新500円、もう手に入れた? 世界に誇る偽造防止技術や入手方法に迫る

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

新500円、もう手に入れた? 世界に誇る偽造防止技術や入手方法に迫る
新500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

11月1日に新500円硬貨が発行されてから約1カ月。キャッシュレス化が進み現金を使用する機会が減っている今、「まだ実物を見たことがない」という方も多いのではないだろうか。

もちろん手に入れた方も一定数いるようで、SNSでは「テンションあがる」「超綺麗」「来たあああああ」といった喜びの声も多く見られる。

財務省によると、本年度の新500円硬貨の発行予定枚数は2億枚。この度発行された500円硬貨は3代目となるが、過去2代の初年度発行枚数と比べると、1代目(1982年)は3億枚、2代目(2000年)は5億9596万9000枚と、キャッシュレス時代を反映してか、やや減少傾向となっているようだ。

新500円硬貨を手に入れるには?

初年度の発行枚数が少ない上に、現金を使用する機会が減っている今、買い物のおつりなどで自然に新500円硬貨が手に入るまでには時間が掛かりそうだ。では銀行などに旧500円硬貨を持ち込み、新硬貨と交換してもらうことは可能なのだろうか。主な金融機関に問い合わせた結果、以下の回答が得られた。

  • 三菱UFJ銀行「対応可。在庫など詳細は支店へ問い合わせ」
  • 三井住友銀行「対応可。原則として両替機にて対応」
  • みずほ銀行「対応可。在庫など詳細は支店へ問い合わせ」
  • 郵便局「原則対応不可」

いずれにしても流通量はまだまだ少ないため、来店予定の支店に問い合わせてから交換に訪れたほうが確実といえるだろう。

旧500円硬貨と新500円硬貨の見分け方

ところで、旧500円硬貨と新500円硬貨はどのように見分ければよいのだろうか。4つのポイントを紹介する。

①2色づかいの「バイカラー」

新500円硬貨を真上から見ると、ゴールド(ニッケル黄銅)の輪がシルバー(白銅)の円を囲んでいることがわかる。ファッション用語の「バイカラー(2色づかい)」にピンと来た方もいるのでは?

左:新500円硬貨、右:旧500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

見た目ではわからないが、シルバーの円にはまた別の金属(銅)がサンドされている。計3種類の金属を複雑に組み合わせた「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」によって、偽造を難しくする狙いがあるのだ。

新500円硬貨の構造(財務省ホームページより)

②斜めにしたとき浮かび上がる文字が異なる

硬貨に刻まれた「500」という数字を上から見たとき、新硬貨であれば「JAPAN」という文字が浮かび上がり、旧硬貨であれば何も浮かび上がらない。

左:新500円硬貨、右:旧500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

一方、「500」を下から見たときは、新硬貨であれば「500YEN」、旧硬貨であれば「500円」という文字が浮かび上がる。

左:新500円硬貨、右:旧500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

③表面の縁に小さな「JAPAN」「500YEN」

貨幣の表面をよく見ると、上下の縁に「JAPAN」、左右の縁に「500YEN」という微細な文字が刻まれている。ちなみに貨幣の表面は「日本国 五百円」と刻まれている面なのでご注意を。

左:JAPAN、右:500YEN ※いずれも新500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

④ギザの一部が幅広になっている

旧500円硬貨と同様に、新500円硬貨の側面にも斜めの溝「ギザ」が刻まれているが、新500円硬貨では上下左右4カ所のギザの幅が広くなっている。「異形斜めギザ」というこの技術が通常貨幣に導入されるのは世界で初めてだ。

左:新500円硬貨、右:旧500円硬貨(写真:弁護士JP編集部)

これらの4つの特徴は、すべて偽造防止のために導入されたもの。そこで今回は、貨幣の偽造など新硬貨にまつわる法律知識について、桐ヶ谷彩子弁護士に聞いた。

「キャッシュレス時代になぜ新500円硬貨が必要?」という声もありますが、硬貨のデザインを一新するサイクルは法律で決められているのでしょうか。

法律でサイクルが定められているわけではありません。ただ、500円硬貨についてだけいえば、昭和57年、平成12年、そして今回令和3年と、およそ20年ずつ置きに新硬貨が発行されています。長く期間が空くほど、その間に「偽造する技術」が「偽造を防止する技術」に追いついてしまうリスクも高くなっていってしまいます。そのため、必要に応じて新硬貨が発行されているのだと思います。

新500円硬貨にも新たな偽造防止技術が導入されていますが、もしそれらをかいくぐって偽造した場合、どのような罪に問われますか?

「通貨偽造罪」に問われ、無期または3年以上の懲役となります。たとえ偽造した通貨を使わなかったとしても変わりません。罰金刑は適用されず、一発で実刑となることから、それだけ重い罪だといえます。

偽造した通貨を使った場合は、どのような罪に問われるのでしょうか。

その場合は「偽造通貨行使罪」となり、通貨偽造罪と同様に無期または3年以上の懲役となります。

もしお釣りなどで偽造通貨が財布に紛れ込み、知らずに使ってしまった場合はどうなるのでしょうか。

故意がない場合は罪に問われることはありません。ですので、もしご自身が持っている通貨に違和感があった場合は迷わず警察に届けたほうがよいでしょう。

新500円硬貨には偽造防止技術として「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」「異形斜めギザ」などが採用されています。硬貨のデザインに法的な規定はあるのでしょうか?

通貨のデザインに法的なルールがあるわけではありません。一般から公募することもあれば、造幣局の職員がデザインすることもあるようです。

最終決定権は内閣府にあるので、集まったデザイン案を検討し承認されたものが「新しい貨幣の規定」として通貨法施行令に記載されます。

自販機や自動精算機なども新500円硬貨に対応する必要があります。コロナ禍で経営が苦しい企業・店舗も少なくないですが、各事業者には新硬貨に対応する義務があるのでしょうか?

法的な義務はないですが、現在はレジに自動釣銭機などを導入しているお店も増えているため、対応しておかなければ事実上不便です。

残念ながら、現在のところ国に補助金を出すなどの制度はありません。機器を製造する各種メーカーで、部品の交換やシステムのアップデートなどに対応しているようなので、事業者の方は早めに対策をしたほうがよいでしょう。

新500円硬貨の発行を期に、私たちが生活する上で気を付けるべきことはありますか?

例えば「旧500円硬貨が使えなくなる」など虚偽の情報を流し、旧硬貨を回収するような詐欺が発生するかもしれません。

また、お店によっては新500円硬貨への対応が遅れ、精算機で使えない可能性もあります。会計時の思わぬトラブルを防ぐためにも、当面の間は、事前に新500円硬貨を使えるか確認しておくと安心かもしれません。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア