「辞めるなら賠償金払え」「制服代が知らぬ間に天引き」 “ブラックバイト”退職時トラブル急増の実態とは?

弁護士JP編集部

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「辞めるなら賠償金払え」「制服代が知らぬ間に天引き」  “ブラックバイト”退職時トラブル急増の実態とは? 退職させてもらえないトラブルは「小規模な飲食店」に多いというが…(※画像はイメージです。CHAI/PIXTA)

「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」「採用時に合意した以上のシフトを入れられた」

2015年に厚生労働省が調査・発表した「ブラックバイト」の実態は、当時驚きをもって報道され話題となった。それから8年が経過したが、学生アルバイトを取り巻く環境は改善されたのだろうか。

先月12月1日に、「バイトを辞める時に制服代1万円を請求される相談が増加中。」とTwitter上でつぶやいたのは、個人事業主や非正規労働者らが加入している労働組合「JAMゼネラルユニオン」労働相談員の今野衛さんだ。今野さんのもとには、現在、組合員以外の大学生らからも月に50件に上る相談が届くという。

大学生のアルバイトなのに「業務請負」

「若い人は電話が苦手という人が多くて、最近は『LINE』で相談がくることがほとんどです。春先はアルバイトを始める人も多く『この契約書は大丈夫でしょうか』と、契約書の画像付きで送られてくることも。それで契約書を見てみると、焼き肉屋でのアルバイトなのに『業務請負』 契約になっているケースもあります」(今野さん)

通常アルバイトであれば社会保険への加入や各種手当・交通費の支給などの福利厚生の対象となるが、あくまで個人事業主として業務を請け負う『業務請負』契約では、それらはない。残業代などが発生しないばかりか、万が一事故が起きた場合など、責任の所在が曖昧になるおそれもある。

塾の講師などが〈授業を自分の裁量で行う〉というような場合には「業務請負」契約が用いられることがあるが、今野さんは「大学生がアルバイトとしてやるような仕事で『業務請負』のものはほとんどないはず」と前出のケースの特異性を指摘する。

実際に塾講師として業務請負で働いている大学生から、「生徒が全員帰るまで何時間も待機させられ、清掃の業務をしなければ帰れない」という相談が寄せられたことがあるという。

「すぐ辞めるなら損害賠償を請求する」大学生バイトに脅しも

アルバイトに関連する相談で多いものは、「退職させてもらえない」トラブルだという。

「小規模な飲食店で特に多いのですが、『もうシフトが決まっているから辞められない』とか『辞めるんだったら代わりのアルバイトを探してこい』と言って辞めさせないようにしている例があります。中には『3か月前までに言わなかったから損害賠償する』『一方的に辞めるなら給料は払わない』と脅されている人もいました」(今野さん)

働く人には「退職の自由」が認められており、原則として2週間前までに申告すれば退職が認められる。後任が見つからないなどは会社の都合であり、退職を引き留める理由にはならない。

退職時の「制服代請求」支払う必要は?

さらに、今野さんが近頃増えてきたと感じる相談が、Twitterでもつぶやいた「退職時に制服代を請求される」というもの。

「外国人から制服代が請求される・天引きされていたという相談が一昨年くらいからあり、昨年の夏ごろには大学生からも同様の相談が届くようになりました。LINE相談を見返したところ、これまで大学生からの相談は6件。飲食店でバイトする人がほとんどで、なかにはメイド喫茶で働いていた人もいました」(今野さん)

会社側が労働者に制服などの費用を負担させる場合、会社は雇用契約書に定めておく必要がある。さらに、労働契約の締結時にも書面で明示する義務があるが、今野さんが相談を受けたほとんどのケースではこれに違反していたという。

大学生や外国人など法律の知識が乏しい層を狙い、会社側が責任を果たしているとは言い難い「ブラックバイト」はいまだに横行しているのが実情のようだ。

“退職代行業者”に注意すべき理由

今野さんは労働相談を受けた場合、まず法律にのっとった通知書の書き方などを教え、会社に提出させている。それでも解決しなければ以下の流れで解決を図っていくというが、アルバイトの退職トラブルであれば、ほとんどの場合が通知書を送れば解決するという。

①法律にのっとった通知書の送付を支援
②(賃金未払いなどの場合)労働基準監督署への違反申告を支援
③労働組合として団体交渉
④労働委員会への救済申し立て
⑤弁護士に相談して裁判など

「大学生アルバイトへの違法行為が発覚すれば、会社は社会的な批判も浴びかねない。それゆえ団体交渉や裁判にまで発展するような深刻なトラブルは今までありませんでした。だからこそ、有料の“退職代行業者”などは絶対に使わないでほしいと思います。もしどうしても使いたい場合は、弁護士の退職代行にして下さい」(今野さん)

本人に代わって退職の処理を行うサービスを提供する“退職代行業者”は、2~3万円ほどの料金で「会社に行かずに即日で辞められる」などとうたうが、実際にはトラブルも多発している。

「労働組合でも弁護士でもない代行業者は、会社と“交渉”することができません。会社に対して『Aさんが退職したいと言っています』と伝えているだけで、退職はできたけど給料が支払われない、手続きのために結局出社しなければならないというようなケースが多くあり、おすすめはできません」(今野さん)

職場に「違和感」を持ったら

労働相談員のもとに相談を持ち掛ける学生らは、『なんかおかしい』と気づけるほど「意識が高い」と今野さんは言う。

「表面化してないだけで、知らずに払う必要のない制服代を支払ってしまった人や、指揮命令を受けるアルバイトなのに業務請負として保障の少ない状態で働いている人はたくさんいると思います。

働き始める時には労働条件を必ず確認すること。職場に違和感を持った時は、すぐに両親や労働相談所に相談すること。まずはこれだけでも学生の時から徹底して、自分の権利を守ってほしいと思っています」(今野さん)

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