再逮捕された70代男性が9人の“妻”と同居の謎 「一夫多妻」“状態”法律的に問題ない?
“一夫多妻男”が再逮捕された。
男は70代の元占い師。“妻”と共謀して10代の女性を自宅に連れ込み「私と性交しなければ宇宙人に連れ去られて死ぬ」などと脅した疑い(準強制性交未遂)で、2月上旬に逮捕されていた。今回は別の10代女性を自宅に誘い込み、前回と同様「宇宙人」を口実に洗脳して、わいせつな行為をした疑い(準強制性交)だ。
報道によれば、男は20年ほど前から複数の女性と結婚・離婚を繰り返しながら集団生活を送っていたといい、2月上旬の逮捕時には40~70代の妻と元妻9人、そして彼女たちとの間にできた子ども3人と同居していたという。
日本では法的に一夫多妻が認められていないが、男が作り上げた一夫多妻“状態”とはどういうことなのだろうか。
一夫多妻“状態”に法的問題はない!?
男が“話題”になったのは今回が初めてではなく、2006年にも女性に「言うことを聞かなければミンチにされる」などと言って集団生活をするよう迫ったとして、脅迫と強要未遂で逮捕・起訴されている(この時は懲役1年6か月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡された)。
文春オンラインによると、男は当時「一夫多妻は日本では認められていないから、結婚と離婚を繰り返した」などと語っていたそうだ。これについて、離婚・男女問題に詳しい佐久間一樹弁護士は「一夫多妻が認められていないから結婚と離婚を繰り返したという話は、論理的につながっていません」と言う。
報道によれば、男は“妻”たちと短期間で結婚・離婚を繰り返しながら、彼女らに自身の「姓」と「不動産」を与えていたそうだ。
「離婚後も『婚姻時の姓』を名乗り続けることは、法律上可能です。また、モラルの問題や不貞行為とみられる行為がある場合はさておき、離婚・再婚後に現在の妻・元妻と同居を続けること自体には、法律上の問題はないと思います」(佐久間弁護士)
なお、不動産を贈与する際、婚姻関係にあることについては「今回の場合では、法律上のメリットは想定しがたいです」と佐久間弁護士は言う。
「たとえば、夫婦間の不動産の贈与ということですが、婚姻期間が短い場合には贈与税の配偶者控除という特例も受けられないなど、税金的な得はないように思います。
夫婦間にかかわらず、理屈上は、生活費としての範囲を超えるものであれば贈与税も生じますし、財産分与と扱おうとしても、不相当に過大と判断されてしまうと贈与として課税の対象となるので、婚姻関係にあることの法律上のメリットはないと思います」(佐久間弁護士)
“妻”たちの相続権はどうなる?
結婚・離婚には「相続問題」が付きものだが、もし男が亡くなった場合、“妻”たちの相続権はどうなるのだろうか。
「日本の法律では、離婚した夫婦は他人の扱いになるため、離婚後の元配偶者に相続する権利はありません。
しかし、遺言書に法律上有効な記載をしていれば、遺産を渡すことができます。その場合でも『元妻にも財産分与する』だけでは意味内容が不明確です。
トラブルを避けるためにも、何を遺贈するのかといった書き方は、弁護士などの専門家に相談されて定めるのがよろしいと思います」(佐久間弁護士)
相続権以外にもトラブルの“タネ”が…
一夫多妻“状態”そのものに法的問題はなく、男は今回も前回も、女性を脅して無理やり性交や集団生活をさせようとしたことで逮捕された。裏を返せば、脅すようなことさえしなければ、“夢の一夫多妻ライフ”を何ら問題なくおう歌し続けることができていたのかもしれないが…。
「法律上の配偶者のほかに、実質的な婚姻関係がある関係を『重婚的内縁関係』と言います。重婚的内縁関係は、法律上の婚姻関係とは異なり、法的な保護は十分には得られません。
婚姻関係にあれば、扶養義務による保護を受けられるほか、配偶者として様々な法律の効果が生じます。また、先ほど述べたように、配偶者であれば、原則としては相続人として扱われます。
元妻と現在の妻との間で、法律上は同じ扱いにはならないことが発端となり、お互いに思惑通りの関係が作れないおそれがあります。
今回の場合ほどの極端な人数や生活状況ではないにせよ、愛人関係がある場合には、思惑通りの関係が作れないという類似の問題は生じる可能性があります」(佐久間弁護士)
安易に一夫多妻“状態”の生活を送るのは、リスクが大きいようだ。
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