広域強盗事件「指示役」“ルフィ”に問われる罪 主犯格ら「極刑」の可能性は?

弁護士JP編集部

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広域強盗事件「指示役」“ルフィ”に問われる罪 主犯格ら「極刑」の可能性は?
90歳の女性が亡くなった事件現場の住宅(2月 東京都狛江市/弁護士JP)

東京都狛江市で発生した強盗殺人事件を発端として広く知られるようになった、昨年から関東近県を中心に全国で10件以上発生している、一連の広域強盗事件。先日、実行犯らが相次いで4人逮捕されたが、「ルフィ」と呼ばれる強盗の“指示役”については特にメディアによる報道が加熱している。

フィリピンから送還・逮捕された渡辺優樹容疑者らがルフィではないかと報じる向きもあるが、そもそも指示役が誰であるのかも含め、いまだ警察から詳しい発表はなく明らかになっていない。そんな中、一部メディアが容疑者たちの「極刑」の可能性について記事で言及した。

記事では、主犯格らが、今年1月に東京都狛江市で90歳の女性が殺害された強盗殺人、昨年12月に広島市西区で男性が意識不明の重体となった強盗殺人未遂などの重大事案を引き起こしたと紹介。渡辺容疑者らの顔写真を載せ、「強盗殺人・致死罪の法定刑は死刑または無期懲役だ」と断定している。

たしかに「強盗殺人・致死罪」の法定刑は死刑または無期懲役の可能性は高い。しかし、渡辺容疑者らは、現時点では「指示役」とされ、事件当時フィリピンにおり強盗殺人の「実行犯」であった可能性は限りなく低い。彼らに「死刑または無期懲役」が下される可能性は本当にあるのだろうか。

実行犯じゃなくても、極刑の可能性はある?

刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士に、強盗の「指示役」に極刑が下される可能性について聞いた。

一連の広域強盗事件で“ルフィ”と名乗ったとされる主犯格ら強盗の「指示役」に極刑の判決が下される可能性は本当にあるのでしょうか。

杉山弁護士:可能性としてないとは言いませんが、極刑が「確実」とする根拠は全くありません。生命侵害として殺人に至っているのは(今回の広域強盗事件のうち)1件であるという点は、死刑という結論を取るには大きな障害になりますし、その1件すらどの範囲で責任が問われるか未定です。

裁判になれば、どのような点が争点になり得えますか?

杉山弁護士:詳細は知りませんが、捜査でも公判でも必ず否認が入る事案でしょう。まず実際には誰がどのような指示や行為をしたか、共犯(※)がどこまでの範囲で認められ、どこまでの刑事責任が認められるか。つまり人を殺すところまで“ルフィ”ら指示役の責任だったと言えるのかなどが争われると思います。その責任の範囲によって、おのずから刑も決まってくるでしょう。

(※) 共同して犯罪を実行した共同正犯、犯罪をそそのかした教唆犯や、凶器を調達するなどの手助けをしたほう助犯などがある。

「まだ量刑を論じる段階にない」

指示役がいなければ、強盗は起きず殺人事件に発展することもなかっただろう。しかし、あらかじめ指示役が殺人を指示していないとすれば、その責任は「実行犯」となる可能性もある。

殺人の「実行犯」と、結果的に殺人を引き起こしてしまった強盗の「指示役」では、どちらがより重い刑罰を受ける可能性があるのでしょうか。

杉山弁護士:これも事実認定の問題が大きいです。犯罪に寄与した側面として、計画を立て指示し利益を得ている立場が重くなるのは確かですが、そもそもどの範囲で責任が生じるのか確定しておらず、今回のケースは、まだ量刑を論じる段階にはありません。

旬なネタだからと便乗する“イナゴ記事”に惑わされず、指示役らにはどのような犯罪が成立し起訴されるのか、どこまで刑事責任が問われるのかなどに注目しながら、冷静に報道を見ていきましょう。

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