就活WEBテスト「“代行”受験」が入社後バレたら? 「解雇」を避ける最善の対処法

弁護士JP編集部

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就活WEBテスト「“代行”受験」が入社後バレたら?  「解雇」を避ける最善の対処法
真面目に“試験対策”を行う人がほとんどだが…(Graphs/PIXTA)

いまや多くの企業の採用・就職試験では、「WEBテスト」形式の適性検査が実施されることが一般的となっている。ここ数年のコロナ禍の影響などもあり、従来の筆記試験に代わり、応募者が自宅や試験会場のパソコンから「インターネット(WEB)」を介して受験する形態は広まった印象だ。

そんなWEBテストをめぐり、“代行受験”をしていた男性が、昨年11月、私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕された。副業としてWEBテストの代行受験を「1件数千円」の報酬で請け負っていたとされる男性は、12月までに同容疑で2度再逮捕されている。

男性が依頼者を募っていたTwitter上のプロフィール欄には〈ウェブテ(※編集部注:WEBテストのこと)請負経験約4年、1人で計4000件以上〉と記されており、余罪も多数あるとみられる。

その一方で、WEBテスト代行の依頼経験者で現在“戦々恐々”とする人も少なくないだろう。男性に代行を依頼していた大学生らのうち、すでに計3人が書類送検されている通り、「依頼側」も罪に問われるからだ。

SNS上には、男性の摘発後も「WEBテスト代行」をうたうアカウントが多く存在している。なかにはWEBテスト代行を利用して、晴れて希望の企業に入社できた人もいるかもしれない。そんな人たちには今後、どのような未来が待っているのだろうか。

クビになっても文句は言えない?

近畿大学のキャリアセンターで講師経験がある原修三弁護士によれば、代行受験を利用し入社したことが企業に発覚した場合、「懲戒処分」は避けられず、一番重い処分である「懲戒解雇」が適用されても文句は言えないと話す。

「企業では懲戒処分の規定を就業規則に定めていますが、“経歴を偽って採用されたとき”や“犯罪行為に加担していたとき”などは多くの企業で『懲戒事由』になります。今回摘発されたようなケースであれば、それらに該当することになると思います」(原弁護士)

「バレればクビ」というスリリングな状況では業務にも支障が出てしまいそうだが、発覚前に対処できることはないのだろうか。

代行利用者が“バレる前に”できること

原弁護士が「ベストな行動」として勧めるのは、「自ら代行受験による採用だったことを申告して、“自主退職”扱いにしてもらう」ことだという。

「『このまま黙っておけばなんとかなるんじゃないか』と思うかもしれませんが、指摘されて“懲戒解雇”になってしまうと、その後の就職活動にも差し支えが出ます。『諭旨解雇』という、いわゆる『自主退職』ができる形で話し合いをするのが一番いいと思います。

今は大丈夫でも、今後どこかでウワサが流れたり、何かの拍子でバレてしまったりということも考えられます。入社して日が浅ければ、やり直しもききやすいと思います」(原弁護士)

その上で、もしも言えるタイミングを逃し、バレてしまった場合には弁護士への相談も選択肢のひとつと続ける。

「自分から申告できないまま発覚してしまった後でも、なんとか諭旨解雇にしてもらえるよう会社側と話を進めていくお手伝いはできると思います。ただし、弁護士も事情を聞かないと会社に説明できませんので、その時に備えて『なぜ代行受験を頼んだのか』という動機や経緯など事実関係をきっちりまとめておく必要はあります」(原弁護士)

大学の内部試験と同じ感覚?

原弁護士は、キャリアセンターで学生たちと向き合ってきた経験から、代行受験の根本には「感覚のマヒ」があるのではないかとみている。

「大学の内部試験で『自分より学業ができる生徒や、より偏差値の高い他校の生徒』に代行を頼むことがあると聞きます。就職採用試験の代行についても、頼む方、頼まれる方とも、その延長線上でやっているように感じます。

たとえ大学の内部試験であっても、最悪の場合は罪に問われる可能性はあります。代行受験をやろうとしている人がいたら、仲間内で『やめておいたほうがいいよ』と言えるような輪が広まったらいいなと思ってます」(原弁護士)

代行の“代償”は、想像よりもずっと大きいようだ。

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