パチンコ店「くぎ問題」“違法でなくグレー”も摘発相次ぐなぜ? 警察動かした“ある事情”

弁護士JP編集部

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パチンコ店「くぎ問題」“違法でなくグレー”も摘発相次ぐなぜ? 警察動かした“ある事情”
ファンにとっては“くぎ読み”も腕の見せどころとされてきた側面があるが…(Yokohama Photo Base / PIXTA)

パチンコ店が「くぎ曲げ」―ハンマーなどでくぎをたたいて角度調整すること―をしているのは、店舗側のみならずパチンコファンにとっても“常識”と言えるだろう。しかし昨年「くぎ曲げをしていた」として、全国のパチンコ店で摘発が相次ぎ、業界に激震が走ったことは記憶に新しい。

くぎの「整備」は「違法ではないがグレー」

パチンコのくぎは真鍮又は黄銅で、玉は鋼でできている。真鍮等はさびづらいのが利点だが、軟らかいため、硬い鋼でできた玉が当たることで徐々に曲がってきてしまう。

本来、パチンコ店がくぎを打ち換えたりするには、遊技機の変更として都道府県の公安委員会の承認が必要だ(ただ、くぎ曲げは、これにより検定を受けた性能に変更をきたしてしまうことになるため、公安委員会は承認してくれない)。しかし、使用しているうちに狂いが生じたくぎをハンマーでたたいて“メンテナンス”することは、遊技機の同一性を維持する行為として「申請不要」と解釈されている。

これを踏まえて、パチンコホールの運営に詳しい三堀清弁護士は「(くぎをたたく行為は)違法ではないがグレーです」と指摘する。

「風営法の関連規則である『遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則』は、くぎの“あるべき形”について『遊技板におおむね垂直に打ち込まれているものであること』としています。よって、この『おおむね垂直』の範囲でくぎの頭が触れたりして玉の通りが悪くなった場合、くぎをたたいて『おおむね垂直』の範囲内で元に戻すことについては、違法でも何でもないと解釈されます」(三堀弁護士)

しかし「おおむね垂直」とは、具体的に何度までの傾きなら許されるのか、法律では定められていない。

「もし決めてしまえば、国が『その範囲ならくぎ曲げしてOK』とお墨付きを与えることになってしまいますので、警察もこのような解釈を公には認めていません。しかし、一般的には『おおむね垂直』の範囲なら申請なしでくぎをたたいてもOK、という解釈がされているのです」(三堀弁護士)

摘発の“決め手”は「出玉率」

では「どこまでなら法的にOKか」が定められていないくぎ曲げの角度について、警察はどのように「摘発対象かどうか」の判断をしているのだろう。

「『出玉率』(※1)が異常な数値だった場合は“アウト”です。

(※1)大当たりしていない通常時に、どれだけ小当たりが出るかを表す確率。ベース値とも言う

そもそも遊技機のくぎ曲げが制限されているのは、客の射幸心をあおってギャンブル依存症に陥らせることを防ぐため。射幸心は『勝つかどうかは運次第』『一部の人しか勝てないが、勝てば大勝する』といった状況で非常に高まりやすくなります。

くぎをたたいて遊技機の本来のスペックを崩し、出玉率を異常に高くしたり低くしたりすることは、まさに射幸心をくすぐる条件がそろっていると言えるでしょう。

一部では、メーカーが遊技機の納品時に配布する『くぎ確認シート』(※2)で摘発対象か判断されているという話もありますが、これには法的根拠がなく、あくまで目安程度に使われているに過ぎません。よって、くぎ確認シートにくぎの頭が収まっていたからといって、摘発から完全に逃れられるわけではないのです」(三堀弁護士)

(※2)透明あるいは半透明のフィルムに、適切なくぎの位置が印刷されたシート。遊技機に当てて、くぎの頭が規定の位置からはみ出していないかチェックする

「くぎ曲げ」に使われる道具 ※イメージ(Yokohama Photo Base / PIXTA)

警察が「摘発強化」しているのではなく…

昨年の相次ぐ摘発によって、一部では「警察がくぎ曲げの摘発を強化しているのでは」といった声も聞かれた。しかし三堀弁護士は、これを否定し、摘発が目立つようになった「別の要因」を指摘する。

「スマホの普及です。たとえばパチンコで全然当たりが出ないときに、くぎ曲げを疑った客が写真や動画を撮って警察に通報するというケースが非常に増えてきています。警察としても、そういった通報が“証拠”とともに届けば、動かざるを得ない。もちろん、中には違法なくぎ曲げがされていなかったというケースもありますが、チェックする数が増えた分、摘発される数も多くなっていると考えられます」(三堀弁護士)

「くぎ曲げ」摘発の罰則は

パチンコ店がくぎ曲げで摘発された場合、店側にはどのような影響が及ぶのだろうか。

「風営法違反には『行政処分』と『刑事罰』があるのですが、まず行政処分としては、くぎ曲げ等の無承認変更の場合、処分基準の量定は『A』で『営業許可の取消し』とされていますが、多くの場合は6か月の営業停止で済んでいます。しかし、仮に1店舗でも営業許可の取消し処分を受ければ、会社には風俗営業者としての『欠格事由』が生じるため、摘発された店舗のみならず、全店舗が営業停止になる可能性があります。

次に刑事罰としては、店長などくぎ曲げに直接かかわった人は『100万円以下の罰金もしくは1年以下の懲役またはこれらの併科』となり、実際には数十万円の罰金刑となることがほとんどです。ただしこちらも、両罰規定(※3)によって法人にも罰金刑が科された場合は、会社に風俗営業者としての『欠格事由』が生じ、全店舗が営業停止になる可能性があります」(三堀弁護士)

(※3)企業内で一定の地位を持つ従業員が法律に違反した場合、その従業員に一定の地位を与えた事業主(法人や代表者)も併せて処罰の対象になるという規定

ファンにとっては“くぎ読み”も腕の見せどころとされてきた側面があるが、射幸性の高いギャンブルが問題視される風潮の中、パチンコの未来はどうなっていくのだろうか。

取材協力弁護士

三堀 清 弁護士

三堀 清 弁護士

1957年、神奈川県出身。早稲田大学法学部卒業後、1988年に弁護士登録(第二東京弁護士)。1997年に三堀法律事務所を設立。パチンコホールをはじめ、企業法務案件を多く手がける。

所属: 三堀法律事務所

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