回転寿司「動画炎上」続出で店側が被害届提出…“加害者”「謝罪」と「雲隠れ」どちらが賢明?

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

回転寿司「動画炎上」続出で店側が被害届提出…“加害者”「謝罪」と「雲隠れ」どちらが賢明?
動画は24時間で消えるInstagramの「ストーリーズ」に投稿されていた

1月、回転寿司店での迷惑行為が相次いで炎上した。中でも「はま寿司」では、「他人が注文したお寿司をレーンから直箸で取って食べる」動画が炎上した直後、「他人が注文したお寿司にわさびをのせる」動画も炎上している。

報道によれば、「わさびのせ」動画の投稿者だとする人物は後日、店舗に電話をして「謝罪したい」との意向を示したが、事態を重く見たはま寿司は謝罪を受け入れず、警察に被害届を提出したという。

一方、先に炎上した「レーンから直箸で他人のお寿司を取った」動画の投稿者は“雲隠れ”状態となっており、はま寿司側も個人の特定には至っていないようだ。

果たして、正直に名乗り出たが被害届を提出されてしまった“加害者”と、「逃げ切れる可能性」にかけてかスルーしている“加害者”、どちらの対応が“賢明”と言えるのだろうか。

わさびのせ「偽計業務妨害罪」「器物損壊罪」に当たる

「他人のお寿司をレーンから直箸で取って食べる」行為については、当メディアで以前公開した記事(回転寿司で炎上したTikToker「開示請求」で“反撃”も…弁護士「逮捕の必要性を上げるだけ」とバッサリ〈https://www.ben54.jp/news/293〉)で「窃盗罪」などに当たる可能性について取り上げた。

では「他人が注文したお寿司にわさびをのせる」行為は、どのような罪に当たるのだろうか。企業の危機管理に詳しい本庄卓磨弁護士は「偽計業務妨害罪と器物損壊罪に当たる可能性があります」と指摘する。

「まず、他人が注文したお寿司にわさびをのせるという行為は、企業に対する信用を損なわせた、また飲食を提供するサービスを妨害したという意味で、企業の業務を妨害した場合に適用される『偽計業務妨害罪』に当たると考えられます。

また、自分が食べないお寿司にわさびをのせることは、はま寿司の商品や、それを注文した人の商品の価値を損なっているということですから、『器物破損罪』にも当たり得るでしょう」(本庄弁護士)

「雲隠れ」or「素直に謝る」炎上後の“賢明”な対応は

では、もしSNSで炎上してしまった場合、「逃げ切れる可能性」にかけてスルーするのか、店舗側に被害届を出されたり、逮捕されたりする可能性があるにしろ、素直に名乗り出て謝罪してしまうのか、どちらの対応が“賢明”だと言えるのだろうか。

本庄弁護士は「迷惑行為をしてしまったのですから、基本的にはしっかりと誠意をもって謝罪すべきです」と言う。

「その上で、被害の程度によっては損害賠償を行って『示談』というかたちで企業から許しを得られれば、事態を収拾できる可能性もあります。

しかしそれができず、『わさびのせ』のケースのように被害届の提出に至った場合は、逮捕や実名報道、それに基づくSNSでの個人情報拡散などによって、“加害者”自身の傷がかなり深くなることも十分考えられます。

ただ当然ながら、SNSの炎上などによって迷惑行為があったことが発覚すれば、それに伴って企業は調査をしますし、後々そこに掛かった費用なども含めて損害賠償される可能性も否定できません。

そういった意味では、なるべく早い段階で自らしっかり謝罪するべきだと言えるでしょう」(本庄弁護士)

先日スシローで発生した「テーブルに置いてある醤油ボトルの注ぎ口をなめる」「湯呑みをなめまわして元の場所に戻す」迷惑行為についても、スシロー側は店舗の特定後、すべての湯呑みの洗浄、醤油ボトルの入れ替えなどの対応に追われた。

当事者は保護者とともに謝罪したというが、すでに被害届は提出済みであり、スシロー側は刑事・民事の両面から引き続き厳正な対処をしていく意向を示している。

店側が「迷惑行為」から身を守るには

この他にも、回転寿司店では「粉末緑茶をさじごと口の中に入れる」「一度取ったお寿司をレーンに戻す」など、迷惑行為の動画炎上が後を絶たない。“客による迷惑行為”は、他のサービス業にとっても他人事ではないが、企業側はどのようにリスク管理をすればよいのだろうか。

「最近は企業そのものはもちろん、そこで働く従業員への迷惑行為も非常に多くなっています。基本的には毅然とした対応が求められますが、具体的な対策方法については、迷惑行為の内容、企業の業種、企業文化やイメージによってかなり異なるため、一概に言うのは難しいです。

ただしどんなケースでも、実際に迷惑行為が起きてしまった場合に、すぐ相談できるようなフローを社内外に整えておくことは非常に重要だと言えます。

また厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf)には、迷惑行為の種類別の具体的な対応策や、社内で整えておくべき態勢など、かなり実用的な内容が紹介されているので、こちらも非常に参考になると思います」(本庄弁護士)

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア