中学生が「大麻部屋」に出入りの衝撃…大麻取締法改正は若年層の汚染拡大の歯止めになる?

弁護士JP編集部

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中学生が「大麻部屋」に出入りの衝撃…大麻取締法改正は若年層の汚染拡大の歯止めになる?
舞鶴工業高等専門学校4年の男子学生3人が大麻取締法違反容疑で逮捕された事件を受け同校で会見を開き、学生の逮捕を謝罪する舞鶴高専の校長ら関係者(写真:産経新聞社 2021年09月30日)

非行少年から“普通”の学生、学力・スポーツエリートまで、万遍なくといってもいいほど幅広い若年層で大麻汚染が広がり続けている。

先月10月18日、大阪府内の集合住宅の一室において販売目的で大麻を所持していたとして、府立高校の男子生徒4人(15~16歳)が大麻取締法違反の疑いで大阪府警に逮捕された。少年らの他に、この「大麻部屋」には中高生十数人が出入りしており、中学生数人も摘発・補導された。

今年9月には、京都府舞鶴市内の自宅に大麻を隠し持っていたとして、舞鶴高専の男子学生ら3人(18~22歳)が大麻取締法違反で逮捕、昨年10月には、巨人軍原監督の出身校として知られる東海大学硬式野球部部員が大麻の疑いがある薬物を使用したとして、大学が同部の無期限活動停止処分を発表した。

警視庁の発表によれば、全国の警察が2020年に大麻を所持したなどとして摘発(逮捕・書類送検)したのは5034人(前年比713人増)と、4年連続で過去最多を更新。中でも20代以下が68.1%と全体の約7割を占め、若年層の「大麻汚染」の広がりは数値上でも明らかだ。

SNSにおいて、特定の隠語などを使用し違法薬物の売買が行われるなど、入手方法もより「手軽」になり、若年層が興味本位で手を出しやすい環境が整っているのも大麻汚染が広がるひとつの要因とも言われている。

多くの少年事件を担当する杉山大介弁護士にその傾向などについて伺った。

「ひと昔であれば、若者の薬物事件といえば80年代はシンナー、それから90年~2000年代にかけてエクスタシーと主たるトレンドのようなものがありました。近年は、大麻がトレンドとは感じます。特徴として、科学的処理の必要がなく生産しやすいということや、これは自分が担当した事件からも実感しているのですが、知人・友人関係のみならず、やはりSNS等のネット環境を通じて都市部、地方のボーダーなく簡単に入手できる経路が広がったことも大きいのではと感じています。さらには、他のドラッグと比較して「依存性が低い」、あるいは「体に良い」などの誤解も含んだ理解が広がっているのも、罪の意識のハードルを下げている要因ではないかと思います」

若年層の大麻汚染の深刻度が増す中、今年5月厚生労働省は、法律で禁止されている「所持」や「栽培」などに加え、使用そのものを規制する「使用罪」を創設することを決め、2022年の法改正を目指す準備を進める方針を発表した。

そもそも「使用」が罪ではないということは不思議に思えるが、大麻取締法が制定された昭和23年当時、許可を受けて大麻草を栽培していた麻(あさ)農家が、作業中に大麻の成分を吸い込むおそれがあり、「使用罪」の導入が見送られるという経緯があったという。

「大麻事件は不起訴になるケースも少なくありません。現在の法律には「使用罪」がなく、たとえ尿から反応が出たとしても「所持」の構成要件にあたらなければ、立件が難しいからです。取り締まる側とすれば、使用罪があれば、その辺りの立件が進めやすくなる可能性があります。ただし、それら刑事司法は「事件が起きた後」の話であることも忘れてはいけません。使用罪で立件できるようになれば果たして「予防効果」「歯止め」として機能するのかどうかも議論の余地があるでしょう。大麻汚染の広がりを防止するという目的であれば、事件になる前の段階で狭いコミュニティの中で大麻を認識する若年層に対して、デマではなく正しい情報を得る教育機会を設けるなど、考えなくてはいけないことは多いです。」(杉山大介弁護士)

一部の大麻解禁論者らが「アルコールより安全」と主張する大麻だが、より強い薬物へと誘う「ゲートウェイドラッグ」とも言われている。興味本位で手を出せば、一生を棒に振りかねない「劇薬」と化すことを忘れてはいけない。

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