“接待ゴルフ”は「仕事」なのに… 事故発生も“労災”認められないケースとは?

林 孝匡

林 孝匡

“接待ゴルフ”は「仕事」なのに… 事故発生も“労災”認められないケースとは? 「業務ゴルフ」と認められる3つの条件とは(Cruisin_65 / PIXTA)

「会社のゴルフ、超〜ダリぃ〜んですけど」
「ゴルフでケガした場合、労災って下りるの?」
「取引先が主催した場合はどうなるの?」
「逆に会社が主催してた場合は?」

今回は【会社関係のゴルフで労災が下りるか?】について解説します。昭和の頃は労災が下りにくかったんですが、平成に入ってからは若干、労災が認められやすくなっているようです。過去の裁判例とともに見ていきましょう(弁護士・林 孝匡)。

過去の裁判例

大昔(昭和50年代)の裁判例を2つお伝えします。残念ながらどちらも労災は下りず(しかし後で解説するとおり、現在なら労災が下りる可能性があると考えます)。

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▼ 会社が主催したケース
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昭和50年代の裁判所は厳しいですね。

裁判所は「会社が主催して懇親会等の社外行事を行うことが事業運営上緊要なものと認められ、かつ、労働者に対して、これへの参加が強制されているときに限り業務になる」と判断しました(福井労基署長事件:名古屋高裁金沢支部 S58.9.21 労民34-5=6 -809)。

この裁判例に従うと、自由参加ならアウトでしょう。強制参加または【建前は自由参加だけど参加しなきゃいけない空気(事実上参加せざるを得ない状況)】であれば労災認定の可能性が高まります。

■証拠を残す
ダリぃ〜ゴルフコンペが開催されそうな時は、事実上の強制参加であることを証明できるような証拠を確保しましょう。たとえば、事実上の強制参加を匂わすようなメールを保存しておく。上司に「このコンペ参加しないと、どうなるんでしょうか?」と聞いて回答を録音しておく。上司が「おまえ、そんな度胸あんの?」「次期の審査に響くぞ〜」みたいな回答をすればプラス証拠ゲッツです。証拠は合わせ技で強くなるので引き続きいろんな証拠を集めてください。

■緊急なゴルフ?
上の裁判例では「【事業運営上緊急なゴルフ】が条件だ」と判示しているんですが、そんな緊急ゴルフあるのかよw って感じです。

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▼ 取引先が主催したケース
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こちらも労災が下りませんでした・・・。(高崎労基準署長事件:前橋地裁 S50.6.24)
取引先が主催するゴルフコンペに向かう途中、交通事故で死亡した事件です。

裁判所は以下のように判断しました。

  • 強制参加ではなかった
  • コンペ招集のときに特に営業の議題が掲げられてるわけじゃなかった
  • コンペ後も営業についての会議などはなかった

ことを理由に「このコンペはあくまでも親睦団体の域を出ない」「業務ではない」と判断しました。

■『業務』といえるケース
ただ、例外的に「以下の3つの条件を満たせば業務ゴルフだ」と追記してくれてます。

  • 会社の命令があった
  • 会社が出席費用を出している
  • 出席が事業運営上緊急であり、かつ会社の積極的特命が必要

それを前提に今回のケースは、

○ 会社の命令があった
○ 会社が出席費用を出している

けれども、

× 出席が事業運営上緊急ではなく、会社の積極的特命もなかった

ことを理由に業務ゴルフではないと認定しました。

また出ましたね、【事業運営上緊急なゴルフ】。・・・考えてみたんですが、例えば犯人からTELがあって「社長を人質にとった。社長を返してほしければ8000万円を用意するか・・・今すぐゴルフにいけ」。これは『緊急ゴルフ』ですわな。それ以外の緊急ゴルフが思いつきません。

さて、 現在なら上2つの条件、すなわち、「会社の命令があって」、「会社が出席費用を出している」なら業務遂行性が認められる可能性があると思います。

というのも、ネットで以下のケースを発見しました。原典にはあたれていないのですが、参考としてあげておきます。

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(おそらく取引先主催の)ゴルフコンペに向かう途中で交通事故にあって亡くなったケースです(参加は会社の指示)。そのコンペは顧客との商談も兼ねたものでしたが労働基準監督署は労災認定せず。しかし、その後の判決で逆転し「ゴルフ・コンペは仕事の一環とみなしうる」と認定されたようです(東京労働基準局・労災保険審査官平9.3.1)。
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「事業主の支配下にあった」との認定になったのかなと推測しています。

事業主の支配下=業務

最後、能書きを。現在の裁判例では、事業主の支配下での事故なら業務遂行性が認められます。最高裁はこう(↓)言ってます。

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労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「災害」)が労働者災害補償保険法に基づく業務災害に関する保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要(十和田労基署長事件・最高裁S59.5.29 労判431号52頁)
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なので、そのゴルフが事業主の支配下にあったといえれば労災は下ります。事実上の強制参加であればワンチャンあり(事業主の支配下と認定されやすくなる)だと思うので、事実上の参加と証明できるような証拠を集めてみてください。

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▼労災が下りないケース
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ゴルフが業務と認められても労災が下りないことがあります。こんな(↓)無念なケースです。

Q.
元ボクサーの同僚が前半すべてダブルボギーで回ったので「ダボの松井〜♪」とイジっていたら殴られて、歯がすべて折れました。労災は下りますか?

A. 無理だと思います。業務とは無関係なケンカだからです。難しい言葉で言えば【業務起因性ナシ】と判断されると思います(最高裁によると、労災認定されるためには、「当該負傷または疾病が、被災労働者の従事していた業務に内在する危険性が現実化したことによるもの」と評価されることが必要なんです)。

本日の教訓 : 元ボクサーをイジりすぎない

ではまたお会いしましょう!



【筆者プロフィール】
林 孝匡(はやし たかまさ)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP:https://hayashi-jurist.jp Twitter:https://twitter.com/hayashitakamas1

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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