離婚時に「結婚指輪返して」は“セコいか?”論争 弁護士が出した結論は…

弁護士JP編集部

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離婚時に「結婚指輪返して」は“セコいか?”論争  弁護士が出した結論は…
離婚時に“結婚”“婚約”指輪はどういう扱いになる?(ペイレスイメージズ/PIXTA)

離婚を控えた女性が、夫に「結婚指輪を返してほしい」と主張するのは「セコいか?」と問いかけたインターネット掲示板への投稿が注目をあつめた。

投稿の概要は、「女性は結婚当時貯金の少なかった夫に代わり、結婚指輪の代金を2人分全額支払った。子どもの教育費の足しにするために指輪を返却してもらいたい」というもの。

また、離婚後も夫が結婚指輪を持っていることに対し「気持ち悪い」と感じることも返却を希望する要因のひとつのようだ。さらに、夫にもらった“婚約指輪”については返却を申し出るとした上で、投稿は「やはり(自分の考えは)セコいでしょうか?」と問いかける。

これに対しコメントでは、「あなたの資金で購入したなら所有権はあなたにあるからセコくない」「相手にプレゼントした時点で所有権は相手にあるはずで、返還義務はないのでは」「財産分与の条項に入れれば?」「男性の結婚指輪なんて、売っても大した額にならない」などさまざまな意見が飛び交った。

離婚の代理人として対応することの多い松井剛弁護士に、指輪の“返却”を求めることについて聞いた。

本当に「指輪」が必要か?

離婚の際に、結婚指輪の“返却”を求めることについて、どのような感想をお持ちですか?

松井弁護士:少しでも教育費の足しにしたいという気持ちは理解できます。ただ、結婚指輪は多くの方が日常的に身につけるものです。私の結婚指輪は確か10万円くらいでしたが、傷だらけで、他人からすればほとんど価値のないものだと思います。もちろんダイヤなど石に価値がある場合や、結婚してすぐ離婚するというようなケースもあると思いますが、何年も身に着けていた指輪を返してもらったところで、価値がどの程度あるか疑問です。

もし依頼者に同様の相談をされたら、どのようなアドバイスをしますか。

松井弁護士:まず、本当に“指輪”を返してもらいたいですか? と伺います。夫が指輪を持っているのが「気持ち悪い」のであれば、返してもらうことでしか解決できないかもしれませんが、指輪を返却してもらうより指輪相当額のお金で清算しませんかと提案したいですね。

指輪の財産分与「聞いたことがない」

妻が2人分の指輪を購入している今回のケースでは、指輪の価値を考えて返却を求めるよりも、妻が『支出した金額』として主張する方が合理的のようだ。

では夫婦で一緒に指輪を購入した場合や、一般的に男性が女性に渡すことの多い『婚約指輪』はどう処理されることが多いのか。また、離婚時にトラブルになりやすい「物」はあるのだろうか。

「2人で一緒に」指輪を購入した場合、指輪は財産分与の対象になるのでしょうか?

松井弁護士:状況次第では「2つの結婚指輪を2人で共有している」という主張が成り立つとは思うので、夫婦の共有財産として財産分与の対象になる余地があります。でも私が携わった案件では、指輪の財産分与は聞いたことがありません。多くの方が「自分の指輪は自分の物、相手の指輪は相手の物」という認識でいるのではないでしょうか。

男性が女性に贈ることが多い「婚約指輪」はどうですか?

松井弁護士:結納金の考え方に近いのですが、婚約が破棄された場合は「返せ」と請求できます。ただ、ちゃんと結婚した場合は、後に離婚したとしても「返せ」とは言えません。婚約指輪は基本的に贈り物で、“贈与”と見なされています。夫が贈ったのであれば、所有権は完全に妻にあります。財産分与の対象になりません。

離婚時にもめやすいのは“家電”?

離婚時に所有権や財産分与でもめやすい「物」はありますか?

松井弁護士:冷蔵庫や洗濯機などの生活に必要な家具・家電ですね。これらは離婚前、別居するタイミングでもめるケースが多いです。

「これは自分が独身の時から持っていた物だから持っていく」「一緒に買った物だけど欲しい」と話し合いがスムーズにいけばいいですが、そうはいかないことも。弁護士が代理人として間に入って、共有財産のリストを作り、それぞれが希望する物を突き合わせ、相手側と交渉していくということがあります。

誰だって物を購入するときにいちいち「離婚するときは…」とは考えないと思うので、どうしてももめ事になってしまうことは多いですね。

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