秋葉原「メイドカフェ」で18歳未満に接待させて御用…風営法の「接待」アウトとセーフの境界線

中原 慶一

中原 慶一

秋葉原「メイドカフェ」で18歳未満に接待させて御用…風営法の「接待」アウトとセーフの境界線
おんりーぱーちぃのツイッター(https://mobile.twitter.com/onlyparchi)

秋葉原のメイドカフェで、無許可で女性従業員に男性客の接待をさせたとして、経営者ら男女2人が御用となった。

今月6日警視庁生活安全特別捜査隊と神田署に風営法違反(無許可営業)の疑いで逮捕されたのは、飲食店「おんりーぱーちぃ」(東京都千代田区神田神保町)の経営者、中島与範容疑者(45)と店舗責任者、弓戸比加里容疑者(31)。二人は容疑を認めているという。店はことし8月末にオープンし、約160万円を売り上げていたといい、5人いた従業員はいずれも18歳以下の未成年だった。

「キャバクラ」と「ガールズバー」の明確な違いとは

〈秋葉原〉、〈メイドカフェ〉、〈未成年〉というキーワードから、かつて盛んに報じられた〝JKビジネス〟を連想してしまう人も多いかも知れないが、この事件の問題の本質はそこではないという。少年事件の対応も多い杉山大介弁護士は話す。

「『メイドカフェを装ったガールズバーを無許可で営業した』と報じたメディアもありましたが、そこは誤解があります。ガールズバーであれば、むしろ問題はないのです。あくまでポイントは、『接待』と『営業時間』にあります。

ごく基本をお話ししますと、店が風営法における「風俗営業」の一種である、『接待飲食等営業』として許可を得ていれば『接待』は可能となります。『キャバクラ』などがこれに当たります。一方、いわゆる『ガールズバー』は、酒類提供飲食店営業として届け出ているだけなので、『接待』はできません。今回の摘発は、店が『接待飲食等営業』の許可を得ていなかったにも関わらず、接待をさせていたことが問題なのです。もちろんそこで未成年を働かせていたことは問題ですが、それは後述します」

警視庁による「接待」の基準

それではまず、「接待」とは具体的にどのような行為を指すのか。風営法では、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とある。警視庁の解釈基準によれば、接待とは、以下の行為を指す。

  • 談笑、お酌
  • 客とのダンスや歌唱、ゲームや競技
  • ショー
  • 客の口許まで飲食物を差し出し、飲食させる行為
  • 身体を密着させたり手を握ったりするなど、客の身体に接触する行為

つまり、キャバクラのように客の隣に座り、上記のようなサービスをすれば、それは「接待」、一方、ガールズバーのカウンターの中から、酒類や軽食を提供し、会話を楽しむ程度であれば、それは接待とはみなされない。同店はカウンターだけの店だったが、長時間に渡り、店員と客が会話をしていたとされ、これが接待とみなされたという訳だ。

「高校生も大歓迎」だが「終電までOK」に潜む矛盾

しかし昨今、「メイドカフェ」や「コンセプトバー」と呼ばれる業態において、その区分は曖昧になっているという。あるメイドカフェ関係者はこう話す。

「『ジャンケンで買ったらア〜ンでつまみを食べさせる』、『チップを払えば10秒間手を重ね合わせておくことができる』などと、あの手この手のオプションを付ける店がありますからね。限りなくグレーゾーンは広がっていると思います」

さらに「営業時間」に関しても同店は問題があったようだ。

「接待を伴うキャバクラは、原則として深夜0時から6時までの営業は禁止されています(風営法13条)。一方、ガールズバーは、『深夜酒類提供飲食店』という届出を提出すれば、法律上は24時間営業が可能になります」(杉山弁護士)

しかし、同店の営業時間は曖昧だったことがうかがわれる。

同店が9月に求人サイトに掲載していたスタッフの募集要項(写真=現在は削除)を見ると、〈★高校生も大歓迎〉とした上で、給与は〈時給1500円〜〉、勤務時間は〈15:00〜22:00〉とある。しかし、その下には〈◆もちろん終電までOK〉という矛盾する記述が見られる。

求人サイトに掲載していたスタッフの募集要項。接待についての記述はなかった(モザイクは編集部で加工)

コンプラ意識の低い店は増えている?

「未成年に22時以降労働させることは認められていません(労働基準法61条)。しかし、こうしたコンプライアンス意識の低い経営者は、〈22時まで〉としていても、それは名目上のことで、実際はその通りではない場合も少なくありません。ちなみにファミレスや居酒屋など酒類を提供する店で高校生がアルバイトをすることは合法ですが、キャバクラやガールズバーなどで20歳未満に飲酒をさせることは違法です」(杉山弁護士)

メイドカフェを取材している夕刊紙記者はこう話す。

「今、週末に秋葉原を歩けば、路上はメイド服姿の客引きで溢れています。コロナで大打撃を被ったこの業界は、緊急事態宣言解除以降、あの手この手で激減してしまった客足を引き戻そうと必死ですから、こうした違法、もしくは際どい営業をしている店は少なくありません」

緊急事態宣言が終結し、外で飲食する機会も再び増えているこの年末。遊ぶ方もくれぐれもコンプライアンス意識を忘れないでおきたいものだ。

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