坂本龍一さんに「3人のパートナーと4人の子ども」… 世界のサカモト「相続問題」はどうなる?

中原 慶一

中原 慶一

坂本龍一さんに「3人のパートナーと4人の子ども」… 世界のサカモト「相続問題」はどうなる?
相続で揉めないためには「遺言書の作成」が有効と言われるが…(beauty-box / PIXTA)

ミュージシャンの坂本龍一さんが3月28日に71歳で亡くなった。

坂本さんは2014年に中咽頭がんを患い、放射線治療で寛解したものの、6年後の20年、中咽頭がんとは別にステージ4の直腸がんが発覚。治療しなければ「余命半年」と宣告された。その後、何度も手術を重ねたが、死因は進行したがんが転移したものと見られる。

坂本さんは、6歳でピアノを習い始め、東京芸術大学に進学。1978年、ベーシストの細野晴臣とドラマーの高橋幸宏と共にYMOを結成。(高橋さんは今年1月に死去)。爆発的なブームとなったが83年に解散した。同年、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』でデヴィッド・ボウイと共演。坂本さんが手がけたテーマ曲も世界的ヒットとなった。

その後もロック、ポップス、クラシック、テクノ、映画音楽と縦横無尽に活躍し続けた。同時に、「反原発」「神宮外苑(がいえん)再開発反対」など、政治的な活動にも積極的に取り組んだ。

才能あふれる音楽性と深い知性は、まさに“教授”と呼ばれるにふさわしい存在だった。

「同時に、とにかく女性にモテました。常に女性をはべらして酒を飲む姿は有名だった」と音楽関係者が振り返る通り、世界的な天才音楽家は女性関係も華やかだった。

母親の違う3人の子と連れ子1人

「最初の結婚は1972年、東京芸大2年のときで相手は2歳年上の女性です。長女が生まれたが、後に離婚。2度目は歌手の矢野顕子で、矢野には連れ子もある再婚どうしだった。1980年、後に坂本美雨として活躍することになる娘が生まれたが、2006年に離婚。

3人目のパートナーは、矢野顕子と婚姻関係が継続中の92年前後にニューヨークで知り合って交際に発展した日本人女性スタッフのA子さん。30年にわたり坂本さんを支えてきた存在ですが、事実婚だったと言われています。

この女性スタッフとの間には、1991年に男子が生まれていて、当初は矢野顕子との婚姻関係を解消してなかったため、“隠し子”と報道されました。現在この男性は30代になり、空音央(そら ねお)という名で映像作家として活躍しています」(前出の音楽関係者)

つまり、坂本さんにはそれぞれ母親の違う3人の子がおり、さらに矢野には前夫との間の連れ子がいたので、合計4人の父ということになる。

ここで気になるのは、億単位と見られる坂本さんの遺産を巡る相続問題。坂本さんは、自らの死を意識するようになってから、相続でモメないようにA子さんとの入籍を考えるようになったと「女性セブン」が伝えているが、真相は明らかになっていない。

法律上夫婦ではない場合は相続人にはならないが…

坂本家の相続について、離婚や男女問題、相続の相談対応も多い佐久間一樹弁護士はこう話す。

「やはりポイントは、A子さんと入籍していたかということになります。法律上夫婦ではない場合は、法定相続人にはなりませんから。内縁関係にあった方などが遺産を受け取れる制度として、『特別縁故者』という制度もありますが、他に相続人がいないことが必要です。

したがって今回の場合はお子さまのどなたかに相続されるとすれば、特別縁故者として遺産を受け取ることはできないと思います。お子さまについては、法律上の親子関係がある場合に相続人になりますので、認知をしていれば、そのお子さまは相続人となります。生前に認知がされていなくても、生物学的には親子関係がある場合には、『死後認知訴訟』で、裁判官に親子関係を認めるよう、求めることがあります」

「ケンカせずに仲良くしてほしい」

坂本さんは、2012年2月、還暦を迎えたことを機に「文芸春秋」のインタビューでこう話していた。

〈子どもたちに望むのは、私が死んだあともケンカせずに仲良くしてほしいということ。私の場合、子どもが4人いますが、それぞれの母親が3人。(中略)でも特殊な状態ではあるので、特に仲良くしてほしいという思いが強いんです。〉

生前、それぞれの家族は坂本さんを中心に仲がよかったという。坂本さんは、自分の死後、残された家族たちが相続などでモメないよう、何らかの手を打っていたと考えられる。

実際、「相続をきっかけに相続人同士でモメるケースは、相続前から不仲であることが多いのです」と前出の佐久間弁護士は話す。

「相続の相談として多いのは、『分け方』についての相談です。土地や建物があるときに、取り合いになって、どう分けるか、という問題が典型的です。

また、『特別受益・寄与分』のご相談も多いです。生前に相続人のうちの誰かが不動産などの大きな財産をもらっていたり、逆に、生前の介護や生活費の相続人のうちの誰かが負担していたりすると、遺産を分けるときに、それらのことを評価してほしいということで、争いになることもあります。

そして、遺言書で『相続人のうちのひとりが全部もらってしまった』場合などには、法律上最低限もらえる分の請求(遺留分侵害額請求)をしたいということで、争いになることもあります。このほかにも、『生前に親の財産を勝手に使い込んでいたのではないか』、ということが相続のときに明らかになって、争いになることもあります。これらのような争いは、相続人全員が納得できる分け方の内容にする遺言書を作成することで、ある程度避けることができると思います」

坂本さんのケースでも、「仲良くしてほしい」という思いがあったため、遺言書を作っていた可能性は高いと見るのが自然だ。

相続での揉めごとを避ける方法は?

われわれ一般人も、坂本さんを見習って、相続でモメないように心がけたいとものだ。佐久間弁護士にこの件について聞いてみた。

「相続でモメないために、生前にできる方法としては、①生前贈与、②遺言書の作成、③信託がよくあります。

①生前贈与は、生前に財産をパートナーやお子さまに与えてしまう方法です。贈与税が生じる場合がありますので、相続時精算課税制度を用いたりするなどで対策をすることになります。

また、オーソドックスではありますが、②遺言書を作成するという方法も有効です。後に紛争にならないように、弁護士に相談のうえ、ご意向が反映された遺言書を作成したり、遺言が確実に実現できるように、遺言執行者を選んでおいたりするということが良いと思います。

このほかにも、③信託という方法があります。これは、弁護士のほか、信託銀行に依頼をして対応をすることも多い手続きです。遺言よりも細かく決めたりすることもできますので、選択肢の一つとして考えておくとよいでしょう。

税金対策や生じるコストも意識されると思いますので、生前贈与などをしながら、遺言書の作成もする、という方法がよろしい場合が多いと思います」

どうやら「生前贈与+遺言書の作成」がよさそうだが、佐久間弁護士が付け加える。

「どのような方法が一番よいかは、財産のご状況や、ご家族との関係によってさまざまとなります。相続の問題は、早めに相談されることが一番の対策とも言われておりますので、『少し早いかな?』という頃合いでご相談をされるのがよいと思います」

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