっかけ”を作りやすい」と前出の岩崎さんは指摘する。

「たとえばスマホで地図を見てキョロキョロしていれば『道案内しましょうか』、トランクなど大きな荷物を抱えていれば『助けてあげましょうか』、日本人だと分かれば『日本が好きだ』などと言って注意を引きつけます。

もちろん、すべての人に悪意があるとは言いませんが、“普通の人”は見ず知らずの人にそうたやすく話しかけません。『大体は何か目的を持って近づいてくる』と心にとどめて、警戒することは大事です」(海外邦人安全協会・岩崎さん)

自分が「観光客感まる出し」になっていないか―たとえばスマホやカメラを首からぶら下げる、現地で浮きそうな服装をしている、狙われやすい金品が窃盗団の目に触れやすいところに露出しているなど―を客観的な視点でチェックすることも大切かもしれない。また、現地で持ち歩く荷物は最少限にするといった配慮も必要だろう。

被害に遭ったら「まず大使館へ連絡」

海外旅行でスリ、置き引き、ひったくりの被害に遭わないための対策について、岩崎さんは「まず、旅行前にその地域の犯罪や危険なエリアに関する情報をしっかり調べることが重要です」という。

「外務省は『たびレジ』というサービスで、海外の最新安全情報を配信しています。自分が渡航する国を登録すれば『○○地区でひったくりが多発している』『○○地区でデモが行われる』など具体的な情報を受け取ることができるので、利用することを強くおすすめします」(海外邦人安全協会・岩崎さん)

その上で最低限、以下の対策を心掛けるべきだという。

  • パスポートやクレジットカードのコピーを取っておく
  • 貴重品は身につけるか、ホテルのセーフティボックスに預ける
  • 人混みの中では貴重品の入ったバッグなどは前にして持つ
  • スマートフォンは手で持って歩かない、歩きスマホはしない
  • 現金は少量しか持ち歩かない
  • クレジットカードは複数を持ち歩かず、必要最低限のものだけを持つ
  • パスポートの持ち歩き、保管に注意する
  • ※パスポートの再発行は戸籍謄本または抄本が必要となるため時間がかかる

また、万が一被害に遭ってしまった場合は、

  • 現地警察への通報
  • 大使館や総領事館への連絡
  • クレジットカード会社への通報(クレジットカードが盗まれた場合)

をすみやかにする必要があるという。

「盗難被害に遭った後は、パスポートの再発行やクレジットカードの盗難補償など、盗まれたものによってさまざまな手続きが必要になりますが、まずは現地の警察に被害届を提出して証明書を発行してもらわないことには物事が進みません。大使館や総領事館に相談をすれば、そのサポートをしてもらえます。

『敷居が高い』というイメージがあるかもしれませんが、現地で被害に遭った人を助けることも、大使館や総領事館の大切な役目です。ためらわずに相談してください」(海外邦人安全協会・岩崎さん)

「備えあれば患いなし」と言うが、楽しむための支度だけでなく、万が一何かあったときのための準備こそ、旅の極意なのかもしれない。

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